第14回 南のシナリオ大賞 結果発表
南のシナリオ大賞
「ほてぱき」竹田 行人(東京都)
優秀賞
「無音の伴奏」境田 博美(千葉県)
「不知火」浅渕 聡美(神奈川県)
「月の石の指輪」鹿内 俊太(東京都)
一次選考通過作品
一次選考通過作作品(朱色は二次審査通過作品)
応募総数
主催
選考会
第14回最終選考ドキュメント
第14回二次審査通過作品
第14回一次審査通過作品
大賞 「ほてぱき」竹田 行人
受賞者のことば
竹田 行人 (東京都)
この度は「ほてぱき」を大賞に選んでいただき、ありがとうございます。
この作品は、世にも奇妙な物語の一つ「ズンドコベロンチョ」が元になっています。 本家(?)では最後まで「そのもの」を画面に写さないことが大事な要素になっているのですが、ラジオドラマなら登場人物がたとえ「そのもの」を手にしていてもリスナーには見えず、同じ効果が出せるのではないか。
そんな思い付きから生まれました。
そして、せっかくなのでこの作品の陰の主役である、熊本名物「ほてぱき」についてもいろいろとお話したいのですが、残念ながら私も「そのもの」を見たことがありません。 でも、持っている人は幸せになれるそうなので、みなさんもぜひ探してみてください。 案外近くにあるかもしれません。
最後にこの場をお借りして、常日頃から温かく見守ってくれている家族や仲間、お世話になった先生方に感謝を述べたいと思います。
ほんとうにありがとうございます。
「ほてぱき」 あらすじ
親子はフクザツでややこしくて愛おしい。
熊本は東京、大阪、名古屋などの大都市圏を除くと最も渋滞が多い都市であるそうな。
栞(17)が空港に向かうために乗ったタクシーも例外なく渋滞に巻き込まれている。
タクシーを運転する松本(45)は8年前に離婚したきり会っていなかった栞の父親。
栞の母が再婚したことをきっかけに、栞は家族とともに海外に移住することになる。
栞の母と新しい父親はまだ学校のあった栞を置いてひと足先に東京観光に向かっている。
それはもう簡単に会えなくなる栞と松本を2人きりにするために栞の母が考えたこと。
松本は栞に餞別を渡す。餞別は「ほてぱき」。
「ほてぱき」。見たことも聞いたこともない。
「ほてぱき」とは何か?「ほて」と「ぱき」の2つで1つ。カラーが豊富。すごく伸びる。なんだ? わからない「ほてぱき」。
優秀賞 「無音の伴奏」 境田 博美
賞者のことば
境田 博美 (千葉県)
優秀賞、ありがとうございます。
一次選考の講評で、「平凡な作品だが…」とコメントされていたので、「あ、これは二次で落ちるな」と早々に諦めていました。二次選考でも、書式が正しくなかったようなので、本来、危かったですね。寛容なご対応、感謝します。(ト書きと台詞との文字空けが無かった件ですよね? 普段、映像用のシナリオばかり書いているので、その体裁で書いてしまいました。以後、ラジオの書式を改めて勉強します)
ラジオのシナリオはこれまでに5本くらいしか書いたことがなく、「ラジオならではの書き方があるのだろうけど、私にはまだわかってないな」と思っていたのですが、一次選考の「オーディオドラマで聴いてみたくなる作品」というコメントは、嬉しかったです。あまり小難しいことは考えず、まずは自分が耳で聴きたい物語を書いてみればいいのかもしれない、と。今後、もう少し気楽に自由にラジオドラマに挑戦できそうです。
「無音の伴奏」 あらすじ
老ピアニスト・馳慎一。3年前に脳梗塞を患い、一次は再起が危ぶまれていたが、回復し、復帰リサイタルを控えている。
初心に帰って残りの人生をピアノに捧げることを誓う馳。そのためには、何を置いても弾かなければいけない特別なピアノがあった。
そのピアノは、郷里の北九州・西小倉の小さなバーにある古びたアップライトピアノ。
両親から医学部受験を厳命されていた高校生の馳。受験の妨げになるからと好きなピアノから引き離され、梢の経営するバーに駆け込んだのだった。バーの開店前の時間にピアノを弾かせてもらいながら、音楽への情熱を再確認した馳は、家出をしてピアニストを目指すことを決める。梢への恋心も打ち明け、一緒に上京しようと誘うが、梢は断る。「夢を叶えたら、またこのピアノを弾きにきて」と。
50年越しに梢との約束を果たす馳。ピアノはすでに壊れ、まともに音も出せなくなっていたのだが……。
優秀賞 「不知火」 浅渕 聡美
受賞者のことば
浅渕 聡美 (神奈川県)
八代海に出現する蜃気楼の一種、不知火(しらぬい)を知った時、不知火は映像で見るよりも耳で聞く方が光輝くのではないかと思いました。
ラジオドラマは自分の想像力で映像を作ることができるからです。
この景色をラジオドラマにしたくて登場人物を誰にしようかと考えて、萌乃とすずかという二人の対照的な女性を描くことにしました。受賞のお知らせの時に「よく書けていますね」と言っていただきとても嬉しく感激しております。
審査員の皆様、優秀賞に選出していただきまことにありがとうございました。これからも精進してラジオドラマを書いていきたいと思います。
「不知火」 あらすじ
夏の夜の八代海に出現する蜃気楼の一種『不知火』を一人で見に来ていた萌乃は、同じく一人で見に来ていたすずかに声をかけられ暗闇の中、行動を共にすることになる。
萌乃は死んだ恋人が不知火をなぜ見たがっていたのかを知るために、すずかは自分を捨てた恋人を捕まえるためにやってきていた。
行動を共にしていくうちに打ち解けていく二人だったが、わずかな光で見えたすずかの顔からお互いの恋人が同一人物であることに萌乃は気づいてしまう。
優秀賞 「月の石の指輪」 鹿内 俊太
受賞者のことば
鹿内 俊太 (東京都)
人間万事塞翁が馬という言葉が嫌いになりそうな1年だった。
27歳を無職で迎え、おみくじは凶。ひどい食あたりが続きかつて友人だった人から詐欺まがいの行為に誘われた。
がむしゃらになって再就職した矢先業績悪化により再び職を失い、恋人には「もう無理」とフられ、歯医者ではなんの説明もなされずに銀歯が被せられた。
そんな時に受賞の連絡を頂き、これが格言か、と悟りました。
27歳最後の日にこのような賞を頂けたことは大変光栄です。ただ、自分には相応しくないのではという不安も大きく、「つまんねー」と思われる方も多いかもしれません。
それでも、この先70年近く脚本を書いていくためには1つ1つの「つまんねー」を受け止め越えていかなくてはダメだろうとも思い、チャンスは全て掴み取ることにしました。
今後も誠実に脚本と向き合い、ドキドキワクワクしたいと思います。ありがとうございました。
「月の石の指輪」 あらすじ
種子島でとあるイベントが開かれる日。
自宅で昼飯を作ろうとしたサツキの元に、1本の電話がかかる。それは、幼馴染のヤマトからだった。
料理をしながら片手間でヤマトの話を聞くサツキ。スピーカーから漏れる調理音や昔話に話は逸れて、なかなか本題に入らない。しびれを切らしたサツキが電話を切ろうした時、ヤマトはサツキに愛の告白をする。
しかし、昔から何度もヤマトに告白されて来たサツキには何も響かない、はずだった。今回はただの告白ではなく、プロポーズだったのだ。さすがに動揺するサツキ。だが、ヤマトの一生懸命な姿に惹かれ、プロポーズをOKする。
ハッピーエンドに思えたが、ヤマトは突然大声で喚き出す。
ヤマトはサツキが子供の頃に言った、「月の石をくれたら結婚してあげる」という約束を果たすため、ロケットに乗っていたのだ。そして、種子島から月へ向けて、ロケットが飛び立った。
総評
今年の第14回南のシナリオ大賞は、298通の応募がありました。昨年の200通からすると大幅に増えました。今年からネット応募に変わったことも増えた一因になったのかも知れません。
全編、じっくり読ませて頂きました。応募された方々が時間を掛け、考え、悩んだことが一文字、一文字から伝わって来ました。その中から、大賞1編、優秀賞3編を選びました。
選らばれた方々は、シナリオライターへの希望が膨らみ、その入り口に立つことが出来たかも知れません。これまでの南のシナリオ大賞の受賞者から、映画、テレビドラマ、舞台の脚本家として活躍している人も出てきます。
そんな人たちを選ぶのは、これから脚本家を目指す人たちが一歩前に進む為に背中を押す手助けになったかも知れません。だから、選ぶ責任があると思っています。
大賞は、「ほてぱき」の竹田行人さん。一言で言えば、面白い作品です。タクシー運転手の父と娘を軸に展開していきます。その会話がテンポよく回転していきます。
優秀作には、「無音の伴奏」の境田博美さん。音が聞こえてくるような作品でした。セリフは削れる所もありますが魅力的なセリフもありました。
次は、「不知火」の浅渕聡美さん。女同志の距離感がくっつかず離れずで心地よい。物語は悲しいのですが、ラストは希望が持てる終り方でした。
三つ目は、「月の石の指輪」の鹿内俊太さん。月へ行くロケットから「ダイヤモンドより月の石での指輪」を贈るとプロポーズ。男と女の掛け合いセリフは秀逸。
受賞された方々は、夢の入り口に立つことが出来たのかも知れません。でも、夢の続きはこれからです。
日本放送作家協会九州支部長
審査委員 盛多直隆
第14回 南のシナリオ大賞 表彰式
日時:11月22日(日)15:00~16:30
場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神)
表彰式出席者
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