第11回 南のシナリオ大賞
- 2024年2月26日
- 読了時間: 6分
更新日:2024年3月18日
第11回 南のシナリオ大賞 結果発表

南のシナリオ大賞
「無心の水槽」江頭 六花彦(福岡県)
優秀賞
「たまてばこを探して」天沼 彩(神奈川県)
「優しさめぐり」一樹 ろこ(神奈川県)
一次・二次選考通過作品
一次選考通過作作品(朱色は二次審査通過作品)
「サンタが島にやってきた」 佐竹吉信(東京都)
「薩摩おごじょの娘」 琴川紘音(埼玉県)
「ラクダが飛んだ日」 愛うえ雄(兵庫県)
「国東幻視行」 荻 利行(東京都)
「女の勘」 竹上雄介(東京都)
「金六さんの墓参り」 日高真理子(福岡県)
「風の向こうに見える君」 高麗宣文(東京都)
「あなたのせいで眠れない」 秋山亜代子(東京都)
「浪速のケチャツプライス」 大杉誠志朗(長崎県)
「トルコ狂想曲」 岩本憲嗣(東京都)
「おばあちゃんの恋文」 吉田裕美(大阪府)
「女のたちの一夜」 高畑悠未(多摩市)
「フェイクファーザー」 渡貫涼子(千葉県)
「雨を殴る」 日巻寿夫(福岡県)
「池の鯉」 横山緋沙子(東京都)
「お祈りメール」 梶田明子(愛知県)
「ハーフセンチュリーブルース」 白石栄里子(愛知県)
「恋と泡」 唐下貴浩(東京都)
「高校写真」 伊藤博和(岐阜県)
「ひよこの夢」 羅生瑠(愛知県)
「助けて」 池崎彩子(長崎県)
「貯禁箱」 恒松千穂(福岡県)
「慕金箱」 恒松千穂(福岡県)
「無心の水槽」江頭 六花彦(福岡県)
「さくらの中で罪滅ぼし」 深海リョウビ(大阪府)
「箸袋」 安東茂光(神奈川県)
「蛍と真っ赤なオープンカー」 中村一子(東京都)
「恋愛シュレーション」 森 翔吾(東京都)
「たまてばこを探して」天沼 彩(神奈川県)
「ロボ手も借りたい!」 菊池麻衣子(愛知県)
「さよなら、ブルームーン」 安井幹雄(東京都)
「サランガッタな夏」 館 利恵(富山県)
「最後についた嘘」 大谷セイジ(岐阜県)
「いま、解散!」 喜多美奈代(埼玉県)
「秋風」 長野恭治(愛知県)
「ヘッドフォン・ガール」 田中寛人(東京都)
「雨あがりのガール」 目黒麻理子(北海道)
「おばあがくれた思い出」 黄 莉香(東京都)
「二十五年後の二人」 亀子美穂(愛知県)
「父からの贈り物」 鈴木基子(東京都)
「鶯の子」 北川由美子(大阪府)
「7日なのか」 こたつめがね(東京都)
「優しさめぐり」一樹 ろこ(神奈川県)
応募総数
195編
2017年8月31日締め切り
協賛
文化庁「九州・沖縄から文化力プロジェクト」参加事業
主催:日本放送作家協会九州支部
後援:日本脚本家連盟九州支部
日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会
協賛:九州教具株式会社
選考会
2016年10月8日、福岡市中央区今泉
審査委員: 盛多直隆、森久美子、皆田和行、副島 直、香月 隆
実行委員: 松尾恭子
第11回最終選考ドキュメント
第11回南のシナリオ大賞 最終選考会
(5) 「無心の水槽」
(3) 「たまてばこを探して」
(3) 「優しさめぐり」
(2) 「池の鯉」
(2) 「父からの贈り物」
(0) 「ラクダが飛んだ日」
(0) 「風の向こうに見える君」
(0) 「フェイクファーザー」
(0) 「貯禁箱」
(0) 「ロボの手も借りたい!」
()内の数字は審査員投票数
「ラクダが飛んだ日」と「風の向こうに見える君」
副島:「ラクダが飛んだ日」で面白いのは、小島老人のキャラだけです。
盛多:「風の向こうに見える君」は句読点がなくて読みづらかった。これ(遊園地のアトラクション)をラジオドラマで擬人化するっていうのも、どういうものかと。
副島:(アトラクションの)役名が普通に人名で、そこに事故に遭った男の霊魂みたいなものまで絡んでくるから、余計に混乱してしまう。
皆田:結局、最後まで誰が誰だか分からなかった。
副島:2次(審査)で10本読んだんですが、その中からなぜこの2本を残したかというと、他の作品があまりにも類型的で平凡だったから。
松尾:ぶっ飛んでたんですね、この2本が。
香月:確かに、2本ともスゴイ作品。
副島:作者の個性が感じられたのはこの2本だけで、他は、何処にでも転がっているようなネタ(題材)を普通に書いたものしか残ってなかった。それで、大賞の対象にはならないと判っていながらも、この2本を2次で通しました。かと言って、落とした8本に「申し訳ないな」って感じはまったくなかったですね。本人が書いたものか、添削指導の先生が書いたものか区別がつかないような、体裁だけは整っているけど作家性が感じられない作品は、ぜんぶ落としました。
「フェイクファーザー」
副島:6年前、娘の結婚式をぶっ壊して、そのときやっていた芝居も台無しにしちゃって、居辛くなったので海外逃亡していた父親が、結婚式の日に帰ってくる。
香月:楽しかったけどね。(フェイクファーザーが)元の芝居仲間だったっていうの。
副島:話がトントン拍子に進んでタメがない。これこれこういう事でした、そうでしたか、じゃあお父さん許してあげる、みたいな。
香月:田舎芝居の10分演劇みたいなのね。
「父からの贈り物」
盛多:「父からの贈り物」はベタっぽい。
皆田:良いなと思ったのは、息子に「お前の半分は姉ちゃんだと思っている」という父親のセリフです。
盛多:うん、あのセリフはいい。
香月:そこだけね、光ってるのは。
「池の鯉」
松尾:「池の鯉」は重い話なんですけど、鯉のキャラが可愛かった。鯉が重いテーマを軽くしてくれている。
盛多:この物語って、極端な話すると鯉はいらねえなって思った。
副島:私もそう思う。鯉は関係ない。
森 :超能力を持っていて(主人公の青年を沖縄に)連れて行った。
松尾:(浦島太郎の)亀みたいなもの。
副島:どうしてそういうくだらない設定をわざわざ入れるのかなあ。
香月:その池の鯉が海を泳ぐんだよね。鯉は比較的塩分に強い魚だけど、でも、強めの塩水を泳いだら、身体の水分が出てしまうよ。
盛多:石垣島で米兵を殺したって話が、途中で入ってくる。
香月:あれは「私は貝になりたい」(脚本:橋本忍)とまったく同じ。
副島:軍命で(捕虜の米兵を)殺してしまったがために、戦争裁判で裁かれる男の話。
香月:だから、作品のいちばん核のところが、パクリとまでは言わないけど、作者は知らずに書いたのかもしれないし。だけど「私は貝になりたい」を見ていた人なら、すぐに分かると思う。
盛多:で、その話を(メインに)持ってくるのだったら、どう考えても鯉はいらない。
副島:なんで池の鯉じゃなきゃいけなかったんだろう? 沖縄戦を扱ってるんだから、戦争で壊されたシーサーの破片とか、他になにかありそうなものなのに。
香月:決定的な致命傷は、鯉の言葉が、関東弁か関西弁かよく分からない喋りになってるのね。最初は関東弁だったのに「わてホンマによう言わんわ」みたいなのが入ってくる。
「たまてばこを探して」
森 :これはけっこう好きです、品格があって。
盛多:良い話だとは思ったんだけど、主人公の千代の気持ちが、もうひとつ掴みづらかった。
副島:遺書の(入った)箱探しでフェイクしてるじゃないですか、このお婆さん。そこが共感できないんですよ。
盛多:なぜフェイクしてるかって事?
副島:うん、素直じゃないな、って。
香月:そこがカラクリなんですけどね。
副島:それで話を面白くしてやろうっていう、(作者の)作為が感じられて。
香月:いちばん不満に感じたのは、骨董を扱う学芸員が出てくるでしょ、だったら会話にもう少し品が
なければいけないと思う。利害関係に直結した話ばかりで。
盛多:学芸員の喋りは好きになれなかった。おまえらのする仕事はもとっと別なことだろうって。
香月:非常に良い話なんですけど、物語がギスギスしてしまってる。奥さんも、もう少し心の豊かな奥さんであって欲しかったね。
副島:娘が遺産を狙っているみたいな話を入れたがために、嫌らしいお婆さんになってしまってる。
盛多:気に入らないのはそこなんです。心の豊かなお婆さんのままであって欲しかった。
香月:むしろ逆に、このお婆さん、こんなに狡いんじゃなくて、豊かな気持ちで、美術館が断っているのに上手く仕掛けをして見事な寄付をしてみせた、みたいな形にしたらね……
森 :でも、どちらかというと、そういった感じで受けとっているんですよ、あたしは。女性として。だから品があっていいな、と。
皆田:男性だけど、(ぼくも)そう受けとってますよ。
「優しさめぐり」
森 :「優しさめぐり」は、SEの部分がテレビ的だなって思って。この人、ラジオドラマ書けるのかしら、っていうのがあったわけ。
盛多:読んだときに、この子どもたちが好きになったんですよ。最初はイチオシで考えてたんですけど。
香月:セリフは良く書けていて、可憐さが出ていて良かったんだけど。森さんが言ってるように、スタスタ歩くなんて音、出来ないですよ。
副島:ラジオに限らず、シナリオに擬音語は書かないですね。
森 :ねー、ねー、絶対おかしいのよ。
香月:スタスタ歩くなんてライブラリにないですよ、あるのは走ってる音ばっかしで。実現不可能なSEです。それと、世界が小さいのがちょっと玉に瑕だね。だけど、ぼくはセリフはいい、とても上手いと思う。
副島:「お金には呪いがかかっている」とか、「お金に優しさを乗っけて、それが世界中に広がったら、呪いが解ける」とか、子どもの発想っぽくて、ものすごく好きだな。それと、看護師さんが旦那さんにキスする場面とか、この年代から見た愛情の表現が、甘酸っぱく描写されてて大好き。私は「無心の水槽」を一番に推してるけど、あと残すのならこの作品しかないと思ってる。
香月:ぼくも2番目に推してる。これでドラマは作れないけど、レーゼドラマ、読むだけのドラマとしてならこれは非常に良い。好き嫌いで言ったら、ぼくはこの作品ものすごく好きなんです。めんこいめんこいって感じ。出来が良いんですよね、カタチが、綺麗に彫刻されてる。
盛多:子どもが「呪い」って言葉を口に出したときに、こっちに迫ってくるような、サプライズがある。
森 :その、お金の呪いって、これがお金の呪いなのかねぇって、分からなかった。
皆田:呪縛から解き放とうとしてキスするわけですよね。それはすごくいいけど、すごくテレビ的だなあと思って。
森 :ねえ、絶対そうですよねえ! 音出ないし。キスの表現とかどうするんだろう。
盛多:最初に読んだときに、これを映像的だと思った記憶はないんだけど。ラジオドラマとして作ったとき、この世界って良い世界になりそうな感じがしましたけどね。
香月:引っ掛かってるのはスタスタ歩くだけなんですけどね。
森 :それと私は、お母さんがお父さんにキスシーンとか、どうやって音で表現するとっというところがあって、それでまずこれはテレビ的よねと思った。
盛多:たぶんセリフの雰囲気で持っていけると思ってる。それと普通のキスシーンじゃないから……
森 :だから、映像的だなあって思った。そっちのほうがきれいなのができると思ったんで、ちょっとマイナスにしたんです。
「無心の水槽」
盛多:ぼくは「無心の水槽」か「優しさめぐり」のどちらかが大賞だと思っているんですよ。と言うのは、「池の鯉」、「たまてばこを探して」、「父からの贈り物」は、どうも、見た感、読んだ感がある。「無心の水槽」は、えっ、珍しいじゃん、この話って。今までなかった新鮮さが感じられたんですね。
香月:世界がしっかりしてて新しいからね。社会に幸福をもたらすといったものではないけど、人間の虚無感を詩的に哲学的に描いた作品ではあると思うね。
盛多:クラゲが、脳も心臓もないのにってのに驚いちゃった。
副島:むかし読んだ安部公房とかの、ああいった幻想的な雰囲気があって。他にこういうタイプのものがまったくなかったので、このなか(最終候補作)では「無心の水槽」が一推しですね。
香月:ノーベル文学賞のカズオ・イシグロの作品がこんな感じでしょう。人類のDNAとか扱っていて、それで人間の歴史を大きく書いていくという。
副島:この異質で独特な世界観は、他では見られないものです。
香月:絶対作者のものですよ、これは。ひとつ気になっているのは、日本一のクラゲの水族館というのが東北(鶴岡市)にあって、それとの現実の整合性がどうなるのか、それだけが問題。
松尾:下関もクラゲですよ、海響館。
香月:ああ、(クラゲの水族館は)日本に一箇所だけじゃないんだ、じゃいいや。
最終審査
皆田:選ぶのは3本でしたっけ?
盛多:大賞1本と優秀賞2本です。いま残っているのが「池の鯉」、「無心の水槽」、「たまてばこを探して」、「父からの贈り物」、「優しさめぐり」。これを3つにしぼるとしたら、どれを落としますか? 「池の鯉」は落としてもいいかな、と思っているんですが。
香月:「池の鯉」はメッセージがそのままでしょう。言いたいことをそのままセリフにしてる。ドラマの場合、セリフは捻って膨らませてやらなきゃいけない。
副島:反戦でも嫌戦でもどっちでもいいんだけど、今風の若者に戦争体験を語って聞かせるって構図が、もういいやって。
香月:説教してやるとか、教えてやるって感じでね。
森 :(4作品に得点を入れているけど)3つにするのなら「無心の水槽」を減らしたい、かなぁって感じ。ちょっと丸が欠けてるんだよね、あたしの中では。怖いけど。
皆田:「たまてばこ」にしても「父からの贈り物」にしても、最後が爽やかであったり希望を感じたりというものがあったんですけど、ちょっと色合いが違うじゃないですか「無心の水槽」は。色合いが違うから、どうかなって思ってる。
香月:つまり、ドラマの持っている社会性という、やっぱり喜劇であって欲しいという、喜劇っていうのはおかしいけど、世の中に幸せをもたらすものであって欲しいという。
皆田:それから言うと、「たまてばこ」か「贈り物」のどっちか。
香月:「たまてばこ」は、確かに結末は成功劇になっているけど、ちょっと沈んでる、気持ちのいい成功じゃない。「父からの贈り物」は、もろにハッピーエンド。社会に幸せをもたらす作品ということであれば、「たまてばこ」はちょっと弱いかなって感じ。
森 :「無心の水槽」と「父からの贈り物」と「優しさめぐり」で考えればいいんじゃないですか?
盛多:「たまてばこを探して」を落としてってことですか?
副島:「たまてばこ」と「父からの贈り物」とだったら、私は「たまてばこ」を残したい。
盛多:まったくぼくも副島さんの意見に賛成。「たまてばこ」のほうがまだ説得力がありそうな気がする。「父からの贈り物」は作り物ぽい。
皆田:(ぼくの採点では)両方同じ点数なんですが。「父からの贈り物」には(場面の)移動があるじゃないですか、あえて違いを言えばそれくらいかな。
副島:「父からの贈り物」は、終盤が偶然に頼りすぎているんですよ。
香月:時計を10分進めていたゆえに、火事から助かったというのは、仕掛けがあまりにもね。
皆田:それが贈り物なんでしょ。それによって、異母弟と向き合おうってなったわけで。
副島:だからこの偶然の事故が起こってなかったら、何事もなく終わってた。
香月:うちの親父なんかも、明治生まれの男だけど(腕時計の時刻を)10分進めてた。確かにそういう習慣はあったんだけど。(世間に)時計があふれているでしょ、だから20年前とはいえ、10分進めている人はもういなかったと思うね。
副島:この人間関係で作るんだったら、男の子を主人公に、義弟の視点で語られていたら、共感できるストーリーにできたのじゃないのかって思う。お父さんに逃げられた母親と娘に共感できなかったんですよね、一方的過ぎて。
香月:これ、父親がいなくなった理由が明確に書かれてないですね。
盛多:それって大事件なのに、なんで(言及しなかったのかな)という疑問が残ります。人物が一方的だったり、そういったところで作り物ぽい。「父からの贈り物」は消してもいいですか?
皆田:はい、どうぞ。
盛多:では、「無心の水槽」、「たまてばこを探して」、「優しさめぐり」から、どれを大賞に選ぶかということになりますが。
副島:「優しさめぐり」は子どもたちのキャラクター作りがデリケートというか丁寧で、セリフが生きている。
香月:これは本当にいい、可愛い作品ですよね。テクニックが、スキルが非常に良い。
盛多:水族館があって、そこにイルカの作り物があってという、「無心の水槽」の世界観って、すんなり入ってこれました?
副島:セリフがわりと説明なんですよね。説明なんだけど、「無心の水槽」はプロが仕事の段取りとして喋っているから、説明っぽく聞こえない。不自然さがない。
香月:喋りに必然性があるからね。
盛多:娘と母親が水槽のなかで会う。この結末って感動の話なんですかね?
香月:これはやっぱり、人間の虚無感あるいは無常観、それに未来の社会を投影させている感じの。つまり脳と心臓に何があるかってことね。
盛多:娘と母親が会うことができた、その先に何か別のものが見えてこないと。頭脳が人間でしたよってブラックな終わり方だと、それはなんとなく違うような気がする。
香月:本当は最後はそこまで押さなきゃいけなかったんでしょうけど。
盛多:まぁ、音楽とかいろんな要素が入ってきますけど。(そこまでやるのが)良いか悪いかの判断がつかない。
香月:ただ、そこまで押したら作品が通俗の世界に陥るから、という作者の潔癖感があるんでしょう。
作品を真摯に書いていくと最後はハッピーエンドでなかなか終わらないんですよね。それは媚びるっていうとおかしいけど、リスナーに良い気持ちになってもらいたいというサービス精神があるからそうなるんであって。作者が自分を極めていったら、そこまで書くと作者のサービスになってしまうから、サービスの部分は切り落とそうってなる。やっぱりこういった結末になるでしょうね。
松尾:でも、お母さんと娘のイルカを(水槽に)一緒に入れてやったのが愛、人間らしい優しさなのかなって思ったんだけど。
盛多:決めていいですか、「無心の水槽」が大賞、「たまてばこを探して」と「優しさめぐり」が優秀賞。
松尾:これ、ドラマ作るの楽しそうじゃないですか! 絶対楽しいと思う。
第11回二次審査通過作品
第11回南のシナリオ大賞 二次審査通過作品
ラクダが飛んだ日
小島老人のキャラが面白い。セリフの流れだけで読ませる。セリフは巧いのだが、どこにテーマがあるのか掴めない。冒頭の老人芝居をやっている母娘はいらないのでは?
風の向こうに見える
君遊園地のアトラクションを擬人化した話で、ローラーコースターに想いを寄せる観覧車のラブストーリーという奇抜な設定が刺激的。派手な効果音が満載。登場人物が(人ではないが)普通の人名で呼び合っているし、そこに事故の被害者が絡むと、ますます話が分かりづらい。タイトルが平凡だし、結局なにをやりたかったのか分からない。
フェイクファーザー
結婚式当日のそれも直前に、突然6年ぶりに現れた父親。その父親のキャラが面白い。物語のテンポも良く、レンタルの父親と、本物の父親が芝居仲間であったという設定も納得できる。ラストの短い会話に父・娘の愛を感じる。
池の鯉
ファンタジーであるが最初に鯉のクロがきちんと状況説明をしているので、スーと物語の中に入り込める。理不尽な戦争、それで死んだ者、生き残った者、それぞれの想いが交錯するが、こんな形で72年前の戦争を伝えるのも有りだと思う。
貯禁箱
硬貨を擬人化させるドラマ。ヒントが高感度。女性とお金の硬貨達との会話が長いのが難点か・・・。
無心の水槽
近未来的な水族館で職員と、娘を探す母の絡みが面白い。イルカに娘の脳を移植、その後母にも。再会の感動。
たまてばこを探して
15枚の短い中で物語性のあるドラマがうまく展開されている。ただ「玉手箱」に色々な要素や縛りをつけすぎ、更に「浦島伝説」を絡めようとして処理仕切れてないのでは?箱を開けない前提ならば女主人は自分の手紙が入っている箱を捜すことに何故執着し、何を期待していたのだろう?もう少し矛盾する点を整理して引っかかりなくすーと納得できるような展開が欲しい。また、戦時中に陸軍病院で療養中の結核患者が浴衣で散歩…に違和感を感じる。そんな悠長な事が許されたのか?そもそも結核で徴兵検査に合格できるのか?
ロボ手も借りたい!
「家事ロボット」や「美魔女」など現代的なアイテムが入り、ひと味違ったホームドラマになっている。しかも優秀で完璧なロボットがスイッチ一つで豹変するひねりが面白いが、無駄な台詞、台詞の甘さが気になる。最後ももっと無駄なく短かくしめたほうがよい。その分関西弁でスパルタに変わったロボの姿や、その対応に慌てる家族の姿を描いた方がより面白かったのでは。
父からの贈り物
ドラマ性が高い作品。家を出た父親が亡くなり、遺品として10分進んだ時計が残る。それで命が助かるという設定だ。そこがドラマ性を高めているのだが、段取りくさい感じがする。父親が出て行った理由もキチンと書くことも必要。
優しさめぐり
子供がいい。ちょっと生意気だが、いかにもいそうな感じがいい。その子供らが大人の世界に触れつつ成長していく。全体のイメージも、あるファンタジー感が流れている。
以上、10編
第11回一次審査通過作品
第11回南のシナリオ大賞 一次審査通過作品
一次審査員の寸評(応募順)
サンタが島にやってきた
サンタとの会話のテンポがよい。洒落た設定の、不思議な味がある作品。納得できる、インパクトがあるオチが欲しかった。
薩摩おごじょの娘
細部までよく練られた、ヒューマンドラマ。すべての登場人物が生き生きと描かれていて、作品に無理がない。薩摩おこじょというワードが随所ではまっていて、説得力がある。
ラクダが飛んだ日
テンポの良い会話が魅力的。世相を反映させながらも、情に流されずドライなラストに、リアルさを感じた。登場人物の出入りが多く、音声のみだと混乱するかも。
国東幻視行
キャラがはっきり立った作品。ほどよくファンタジーテイストの、破たんがないストーリーに仕上がっている。ガイドブックから引用したような箇所が気になる。
女の勘
扉一枚を隔てた緊張が伝わってきて、いるかいないか分からない女性の存在が最後まで気になった。キャラクター設定をもう少し膨らませるとさらに面白くなったのでは。
金六さんの墓参り
糸島に伝わる「渡し守金六さん」を題材に、大人の上質なドラマに仕上げている。大きなストーリー展開がないが、独特の世界観がある。ただ、ご当地ネタだから分かりづらいかも。
風の向こうに見える君
病床での混濁する意識の産物なのか、ファンタジーなのか。人とモノとの曖昧な境界線がたのしい。
あなたのせいで眠れない
新婚夫婦の夜の寝床で繰り広げられるコメディタッチドラマ。普段は優しい夫が、眠りにつくと豹変し、それに驚いたり、傷つく妻の心理に共感が持てて、とにかく楽しい。もっとセリフが磨かれれば是非ラジオドラマとして聞いてみたい。
浪速のケチャツプライス
CM制作現場(ワンシーン)で繰り広げられるテンポ良いドラマ。セリフに勢いがあり、とにかく楽しい。ストーリーの前半がよかっただけに、後半に向けて内容が少し尻すぼんだ感があった。
トルコ狂想曲
兄妹の会話の底流に2人の逞しさを込めつつ、巧みな伏線が物語に膨らみと弾みをつける。
おばあちゃんの恋文
おばあちゃんの手紙をめぐり意外な事実が徐々に判明する展開が良かったです。物語を通じて主人公が彼氏への攻めの姿勢を獲得する変化も明確に描かれていました。全体に綺麗な仕上がりでした。
女のたちの一夜
凡庸な容姿の娘が美魔女の母親に対して抱くコンプレックスという図式が新鮮でした。娘の起こした事件を通じて本音をぶつけ合う母娘、そして明らかになっていく娘の生い立ち。美しく仕上がった会話劇でした。
フェイクファーザー
いいかげんだけどダンディで娘思いの父親のキャラクターが素晴らしかったです。過去の事件の真相が徐々に明らかになって行く展開と、ラストの主人公の決断の瞬間の見せ方も見事でした。
雨を殴る
新聞配達奨学生という設定が面白い。午前2時半に起床して準備して、雨の日にはどのような苦労があるのか。あまり知られていなかった新聞配達の世界を若者の目で捉えているのが新鮮。雨を殴るというタイトルの意味が分かると、なかなか斬新な作品だと思った。ただ、最初の方の「中継車、不着、降りる」という言葉が場面を分かりにくくさせている。雨を殴るシーンの効果音も工夫が必要になる。
池の鯉
ファンタジー仕立てで戦争を扱っているため好き嫌いが分かれるところだが、設定は面白いと思う。鯉の恩返しというか、鯉がお世話になった人々の背中を押す事で物語が動いていくのは興味深い。セリフが長く、説明セリフになっているのが少々気になる。テンポよく、落語のように緩急をつけたらオーディオドラマとして成立するかもしれない
お祈りメール
最初、お祈りメールという言葉の意味が分からなかったが、作品を読み進めると就活の落選通知メールである事がわかる。読んでいるだけで場面が浮かびやすい。面接に落選した時のSEを仏壇のカネの音にするなどオーディオドラマを意識した作りになっている。ストーリーも、就職面接に失敗してばかりの主人公が母の再婚相手を面接し、そこから自身の面接合格のヒントをつかむなど設定が面白い。最後のオチもなかなか効いている。
ハーフセンチュリーブルース
モノローグの説明セリフが多いが、50歳でリストラされた会社員の悔しさ・やるせなさがよく伝わってくる。また大学時代の親友の思いやり、同じワンゲル部だったミヤコの行動力に感化されて変わっていく主人公の心情にも共感できる。3人それぞれが人生の難関を越えていこうとする気概をワンゲルにかけているところがいいと思う。開聞岳が効果的に使われている。
恋と泡
ファンタジー要素の強い難しい設定の作品。厳密に読み込めば突っ込みどころは多数あるが、短い枚数でよくまとまっている。
高校写真
主要人物の男子大学生と女子高生の会話が軽快でキャラが生き生きと描かれている。
ひよこの夢
プロのミュージシャンを目指す男と真面目な公務員の人物設定がうまく表現できている。人物描写がうまく描き分けられているため、結婚相手としてどちらを選ぶかという葛藤もより明確に表現できている。
助けて
シンプルなプロットだが意外とドンデンが面白い。伏線もちゃんと引いてあり、冒頭、主人公が裸足で歩いていた理由も、ラストで理解できる。読んでいくうちに楳図かずおの漫画が頭に浮かぶのは僕だけ?でも僕は好きです。この作風。
貯禁箱
小銭が展開する「トイ・ストーリー」。単純に面白い。OPとオチが繋がり、さらに大オチ。いいですね。「助けて」が楳図かずおの漫画なら、今回は「ギンギラ太陽’sが小銭の被り物しながら舞台をやったら…」を思い浮かべてしまいました。ただストーリーがタイトルの「貯禁箱」には繋がっていないかも。(豚の貯金箱を『ブタ箱』というのはとっても面白いですね。うちにも豚の貯金箱があるので、妙にリアル。短編として秀逸の物語ですよ。
慕金箱ストーリーにもセリフにも既読感は否めないが、飽きずに読ませてくれるのは、十分な筆力によるもの。中盤の盛り上げ方も上手い。慣れた書き手ですね。募金箱に万札、入れてみたいです。
無心の水槽
「世にも奇妙な」的なストーリー。オチが途中で分かっちゃいましたが、ラストに何かがきっと待っているだろうと読み進めると、意外とすんなり終わっちゃう。ちょっと残念。イルカの脳=人間とほぼ同じ クラゲは心臓も脳もない このあたりから来る物語の発想は面白い。脚本がシンプルなので、演出家が「脚色」しやすい、してみたいと思わせる内容でした。
さくらの中で罪滅ぼし
【女のエグサ】がよく伝わりました。タイトルは気に入りません。
箸袋
この世代以上の人は旅行先の箸袋を思い出として持ち帰ったものです。登場人物のキャラクターが今の時代に共感を呼ぶのか、との思いがありますが生き方の力強さに現代になかなかない魅力がありました。
蛍と真っ赤なオープンカー
これといったストーリーはない。謎解きをもう少し深めて欲しい。予想通りですが、まぁこういうばあちゃんがいたら面白いかも…くらいですかね。
恋愛シュレーション
全体の【枠】はいいなと思いました。ただ話の内容が…どうでしょう?
たまてばこを探して
謎を頭に持って来て徐々に解明。期待させる展開。
ロボ手も借りたい!
書き手の願望をそのまま物語にしたお話だと思います。家事は大変なのにありがたみをわかってもらいにくいですよね。個人的にはロボットが性格チェンジするまでをもう少しカットして、ロボットが夫や子供をお仕置きしてるシーンが欲しかった。
さよなら、ブルームーン
ありきたりなお話なのに、文章に雰囲気を持っています。文章に風味があるというのはそれだけでとても大きな武器です。そして物語も決して破綻していません。いい作家になる予感があります。
サランガッタな夏
発想が面白く、セリフが軽妙でスラスラ読めます。ただ生きてる人と幽霊の話が交錯してるシーンは音声になったら多分よくわからないでしょう。そこがもったいない。
最後についた嘘
幸せって、希望なんですね。作者がそう思って書いたのではないかと勝手に憶測します。その考えがとても素敵で、そこが作品にもでていると思います。突然の亡くなり方がもったいない。倒れたところを外して、亡くなった後を加筆した方が厚みがでたかもしれません。
いま、解散!
これはうまい。老境に入って、妻と娘に解散宣言って、いいですね!やってみたいけど、ホントにやったら3日で後悔しそう。セリフにもありますが、「離婚ではなく解散」なんですね。最後に一ひねりあってもいいが、これで充分。とても気持ちの良い作品です。
秋風
長編を15枚で無理にまとめた感じで、実家の窮状や弟のワルぶりが伝わらない。違法行為を思わせる導入からストーリーは悪くないし、もっと短いセリフでテンポ良く繋げるとか、少し弄るだけでもっと良くなりそう。色々と惜しい。
ヘッドフォン・ガール
マンガやアニメの方が向いてそうな軽めの話だが、えらく読後感が良い。もう1人の自分との友情、別れを上手く描いた。むしろオーディオドラマ向きか。なんか妙に魅力のある作品です。
雨あがりのガール
動けない母への復讐(いやがらせ)は、キングのミザリィを思わせて、引き込まれます。ただその後の展開が普通すぎて勿体無い。きれいにまとめない方がよかったかも。筆力は十分。
おばあがくれた思い出
よくまとまっていた。構成もしっかりしており、テクニックがあった。末期癌の母親の感情が伝わってきた。綺麗にまとまりすぎてきたので、欲を言えばどこかに意外性があれば良かった。
二十五年後の二人二人の女性の会話だけで進む話。初めはいじめの復讐ものと思い読んでいたが、意外などんでん返しがあり楽しめた。セリフをもっと精査したら面白さが増す。
父からの贈り物
主人公の腹違いの弟に対する態度が繊細に描けていた。また、時計のカラクリも考えられていて良かった。モノローグで物語が進んでいたので、そこが残念。
鶯の子
ラストがウエルメイドになりすぎだが、物語としては整っている。
7日なのかアイドルとお婆さんが入れ替わった7日間。発想としては面白い。
優しさめぐり
子供。お金。そして、のろい。この3要素が交じり合い、しかもフアンタジイな物語に仕上がっている。
以上、43編
大賞 「無心の水槽」 江頭六花彦

受賞者のことば
江頭六花彦 (福岡県)
スマートフォンに機種変更したばかりだったのです。電話の取り方はわかっていたものの、そのときは慣れないSNSに四苦八苦している最中でした。あれ、画面端に何か出てる。え、着信? どうするのこれ。押すのか? 通話中? 「もしもし」「大賞ですよ」……無事に吉報を受けることができて、本当によかったです。
物語をつくるきっかけと温かいダメ出しをくれたシナリオサロンの仲間達や、先生がいたから、書くことができました。大賞に選んでいただいたこと、心から嬉しく、誇らしく思います。ありがとうございました。
「無心の水槽」 あらすじ
野生のイルカを獲ることが禁止された世界。イルカは主に工場で作られるようになった。イルカ工場の工場長、田代は、期待の新人である梅野とともにイルカ生産に励む毎日を送っている。
田代には、もう一つの顔がある。それはイルカ工場と秘密の通路でつながっている「うらら水族館」の館長。
水族館には巨大な水槽があり、たくさんのクラゲが展示されている。クラゲの水槽には、疲れた人々が引き寄せられるようにやってくる。
田代は、そんな人々をイルカの材料にしていた。失踪した娘を捜す和子が、水族館を訪れる。そして田代と出会う。娘同様、和子もイルカの材料にした田代だが、疲れのせいか、少し感傷的になるのだった。
優秀賞 「たまてばこを探して」 天沼 彩

賞者のことば
天沼 彩 (神奈川県)
優秀賞を頂き大変嬉しく思います。……いやァ? 驚きました。人間、本当に驚くと大したリアクションもしないもんなんですね。私はケータイ片手に随分な間抜け面を晒していたんじゃないでしょうか。おはずかしい。
音と会話だけでどれだけ情緒や空気感を伝えることができるか、そしていかに語らず説明しすぎずドラマを展開できるか。この二点に特に拘って書きました。謎とちょっとのサスペンスを混ぜて…。
さて、いかがでしょうか?シナリオの向こうに、景色は見えますか? 風は吹いていますか?
「たまてばこを探して」 あらすじ
美術館の学芸員・岩田と佐藤は、海嶋慶一郎氏の遺品を鑑定するため海嶋家を訪れる。蔵に大切にしまわれた思い出の品々を広げていく二人。千代はその中に、むかし慶一郎に渡した『玉手箱』があるはずと言う。
その逸話に感動し、箱を探すと意気込む佐藤。一方、岩田は複雑な思いでいた。実は岩田は、美術館に寄付をする代わりに蔵に隠された遺書を探してほしいと千代の娘婿たちに頼まれた副館長の指示で来たのだ。
だがどうしても乗り気になれない岩田。佐藤が蔵の屋根裏に隠された箱を見つけるが、岩田は箱を開けずにそのまま千代に渡す。
千代の指示で開けると、中には遺書ではなく慶一郎からの千代への手紙が入っていた。千代は感謝し、蔵の中の遺品を全て美術館に寄付するという旨を伝える。
実は千代は娘婿たちの思惑や岩田の目的を全て承知の上、箱を探させて真心を試したのであった。
優秀賞 「優しさめぐり」 一樹ろこ

受賞者のことば
一樹ろこ (神奈川県)
この度は優秀賞をいただき、大変嬉しく思います。この栄は、私にエネルギーを与え、支えてくれるものと信じております。
コンクールに向け、何を書こうかと考えた時、九州・沖縄地方が抱える様々な高いハードルが心に浮かびました。そして世の中を取り巻く閉塞感も。しんどい暮らしの中でも温もる物語を書きたい――こうして『優しさめぐり』はできました。登場人物たちの行動は、良きも悪きも優しさから起こります。それがリンクし、やがてラストシーンへ繋がります。主人公・丈少年の想像に、私も寄り添わずにはいられません。この物語に触れた人たちの心に、小人のホットミルクくらいの温もりが届きますように。
最後になりましたが、お世話になった全ての皆さまへの山盛りの感謝をここに込め、受賞の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
「優しさめぐり」 あらすじ
江口(8)は、自動販売機の釣銭口をチェックするのが日課の小学3年生。
「世の中のお金には呪いがかかっている」と思っている。ある日、丈は、クラスメイトのゆみが学校に持ち込んだすっぽんドリンク剤を、愛理(8)が盗むのを目撃してしまう。
丈に近づく愛理。「俺、ゆみに言わねーし」と聞きホッとするも、盗んだ理由を丈に知ってもらおうとする。
丈が連れて行かれたのは病院。そこには植物状態の愛理の父が入院していた。必死にすっぽんドリンクを飲ませようとする愛理。
そこへ誰かがやって来た為、二人はカーテンの後ろに隠れる。こっそり覗き見ると、愛理の父にキスをする看護師がいた。驚く丈。しかしそれは愛理の母であった。病院のラウンジでケーキを食べる丈と愛理。愛理は、丈の言う「お金の呪い」をどうしたら解けるのかを考える。
果たして、その導き出した方法で呪いを解く事が出来るのだろうか。
総評
まずは、195編の応募、ありがとうございます。一次選考で43編に。二次選考で10編に絞られました。そして、大賞に『無心の水槽』。優秀賞に『たまてばこを探して』と『優しさめぐり』の2編が選出されました。
一次から最終選考までおよそ一ヶ月間。一つ一つの作品に審査委員は向かい合ってきました。そして、一つ一つの作品に込められた思いや熱などを感じてきました。やはり、原稿用紙15枚には、それなりの物語が作り上げられていたからです。
最終選考に残った10編に大きな差はありません。さらに言えば、大賞と優秀賞を決めるのに審査員それぞれの思いがあります。大賞はコレだろうと審査員で違うこともあります。そこは討議を重ねていきます。
大賞の『無心の水槽』は、近未来的な物語です。舞台は水族館。そこで起こる不思議な物語です。クラゲに心臓も脳もないというセリフが今でも残っています。
優秀賞の『たまてばこを探して』。15枚の短さで、よくここまでの物語を仕上げたことに感心しました。たまてばこにあったのは、夫から妻への手紙でした。
そして、もう一つの『優しさめぐり』。なんと言っても子供の存在感が際立っていました。子供から見た大人の世界が印象的でした。
いずれ、『無心の水槽』は、オーディオドラマとして製作されます。時間があれば、日本放送作家協会九州支部を検索して聞いてください。公開は来年の1月10日以降になります。
最後にもう一度、195編の応募、ありがとうございます。そして、来年の南のシナリオ大賞の応募をお待ちしています。
審査委員 盛多直隆
第11回 南のシナリオ大賞 表彰式
日時:11月25日(土)15:00~16:30
場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神)






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