第13回 南のシナリオ大賞
- 2024年3月12日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年4月1日
第13回 南のシナリオ大賞 結果発表

南のシナリオ大賞
「はるしぐれ」伊吹 一(東京都)
優秀賞
「沼子の人生」日高 真理子(福岡県)
「パラダイス・ロスト―この世の果ての物語」荻 利行(東京都)
「さらさら願い」なないろ みほ(東京都)
一次選考通過作品
一次選考通過作作品(朱色は二次審査通過作品)
「南の国のピンク・マザー」 中泉拓也(北海道)
「浮気のくすり」 鍛塚保治(東京都)
「交渉」 テル(新潟県)
「髪切り屋」 渋谷春奈(東京都)
「雨の神様」 リリー・ストーン(三重県)
「マシュマロ食べたよ」 土師乃ゆうかり(京都府)
「たまたま」 圀湯和きゃしい(福岡県)
「しょぼチン!さま」 山下蛙太郎(福岡県)
「沼子の人生」 日高真理子(福岡県)
「誰かの日記」 岡崎優子(茨城県)
「ごメンなさい」 新堂 陣(東京都)
「大規模修繕」 佐山奈央(福岡県)
「鳴音~ハウリング~」 山本律麿(福岡県)
「オーエン!」 宗意和代(千葉県)
「キンモクセイの調べ」 菊谷淳子(東京都)
「通り雨」 森野東子(神奈川県)
「着納めのワンピース」 浅田佳子(東京都)
「間違いだらけの協奏曲」 藤木健(千葉県)
「おじいちゃんが引きこもり」 薮原祐子(神奈川県)
「餃子の気持がわからない」 乙いっぺい(東京都)
「同級生」 関口匡彦(埼玉県)
「夏奈と宮古の守り神」 美苗(神奈川県)
「ボクと家と両親と」 永朝セイル(東京都)
「アザミの花」 長野恭治(春日井市)
「母とイチジク」 小野寺香奈(大阪府)
「ある獣医の長い一日」 武田康成(愛媛県)
「夏休みの宿題」 福丸慎弥(東京都)
「パラダイス・ロスト―この世の果ての物語」 荻 利行(東京都)
「クジラに食べられたい」 こたつめがね(東京都)
「空汰の赤」 森岡美帆(神奈川県)
「田んぼ道」 福丸慎弥(東京都)
「おさない・・・罪」 岬由美子(岩手県)
「欲しがりのなのに」 藤田知多佳(東京都)
「おもかげ」 上野麻菜美(愛知県)
「はるしぐれ」 伊吹 一(東京都)
「さらさら願い」 なないろ みほ(東京都)
「柳の庭」 添谷泰一(鳥取県)
「星屑のランタン」 加藤絵里(埼玉県)
「はぐれ仙人、島に帰れるか」 羅生 瑠(愛知県)
「ピアノ」 岡田道子(東京都)
「女々しさたっぷりに育ったトマト」 谷崎ちはる(千葉県)
「散骨の旅」 八田明子(神奈川県)
「精霊の光」 深海あいこ(福岡県)
「絡まった青春のほどき方」 神宮祐子(東京都)
応募総数
200編(2019年8月31日締め切り)
主催
文化庁「九州・沖縄から文化力プロジェクト」参加事業
主催:日本放送作家協会九州支部
後援:日本脚本家連盟九州支部 / 日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会
選考会
2019年10月19日、福岡市中央区赤坂
審査委員: 盛多直隆、皆田和行、副島 直、香月 隆
実行委員: 松尾恭子
第13回最終選考ドキュメント
第13回南のシナリオ大賞 最終選考会
(3) 「キンモクセイの調べ」
(3) 「はるしぐれ」
(2) 「沼子の人生」
(2) 「誰かの日記」
(2) 「バラダイス・ロスト-この世の果ての物語」
(2) 「さらさら願い」
(1) 「着納めのワンピース」
(1) 「精霊の光」
(0) 「雨の神様」
(0) 「通り雨」
(0) 「おじいちゃんが引きこもり」
()内の数字は審査員投票数
「雨の神様」
副島:大雨でコールドゲームになった高校野球の選手が、数年後に再会して……
盛多:最後は女の取り合いになる。
副島:野球、ネットショッピング、結婚って流れが安易。
盛多:展開が都合良すぎて、自然に見えない。
副島:コールドゲームになる場面の音の入れ方で、雨滴ポツリから雨音が大きくなって雷鳴って、そこだけ読んでも稚拙。全体的に未熟です。
香月:ドラマ作家としてはまだまだ駆け出し。
副島:女性の性格の悪さが受け入れられなかった。わざわざ男二人を呼び出しておいて、わたしこの人と結婚するのって、なんてデリカシーのない、なに考えてんのこの馬鹿女って。しかも遅刻してくるし。
盛多:そのへんの、人間のリアリティの乏しさが、初心者って気がする。
「通り雨」
副島:居酒屋でバイトしている男の子の精神的成長ものがたり。
盛多:職場でダメ評価されてる主人公がいて、事件があって快復して、職場に戻って頑張れよって、このパターンはもういいよ。
副島:オリジナリティがなさ過ぎる。既存のドラマを書き写しただけのような脚本。
香月:平凡でソツがない、分かり易いけども、設定や雰囲気が古くて。山場を作りすぎてる感じがした。
盛多:タクシー乗り場の場面で「逃げるんですか、自分のしたことから」ってセリフが出てくるんだけど、これがピンとこない。ここでこの男がこのセリフが言えるのかって。都合よく作ってる感じが強い。
「おじいちゃんが引きこもり」
副島:じいさん、なんで部屋に閉じこもってたのかな?
皆田:ばあさんが死んで?
松尾:好きな人ができたんじゃなった?
皆田:老人会に出なくなった理由は女絡み。
盛多:女絡みがよく分からなかった。
副島:そういう話を隣家のおばさんから聞くけど、はっきりしない。
盛多:カラオケの「365歩のマーチ」を19歳が唄うってのがピンとこない。
皆田:疑問を持たせたまま終わってますよね。どんな女絡みだったのか、それは解決したのか、ただ出てきただけやろ。
副島:女絡みで引きこもっているじいさん呼び出すのに、なんで「365歩のマーチ」なのか? 母親が子どもたちを呼びつけてじいさんの家になぜ集まるのか? なにをやろうとしたシナリオなのかも分からない。作者には何かオチるところがあるのかな、これ。
松尾:天の岩戸の話で、歌って踊って出てきたじゃないですか、アマテラスが「なんばしよっと?」って。
副島:はい。
松尾:それとおじいさんの引きこもりを掛けている。
副島:なんのために?
香月:発想が高千穂なんですよ。高千穂に行ったか聞いたかして、これ面白いと思って、それをアイディアにしたんじゃないかと思う。これはコントですよ。コントとドラマの間には明確な線引があると思う。面白かったけど、すごくもたついてる。
盛多:ラストの「遺伝子って怖いわ」ってセリフ、笑えないな。
「着納めのワンピース」
香月:さり気なくて上手くて、跳ねてないけど地味で心地よい。ぼくはこれを二重丸で推したいんだけど。けっこうテクニックが良いんです。ドラマ化して非常に聞きやすいラジオドラマが出来るんじゃないかと思える。作りやすいですよ、この脚本は。
盛多:読んだあと、いちばん印象に残っているのがエメラルドグリーン。ラジオドラマというより、映像みたいな気がしてならない。
皆田:色の話はキーポイントだと思うので、ラジオ的にはどうなんだろうなって気はしました。エメラルドグリーンの海ってこんな色だったっけ、とか。
香月:テレビで実際出すと、エメラルドグリーンは軽くなっちゃいそうですね。
盛多:軽いかどうかぼくは分からない、撮り方によって色彩は変わってくるんで。そういうことじゃなくて、色をテーマとして考えたときの話。エメラルドグリーンのワンピースを着るっていうのは、女性にとってどうなの? そんだけの何かがある?
松尾:明るい緑色って普段は着ないかな。
盛多:保育園の送迎で服装にこだわってるお母さん方って見たことがない。帰ったら御飯作らなきゃ、洗濯しなきゃ、掃除しなきゃって感じで。みんな機能優先の服着てる。
副島:子育てと会社勤めの往復、お洒落に気を遣うゆとりがない。関心を向ける余裕がない。
盛多:それがエメラルドグリーンのワンピースを着ることによって、私は人生変えるのよって。主人公の意思表示として出すんだったら、やっぱり映像かなって思いますけどね。
香月:ぼくはエメラルドグリーンというキーワードよりも、その前後に揺蕩うている文章の流れ、セリフのリズムに惹かれたんですけどね。
皆田:大城という男とのやりとりなんですけど。ワンピースを着て来たときに(大城が)見つめるんですよね。そういう引っ掛かりを作ってあるんですが……ツンデレじゃないけど、自分に無関心と思っていた人が実は好意を寄せていた。
香月:パターンといえばパターンですけどね。
皆田:ふたりの恋話に発展するわけだけど、大城って男の情報が少ない。無表情で仕事オンリーってことしか書かれてない。
盛多:そんな大城が誘うんですよ。
松尾:ランチに誘われるんですよね。
盛多:それに乗っちゃうんですよ! 女ってそういうことなの?
副島:身近なところで誘いがあったから乗っちゃったって。尻軽いよね、このお母さん。
松尾:大城さんが斎藤工みたいな人かも知れないじゃないですか。
皆田:娘が(母親にお洒落な服装を求めているのは)ライバル心からそうしているじゃないですか。そっちの話のほうが、ぼくには温かかったんですけどね。
副島:子持ちバツイチの等身大のラブストーリー。流行の周回遅れというか、これまでに(そんなドラマは)たくさん作られているのに、いまさらまだこんなの書いてるの、って感じです。
盛多:ぼくのなかでは「着納めのワンピース」と「通り雨」って似ているんですよ。レベルは「ワンピース」が断然上なんだけど。こういうドラマは、いままでいっぱい見てきた感がある。
皆田:些細なことかもですが、営業やっているOL(主人公)がワードも使えなかったというのはどうなんだろ。バックスペースで消すって教えられる場面があったんですけど、それすら知らなかったとか。
精霊の光
副島:ひところ流行ったんですよね、臓器提供者の人格が乗り移っちゃうとか声が聞こえてくるとか。10年くらい前にむちゃくちゃ流行ってた。
松尾:分かり易いし、シチュエーションが想像しやすいけど、お母さんとの絡みのバランスが物足りなかった。お母さんから逃げたかったわけでしょう? でも(主人公は)わりと自由に動いてるじゃないですか。
副島:(母親が)過保護で身体のこと心配している、だから主人公の行動をもっと過剰に束縛しているという感じが出せていれば、もう少し(ドラマ性が)強くなってたかも。男の子に自覚はなかったけど、心臓を提供したひかりちゃんも自分と一緒に育ってたんだなって、そのあたりで不思議な感覚を作れたんじゃないのかな。
香月:心が2つあるってセリフがあるでしょう、このセリフにジーンときたんだけど。あれを結末まで引っぱってこなきゃいけなかった。テーマが観念的すぎて、まだ青い。人生とは何かみたいな哲学がモロに出ているでしょう。硬直な感じ。冒頭のモノローグに結論が出ているじゃないですか。あれできついなって思った。
副島:一緒に生きていたひかりちゃんが、ラストでいなくなっちゃうのは、なんでかな? 結末で失速してる。
皆田:母親との葛藤は、これで解決したってことですか。
副島:そこに精霊流しをぶつけてる。だったら、ひかりちゃんはそれで成仏したってことになる。
盛多:そう結びついてしまうのが自然な流れ。
松尾:男の子がひかりちゃんの存在に気がついたから、それでもう(ひかりちゃんはお役御免と)成仏できた。
香月:物語としてはきちんと締まるけど、それだと定番にすぎる。
沼子の人生
皆田:ぼくはこれがいちばん面白かったですね。(表紙見たときに)「ショウコ」って読むのかなと思ってたんですけど、「ヌマコ」って、名前がおかしかった。
松尾:このキャラは「ヌマコ」じゃないとダメなんです。
皆田:で、姉が玲子って。
副島:命名した親に恨み抱いて当然みたいな。
松尾:沼子のインパクトが凄くて。おかあさん早く焼いちゃえとか言うでしょ。なんて悪い人なんだろうって。
香月:読後感が爽やかじゃなかったね。
副島:家族の人間関係がものすごく分かりづらかった。甥が新婚旅行で来てたり、その嫁さんが外国人だったり、姉夫婦は海外にいたりして。状況設定がギクシャクしてて、すんなりと頭に入ってこなかった。人物表と本文と見比べながら何度も読み返しました。
香月:ゴテゴテしてるからね。ラジオで通り一遍に聞いたとき、すんなり頭に残るだろうか。人物の理解が非常に難しい。悟という人物が出てくるけど、いっさい姿を見せない。ラジオの場合に残りにくいんですよ、こういう使い方すると。それと回想シーンが難しい。
皆田:引きこもりになったのは、悟という男にふられたから?
松尾:ただふられたってだけじゃなくて、姉が取っちゃったから。
盛多:これ、最後の長ゼリフで全部を解決させてるじゃないですか。お母さんに話しかけてる、ここにすべてが掛かってるんですよ。ここだけで決まっちゃう。沼子の強烈なパワーで全部を締めてる。
副島:ラストはドヴォルザークの音楽に頼りきっちゃった。この悪態にあの音楽でしょ、しんみりきますよ。その相乗効果でいっきにクライマックスを盛り上げる。
盛多:そこに集約してる作りは、面白いと言えば面白い。
誰かの日記
副島:記憶喪失の男、病院の朗読ボランティア、それで読むのが作者不詳の「誰かの日記」。設定のリアリティのなさに呆然とした。本文にも書かれているけど、この日記の文章というのがとてつもなく稚拙で。悪口というか嫌味な言葉がダイレクトでしょう。
香月:あり得ない文章ですよね。然るべき年齢の男が書いた日記じゃない。作者の気持ちがそのまま出ている。
盛多:正直言うとぼくも、これを男が本当に書いたんだろうかと疑問に思うところがあちこちにあった。記憶をなくしたという設定のうえで、この日記は旦那が書いたと見せているんだけど、実はこの女が書いたものを朗読しているんじゃないかと。
皆田:奥さんは、なんのために読み聞かせやったんでしょう。
盛多:それは未練があったからでしょう。男の最後のセリフで、また来るかしらって話で終わってるじゃないですか。女の方は、気づいて欲しいというのがずっと底辺にあって、私のことに気づいてよ、みたいな。だから、この日記は女の創作じゃないかなと思っちゃったんですよ。
香月:読んでいて境界線がはっきりしなくなってきた。
皆田:普通ボランティアだったら何かの本持っていって読むんでしょう。それを、ちょうどここに在る日記を読みますねって読み始めるんだけど、彼女は事前にその中身を知っておかないと、こんなことはしないわけで。中身を知っていて、お前はこんなことをしたんだぞ、私たちはこんな思いをしていたんだぞと知らしめている。それに対して、夫は酷い奴だなって言ってるんです、自分のことを。自分とは分かっていなかったんでしょうけど。だからこの女の人って凄いなって思って。
香月:やっぱり自分の思っている方向に引っぱっていきたいって気持ちがあったわけですよ。だからその方向に沿うものだけを読んでいる。最初に持ってきた本の描写をもっと明確にしておくべきでしたね。それをしていないから、境界線がぶれてしまってる。あるいは故意に引っかかりを作ったのかも分からないけど。
盛多:引っかかったのは、「恋をしたときの万能感ですかね」って女のセリフ。万能感ってなんなんだろう?
香月:おれも意味分からなかった。
盛多:恋の万能感。つまり、恋はなんでも出来るのよっていう、ちょっと極端ですけど、するとこれはぜんぶ女が仕組んだことだったという流れで。ラジオドラマだから成立しますけどね。
香月:設定をしっかり書けばそれ出ると思うけどね。女と旦那が分離しにくい。そこをツールとしてはっきり使えば良かった。
皆田:でも実際は彼が書いた日記なんですよね。「ちょうどここにある誰かの日記を読みますね」ってセリフがあります。
香月:じゃやっぱり現物があって、それを読んでるわけだ。
盛多:女が書いたというのは、深読みしすぎだったですね。
副島:朗読の途中に、肌に触れる艶めかしい描写がありましたが、そのへんは官能的でうまいと思った。
キンモクセイの調べ
副島:キンモクセイの匂いとエリーゼの調べが不安な雰囲気を醸し出している。その雰囲気を買って私も票を入れているんですが、内容はよく分からない。
盛多:ラジオドラマとしてそれなりの雰囲気は出せるかな、とは思いますが。少女が幽霊だったってオチをどう作れるか。
香月:確かに雰囲気は良かったけど、ちょっと拙い。もう少し技量があったらもっと良くなってたと思う。これの欠点は、入りが面白くないのと、セリフが日常的で弾みがない。エネルギーに乏しい。それと、全体を覆っている少女趣味が気になった。可愛くはあるんだけど。
松尾:読みながらずっと、頭の中でピアノが流れていた。
香月:正直言って、いまさらエリーゼは聞きたくないね。
盛多:エリーゼのためにって、小学校の給食の時間にいつも流れてた気がする。
副島:子どもがピアノ教室で練習する曲なんですよ。
盛多:ということは、このドラマのピアノは子どもが弾いてるエリーゼってこと?
副島:そうですよ。
皆田:よく分からないのは、主人公の女の子(6歳)がマリちゃんという死んだ女の子と遊ぶんですよね。それで(登場人物表に)36歳ってあるんだけど、現在の自分の娘に6歳のときにあった不思議な話を聞かせているのかな、と思ったんだけど、そういう場面はない。大人になってるシーンってありましたっけ。
香月:(36歳の)シーンを書いたあとで削ったんだけど、人物表を訂正するのを忘れたとか。ときどきありますね、そういうの。
副島:(登場人物表を見て)すごいな、この脚本の登場人物ぜんぶ女性だ。
盛多:そういうのも嫌だな。
松尾:たぶん作者の方も女性じゃないかな。
パラダイス・ロスト-この世の果ての物語
副島:沖縄の離島に誘拐されていた双子が、おばあと3人だけで暮らしている。
盛多:最後におばあは自殺しちゃう。
副島:船から飛び降りる。
松尾:(おばあは)なぜ誘拐したんですか?
副島:分からない。
盛多:そこがいちばん大きい。
松尾:金髪の子だったんでしょう?
副島:青い目をした外国人ですね。
盛多:(おばあは)沖縄戦で酷い目に遭ったってセリフがある。
松尾:それに仕返しする、復讐、みたいなことで誘拐した?
盛多:そのぶんの罪悪感があって自殺したのか。
副島:罪悪感とは違う気がするけど。
皆田:おじいもグルになっているんでしょ。知ってたんだよね、双子が誘拐されていたことを。
副島:知っていたでしょうね、毎回食料とか運んでたから。
皆田:このおじいも死んでるんだよね。
副島:死んだから、代わりに甥っ子の末吉がやってきた。
香月:辻褄は分からないんだけども、おばあがラストで死ぬっていうのはドラマのカタチとしては良いですよ。
松尾:衝撃的ですよね。ぜんぶ謎のまま蓋をしちゃうっていう。ミステリアス感は好き。
副島:声だけだからこの子たちが外国人だって分からない、そのあたりにラジオドラマらしい捻りがある。
松尾:標準語で会話してたと思ってたら、後半コテコテの八重山方言になってる。
副島:最初は主人公ケンのモノローグで始まるんだけど、9ページで漁師の末吉が出てきてからが後編で、そこから末吉の視点でストーリーが語られる。個性的なアイディアで印象に残る構成ではありますが、誘拐の理由も分からず、テーマも提示されていないまま終わった。
香月:末吉は謎解きの役割ですね。最後は戻ってはいますけど、竹に木を接いだって言う感じが強い。最近沖縄に強い興味があって、宮古島もそうだけどあちこち取材に行ったり調べたりしてるんで、この作品ぼくは非常に好きなんです。好きだけど、あっちこちに穴ぼこが多すぎて。末吉が登場してからドラマがボコボコに壊れちゃったから、がっくりきちゃんたんだけど。末吉なんか登場しないで、謎解きなんかしないで、そんな島が何処かにあるらしいみたいな、前半のままの流れで物語を作れば良かったのに。
皆田:地元新聞の記事をアレンジしたのかな? 実際にそんな事件があったのかは分かりませんけど。
はるしぐれ
香月:ラジオドラマの小津安(小津安二郎)版。ぼくはこういうの好きです。すごく作りやすい。気楽に作れますよ。
盛多:正直言ってぼくも好きです。「誰かの日記」よりも好きです。
松尾:情緒的ですよね、淡々とした感じの、映像にしたほうが伝わる。
盛多:淡々とした感じは、そうなんだけど、ぼくが好きだったのは、途中でバス運転手のアナウンスが程良く入ってくるところ。これってけっこう雰囲気いいかなと思って。
皆田:ずっと雨の話をしていて、夜に着くのか朝に着くのか知らないんですけど、最後は虹が見えたらいいかなと、思ったんだけど。
盛多:大雨の音、雷、夕立ち。この雨の音3つが欲しい。秋雨と春時雨(の違い)が分からん。
副島:雰囲気だけのドラマ。作者はいい気分で酔って書いたんだろうな。ずいぶん都合の良い展開。
香月:でもうまいですよ。
副島:雰囲気つくるのは巧いですね。
さらさら願い
副島:河童の恩返し。皮肉なオチがついた民話ベースの童話です。
盛多:最後におねえちゃんが死んじゃうというのが好きだった。
松尾:えー、おねえちゃんが死んじゃうの、ン? と思いましたよ。
盛多:でも死ななかったら普通の話になっちゃう。
松尾:でも、そんな簡単に身代わりになる?
香月:あそこで、単純な童話がドラマになってるんですね。
盛多:票は入れなかったけど、このラストは好きでした。
香月:うまいですよ、流れが非常に良いし。
盛多:河童が喋ってる言葉って何処の方言?
皆田:佐賀っぽくないですか?
副島:ぜんぜん佐賀じゃないですよ!
松尾:筑後と大分が混じってる?
副島:大分っぽいけど。
香月:河童語でしょ。
松尾:語尾が大分っぽい。
これより最終審査-方針として大賞は出したい
副島:今回3作品に票を入れてるけど、全部三角評価なのは、推したい脚本が1本もなかったからです……どれでもいいです。
香月:多少、わたしもそういう気持ち。(選考対象の作品は)みんな、ほとんど同じ点数。
盛多:いちおう方針としては、大賞は出したいな、と思ってます。該当なしというのは避けたい。
副島:1票しか入っていない「着納めのワンピース」と「精霊の光」は落としていいですか?
盛多:いいです、いいです。
副島:どなたか心残りあります? 「着納めのワンピース」(落として)いいですか?
香月:はい。
盛多:「はるしぐれ」と「誰かの日記」かな……というのは、男と女ふたりだけのやりとりの収録をやってみたいな、って気持ちがあって。好きなのは「はるしぐれ」なんだけど。
副島:そのコメント残しておくと、来年(の応募は)そればっかりになっちゃいますよ。
盛多:それは嫌だ、やめておこう。
副島:「はるしぐれ」と「誰かの日記」は、どちらも記憶喪失で、どちらも男と女の二人芝居。
香月:どっちかひとつは落とすべきじゃない? 似ている2作を大賞と優秀賞には出来ないと思う。
盛多:ぼくとしては「はるしぐれ」を選びたい。
松尾:うん、わたしもどちらかなら「はるしぐれ」。
皆田:「誰かの日記」は、ちょっと作者と話をしてみたい感じがします。
最終審査 サバイバル篇
副島:「沼子の人生」「キンモクセイの調べ」「パラダイス・ロスト-この世の果ての物語」「はるしぐれ」「さらさら願い」。5本残っているので、2本落として3本に絞りますか?
盛多:「さらさら願い」は、なんだか捨てがたい。
松尾:可愛いですよね。でもおねえちゃん死んじゃうの。
副島:作品全体にデコボコ感がないのは「さらさら願い」でしょう。(候補作のなかでは)いちばんきちんとまとまっている。
皆田:うまいですよ。でも内容が薄い。
香月:縦から見ても横から見てもこれが大賞だ! っていうゴツい作品ではないですね。
松尾:去年も一昨年も、(大賞は)骨格がしっかりした作品でした。
香月:今年はブッチギリがないもんね……おれ、もう帰ろうかな?
松尾:帰っちゃダメですよ。
副島:(ドキュメントに)ちゃんと書いときます、審査放棄って。
香月:副島さん、ほんとに正直に書くからね。
松尾:怖い怖い。
副島:外すとすればどれですか?
皆田:河童。
副島:わたしは河童は残しておいて欲しいな。
松尾:わたしも河童は嫌いじゃないです。
香月:ぼくも河童は残してほしい。
副島:ということで河童は残す。
盛多:「さらさら願い」は残る。
副島:「はるしぐれ」はどうですか、残したほうがいい?
香月:「はるしぐれ」は残しましょう。
盛多:3票入ってるので残しましょう。
副島:「パラダイス・ロスト」はどうでしょう?
盛多:これ作りにくいよ。けど、優秀賞ならありだな。
松尾:シチュエーションはかっこいいですよね。
副島:けっこう印象にのこるアイディア作品です。
盛多:「パラダイス・ロスト」を残したときに、「沼子の人生」と「キンモクセイの調べ」を落とすってことになりますが。
皆田:「キンモクセイ」は幽霊と遊んでいたんですよね。不思議な体験があって、それでどうなったんですか?例えば「精霊の光」は、これもぜんぜん話は弱いですけど、心臓を移植した子が過保護で、母親との葛藤があったりして思いどおりに生きられないって問題を抱えている。そこに心臓を提供してくれた少女が現れて、それによって、母を説得してでも自分のやりたいように生きるんだ、みたいな成長が描かれているじゃないですか。でも「キンモクセイ」は、不思議な体験したのよ、って言ってるだけ。(登場人物表に)36歳ってあったから、お母さん小さい頃にこんな不思議なことがあったの、それで今ではこんなに上手にピアノが弾けるようになったのよって、自分の娘に語ってるみたいな話だと思って読んでたけど。でも、36歳のシーンは無かった。物語とかドラマって、主人公が成長したりとか変化が描かれているものだけど、これは、ただ不思議な体験をしました、で終わってる。
盛多:たぶんこの作家の狙いは、物語の方向性をこっちに引っぱってきておいて、実はこうだったんだよっていう、そこだけに集約してる気がする。
松尾:映画「シックス・センス」的な、そうやったんか! みたいな(驚き)。
香月:「キンモクセイ」は弱いと思うよ、全体的にみて。これが上位入賞ということなら、ぼくは反対。入賞3本には入れたくない。
副島:「沼子の人生」どうですか?
盛多:そこをいま悩んでる。
香月:ぼくは落としてもいいと思う。
副島:わたしも、そんなに良いと思わないけど。
皆田:中高年の引きこもりっていうのも、いま時代ですよ。
香月:読み終わったとき、なんか嫌な感じが強く残って。
皆田:それほどしっかりした、インパクトのある作品だ、ってことです。好みだと思うけど。
松尾:酷いもん、沼子さん、凄いもん。沼子を誰かが演じてるのを聞きたい。なんて強烈な人なんだろうって、聞きたいよね?
盛多:何を選んでいいか、だんだん分からなくなってきた。
副島:優秀賞3篇というのはどうですか?
盛多:あり得ます。
副島:では、皆田さんが強く推しているので「沼子」は残して。「キンモクセイ」が消えますけど。
香月:消していいです。
副島:松尾さんは?
松尾:いいです、わたしは「沼子」が残れば。
盛多:「沼子の人生」は作りたくない。
皆田:面白いのに。
香月:皆田さん作りませんか。
でも大賞は出したほうがいいですよ
副島:今回は大賞なし、優秀賞4篇でよさそうなんだけどなあ。
香月:おれもどっちかというと、そんな感じね。
皆田:でも大賞は出したほうがいいですよね。
盛多:優秀賞4篇としても、どれか1本は作っているじゃないですか、東京の方も。
副島:あれは放作協が作ってるんじゃなくて、NHKに丸投げでしょ。
松尾:「はるしぐれ」じゃないですか、3票入っているし。
盛多:ちょっと待って。ショック度という言葉を使っていいか分からないけど、(「さらさら願い」の)最後に子どもが死ぬって話のほうがショック度が強い。誰も予測しないですよ、この結末は。
副島:ラストにポーンとシーンが飛ぶ、あの切れ味はいい。素晴らしいと思います。
香月:でもなんかねえ、南のシナリオ大賞ってこんなもんかって思われそうな気もする。
副島:「はるしぐれ」か「さらさら願い」だったら、やっぱり「はるしぐれ」ですか?
香月:その2本を比べたら、そうですよね。
盛多:作るとしたら、無難に「はるしぐれ」か、冒険で「沼子の人生」かな。
香月:作りようによっては「沼子」はパンチがあるかも知れないけど。
松尾:主人公のパワーはもうダントツでしょう。沼子、悪いもん。おかあさんを早く焼けって言うしさ。
盛多:仮に「沼子の人生」と「はるしぐれ」の二者択一とした場合に、どっち選びます?
松尾:2本作れないんですか?
副島:甲乙付け難いのが2本あって作るのなら意味分かるけど、大賞該当なしで2本っていうのは……
皆田:講評で、今回は例年よりレベルが低かったっていうのを一言添えておけば、いいのかなと思うんですけどね。
松尾:ラブストーリーって(過去の大賞に)ありました?
副島:去年が長崎の中学生の話(「言霊のエール」)で、その前がクラゲ(「無心の水槽」)で、その前がお葬式(「備えあれば憂いなくなるお葬式」)。
盛多:「はるしぐれ」でいきますか? 「沼子の人生」も作りたい気持ちがちょっとだけしてきたけど。「はるしぐれ」は上手く作れば、音楽とバスの音で、ちょっとお洒落なものになりそうな感じ……あと雨の音をどうするか? 夕立ちは分かるんですよ、雷があって叩きつけるような激しい雨音で。でも春雨と秋時雨の音って……
副島:おれだったら、バックにピアノかなんかの雰囲気入れてやりますけどね。雨の音なんて聞いてるぶんには違いが分からないですよ。音源に秋雨ってタイトルがあるからこれが秋雨だんだろうって認識できてるわけで。
盛多:「はるしぐれ」を作るとして、それを大賞にするのか、それとも優秀賞4篇で発表するのか。
皆田:いちおう、大賞は選んだほうがいいと思いますよ。
松尾:同列に並べると、他の作者さんが、どうして私の方を作ってくれないのって。
盛多:そうすると、単純に「はるしぐれ」を大賞にしたほうが話がわかり易い。
副島:優秀賞は例年どおり2本に削りますか。「パラダイス・ロスト」にも賞状あげたいですか?
香月:あげたいね。ぼくは「沼子」よりもそっちの方を買ってる。
副島:では「パラダイス・ロスト」まで優秀賞ということで。
盛多:大賞を「はるしぐれ」で、「沼子の人生」と「パラダイス・ロスト」と「さらさら願い」を優秀賞。
松尾:ぜんぜんタイプが違いますね。大人っぽい情緒的なものもあるし、子どもっぽいファンタジーもある。強烈なキャラの沼子もいる。
副島:入賞した4本のシナリオはホームページに掲載しますから。
香月:来年応募する人の参考になるでしょう。
第13回二次審査通過作品
第13回南のシナリオ大賞 二次審査通過作品
二次審査員の寸評(応募順)
雨の神様
面白いです。都合の良い展開ですが、これも有りで、ストーリーテラーの才を感じます。最後に作者の仕掛けに引っ掛かってしまったのは悔しいですが、これもうまいです。終わらせ方も良いですね。もともと長い話だったものを15枚に詰め込んだのか、個々のセリフが説明調で長いので、ドラマにする際にどうでしょうか。短いセリフでテンポよく繋げばさらに良くなると思います。タイトルについても、この作者なら、他にも候補があったはずで、おそらく他のタイトル候補が正解かと。念のため、雨天コールドゲームの条件を調べていたら、2016年の高校野球地方大会で、同様の雨天コールド試合があったのですね。ルールとは言え、実際に試合を裁いた審判、残酷です! 作者もこれを知って利用したのでしょうが、使い方が本当にうまいです。作者は長編もうまく書けそうですね。
沼子の人生
48歳という年季の入った引きこもりに対して、外国人女性を絡めたのが面白いですね。片言の日本語(カタカナ表記)が和ませてくれるのでしょう。家もろとも母親を火葬にするかと思わせる「引きこもり」っぷり。良いですね。引きこもりはそうでなければ。本物の引きこもりですと、基本的に他人と話さないし、自分の意見を述べるのも稀ですから、オーディオドラマでは使い難い題材でしょう。それでも最後までしっかり読ませる慣れた書き手だと思います。主人公は「沼子」で、姉は普通に「玲子」なので、読んでいる間、「沼子」の由来がずっと気になっていましたが、そこも作者の狙いですかね。本当の名前は別にあって「沼子」は自虐でしょうか。自分が「沼男」と名付けられていたら、親を生涯許しません。
誰かの日記
ある夫婦の物語だ。夫は記憶をなくし、妻は病院で朗読のボランティアをしている。その関係が読み進んで行くとわかってくる。その関係は、後半一気に理解できる。その物語の流れは秀逸とも言える。それゆえにもっと、人物が絡みあえば、と思ってしまう。
キンモクセイの調べ
読んだ後に「シックセンス」を思い出した。つまり、ゴーストの話だ。読み手にミスリードさせながら、実はこうなのだと、種明かしをする展開。なるほどと思ってしまう。面白さはあるが、人物キャクターの造り方は、ベタ感が残る。
通り雨
これから生きていく若者への応援歌ドラマ。読んだ後に心よい読後感が残る。しかし、登場人物が、映画やドラマで見た感が残ってしまう。作家が独自に造った登場人物が欲しい。
着納めのワンピース
シングルマザーの奮闘記である。読んでいて応援したくなる物語だ。ラスト近くで、男性とランチの誘いに乗る。この終り方はいかにも安直だ。一人で生きていくシングルマザーの姿をみたかった。
おじいちゃんが引きこもり
ひきこもりと天の岩戸の故事を結びつけて、部屋の前でチンドンヤを呼んで騒いだり、カラオケをしようとする発想が面白い。全体的にテンポもよく、オチのキーワード「音痴」へも上手に誘導している。「(ひきこもった)孫の笑い声がしないと真っ暗闇だ」という「天の岩戸」を連想されるおじいちゃんの台詞など、上手い台詞もあるが、必要のない遊びの台詞が少し多いのが気になる。効果音として難しい音は台詞で補ったり、他の音と組み合わせるなどの工夫が欲しい。タイトルが内容そのままで、面白いが評価が別れるところか。
パラダイス・ロストーこの世の果ての物語
メッセージ性がある題材を描いた意欲作。作者の情熱が伝わってくる作品。映像的な表現が効果的で、場面転換が早く飽きさせない。はっきりとした起承転結で、ラストまで一気に物語を進める力がある。
はるしぐれ
深夜バスに乗り合わせた男女の会話のみで進行していく作品。雨の音が印象的に使われ、情感にあふれた余韻が魅力的である。さりげない小道具が二人の関係性の伏線となっていたのも面白い。
さらさら願い
構成のしっかりとした読み応えのある作品。最後に美和が妹の身代わりになって命を落としてしまうことにショックを覚えてしまうのは、それだけ美和に感情移入しているためだろう。美和の心情がよく描けている。
精霊の光
幼いのときに心臓移植の手術を受けた男子高校生の前に、心臓を提供してくれた女の子が突然現れる。女の子は移植された心臓と一緒に男子高校生の中で共に生きてきたという設定。原稿には数行しか書かれていない二人で生きてきた時間について、読んだあと想像してみるのも面白い。
以上、11編
第13回一次審査通過作品
第13回南のシナリオ大賞 一次審査通過作品
一次審査員の寸評(応募順)
南の国のピンク・マザー
タイトルから楽しそうと思わせた。ステップファミリーが増えた現在。離婚と再婚を7回も繰り返した父親のもとで育った主人公。その母との再会はドラマ的でなかったけれど、金持ちの父と貧乏な母を住まいの違いで比較。自らの恋の予感でまとめている。
浮気のくすり
時計の音を効果的に使っている。制作側にとっては、面白い素材となるように思う。浮気をさせる薬なのかと思いきや、反対であった。場面転換もなく、ほぼ二人だけの会話で膨らませることができるのも作者の力量がうかがえる作品。
交渉
サッカーのことはよくわからないが、気になるセリフがいくつかあった。東京から見ると大分は海外。移籍を決めるセリフが欲しいというサッカー選手に対して、そんなものはない。という潔の良いセリフも二人のやり取りの中で心地よく響いた。
髪切り屋
セリフとセリフの間に挟んだハサミの音とのテンポが良く、一気に読めた作品。同性愛の設定、また、気持ち悪く感じる場面もありながらも、エンディングの不気味さとあいまって奇妙な物語風。突っ込みどころが少なかったというのが高得点につながった。
雨の神様
かつての高校野球のライバル同士が偶然再会し、その後の人生を語り合うという話。二人はコールドゲームによる勝者と敗者。ありがちなシチュエーションだが、話が進むうちに「人生の勝負は目先の勝ち負けではない」ということに気づかせられる。「雨」をキーワードに勝者が逆転する展開はおもしろい。やせ我慢した男が自分の想いを涙雨に重ねたラストもうまいと思う。
マシュマロ食べたよ
元号が令和になった日、麗和という名の女性の身におきる話。物語はテンポよく進んでいくが、かつての担任と自分の父親が二人ともLGBTであると分かったシーンや、しかも二人が互いに恋をしていたという衝撃のシーンがあまりにもサラッとしている。この事実を娘としてどのように受け止めるのか、その葛藤や心のひっかかりをもっと丁寧に描いた方がよいのではないかと思う。
たまたま
ドMの夫とドSの妻という設定。超わがままな妻の要望に一切逆らえない夫。二人の会話を声優たちがどのように演じるかで、このラジオドラマの面白さが変わってくる。次第に追い詰められていく夫の心情と、最後に明かされる妻の想い。サスペンスの要素も盛り込まれて飽きさせない作品だと思う。
しょぼチン!さま
妻を亡くした男の依頼で、30年前の思い出の場所を探す写真館の女。手掛かりは「しょぼチン」と呼ばれる男性器を模した青銅の物体。意表をつく設定だが、若い女性と探し歩く様子が笑いを誘う。聞き手の想像力をかきたてる展開はラジオ向きの作品と言える。昔のカメラのSEを効果的に使っている。そこに亡き妻の思い出が重なり、うまくまとまっていると思う。
沼子の人生
引きこもりの主人公(沼子)の挙動やセリフに、スタートから一気に引き込まれる。主人公が20年間引きこもっている理由、そして亡くなった母の願いを分かっていても曲げられない主人公の憎しみや哀しみは、本人が何よりも大切にしたい「自分の想い」であると思う。そこに人間の生を感じる。
誰かの日記
記憶喪失、「誰かの日記」を読む謎の女性、そしてその女性に抱く男性の恋心。展開はお決まりで分かりやすかったが、日記というツールを使うことで、主人公が主人公の行動を客観的な視点で見てみるという面白い話に仕上がっている。男が入院している今が現実なのか、はたまた日記の中が現実なのか境目があいまいになるのだから、ラストにもっと大きなどんでん返しが欲しかった。
ごメンなさい
何もかも荒唐無稽。この作品は本当にラジオドラマになるのだろうかと思いつつも、面白かったので選んでしまった。豚骨ラーメンや盛りそばが議席をとった方がはるかに自由で平和な世が迎えられるかもしれない。最後の議員のセリフは今の社会への課題提起のようで胸に刺さる。でも、この作品を一次通過させて「ごメンなさい」
大規模修繕
犬の反応から三人の関係が崩れ、現実が明かされていくのが面白かったです。伏線もつながっていて構成がしっかりされていますね。数カ所の誤字脱字が勿体無いです。
鳴音~ハウリング~
狩猟による害獣駆除と、主人公が持つ女性としてのコンプレックスをうまく交えた物語ですね。素材が新鮮でした。「ジビエの姫」姫子の存在ががかっこいいです。
オーエン!
緩急のあるストーリー展開で、最後はゴールで一緒にテープを切ったような感動を得られました。スポーツものの良さですね。文字の状態ですと状況がわかりますが、仮にオーディオ化した場合、祖父、父、息子の声の違いが明らかに聞き取れるようにする工夫がいるなと思いました。
キンモクセイの調べ
幽霊だったのはまさかのまりちゃんだったとは。しびれるオチでした。ピアノと金木犀と謎とホラーがうまく相まって面白い物語でした。ピアノを始めた人がビギナー時代に弾く「エリーゼのために」が、まりちゃんの年齢とも重なって、さらにホラー感が強まりました。
通り雨
昭和の人情劇をおもわせる作品。登場人物の性格や個性の追求がいまひとつ物足りません。例えば、凶器がナイフというのも安直です。丁寧に描けば、加害者の体格や年齢職業、生い立ちまで思いをはせると、凶器が設定されるはずです。傘やステッキに変わるかもしれません。ドラマ性が深まる潜在力をもつ作品です。
着納めのワンピース
母子家庭で奮闘する主人公に共感し、その人生を応援したくなるほど、わかりやすく書けています。新たなドラマが始まる予感を漂わせ締めくくっていますが、手慣れたドラマづくりという印象がのこります。主人公の内面をもっとほりさげてほしかった。
間違いだらけの協奏曲
聞き間違いがひきおこす青春グラフティ。テンポよくてコミカル、リズムがいい会話も青春ドラマにあっている。しかし、この作品の出来は、演者の口演に負うところも大きい。作品を活かすには、作家に演出の才能も求められます。作家に想定のキャスティングがあれば聞いてみたい。
おじいちゃんが引きこもり
祖父をめぐる家族騒動。祖父を天照大神に、部屋の扉を天の岩戸に見立てたユーモラスな展開。しかし、冗長な台詞が邪魔をしている。各自のセリフを吟味して短くしたほうが作品の狙いにちかいと考えます。核家族の社会にあって、遠慮ない家族関係の温もりが復活するのを願ってしまいます。
餃子の気持がわからない
採用した女料理人は、もしかして娘かも。娘であることを確かめたい男親のもどかしさが、いまひとつ伝わってきません。娘だと確信する、味という設定に無理がありそうです。しかし、音で味を表現できれば、広がりと深みが加わったオーディオドラマができそうです。
同級生
東京モノレールの車内で交わされる大人の男女の会話劇。短くすっきりとしたセリフで読みやすい。女が宮崎旅行の帰りであるということから発展していく物語は良いが、実は偶然の再会ではなかった、というオチまでの経緯が不明確に感じられた。ラジオドラマの書式の再確認を。
夏奈と宮古の守り神
「宮古島まもる君」のキャラクターが楽しい。「まもる君」を知らない人のために、宮古島に嫁いできたばかりの主人公の設定を活かして、説明があってもよかったかも知れない。シーサーの戦いなど、映像がないラジオドラマだからこそイメージが煽られて面白い。方言は放棄せずに、書くことに挑戦してほしかった。
ボクと家と両親と
災害に遭った家族の葛藤に正面から向き合った作品。父、母、子の会話が優しく、良いドラマ、という印象。
アザミの花
ドラマというより、個人的な思い出話のようにも思えるが、地に足のついた方言の魅力で読まされた。他人のことでもどこか懐かしく、ホッとさせる世界観がある。
母とイチジク読んでいて(聴いていて)味や香りがするようなドラマ。恋人の妊娠をきっかけに、かつて自分を捨てた母の真相を探る旅に出た主人公が、母の故郷の人々と出会ってゆく展開が良いが、結局恋人との関係がどうなったのか描かれていないのが消化不良。
ある獣医の長い一日
全体的にスピード感、緊迫感があり、現代の畜産業界の抱える問題も浮かび上がってくる。生き物(人間も含めた)の命と正面から向き合っており、好感がもてた。
夏休みの宿題
サメを掴まえて有名になりたいという、発想が面白い。ただ夏休みにサメが出たから海水浴が禁止になった、という理由にさらに夏休みの宿題もからませると、もう少しタイトルの意味が深く伝わる気がする。
パラダイス・ロストーこの世の果ての物語
新鮮なストリーであった。双子の兄妹、おばあさん、3人だけの孤島。生活物資を船で運んでくるおじいさん。しかし誰かに会いたいという思いが募る男の子。ラストに向かっていく勢い、展開も意外性があり、おもしろい。これは長編にして何故二人が誘拐されたのか、理由も徐々に明確になると、おばあさんの存在感が増す。今回読んだ中で一番衝撃を受けた。
クジラに食べられたい
タイトルに惹かれた。父親が昔商業捕鯨の漁師になりたかったが、禁止になって夢を諦めた経緯がある。主人公の少女も野球選手に女性はなれない事を知った時、夢を諦めた。しかし死んだ父親の日記の「クジラに食べられたい」と言う一文に、家族が遺骨をクジラに食べさせようというのをほんとに実行する。ホエールウォチングができる沖縄で成立する物語。
空汰の赤
琉球ガラス職人の父親と、その父親に反発して東京に行った息子の話。難しいと言われている赤の出し方を長年追及している父親に、息子が唯一の父親との思い出である太陽が海に沈む時の空と海のグランデーションを絵に描いて見せる。しかし、既に息子は3年前に死んでいる。父親の葛藤がよくえがかれている切ない物語
田んぼ道
ほのぼのした感じがいい。田んぼの神様、紙ひこーき、上司との関係。その関係が程よく、お互いのことを思っている。
おさない・・・罪
父の暴力から逃げ、そして殺そうとした幼い日の罪。それが回想と絡んで展開していく。構成はよく出来ている。
欲しがりのなのに
ちゃんと心の動きを描いている。日常会話なんだけど、心が動いている様子が分る。
おもかげ女性の心理描写がよく描かれている。細かな点まで。事件はないのだが、起承転結でまとまっている。
はるしぐれ
終わりがイメージですが、サスペンスの香がする。読後感がよく、いい感性だ。
さらさら願い年の離れた妹に嫉妬する美和の気持ちがよく描かれている。美和が河童のせいで川の事故で死んでしまったのは残念。
柳の庭
アイラブユーの手話が、全世界同じだというところが印象的。級友の死んだ訳を推測する章にもっと緊迫感が欲しかった。
星屑のランタン
読んでいくうちに、みくと和子が楽しそうでランタンが希望を運んでくれるような気がしてきた。読後感がとてもよかった。
はぐれ仙人、島に帰れるか
主人公と仙人の会話が笑えた。最後、願いを犠牲にしてまで帽子を拾ってあげたいと主人公は本当に思ったのだろうか。
ピアノ
主人公の気持に寄り添いながら書かれている。型にはまらず自由にのびのびと引く主人公のピアノの音がきこえてきた。
女々しさたっぷりに育ったトマト
ちょっとした恋。やがて、その恋も終る。あわい思い出感がよく出ている。
散骨の旅
めまぐるしく事件が起こる。物語はテンポよく展開していく。起承転結が旨く運び、起伏のある物語になっている。
精霊の光
心臓移植された子どもの中で移植された子の心が生きている。ありえない話がどこかで悲しみを持っている。読後感がいい作品だ。
絡まった青春のほどき方
微妙な軽さがいい。この感覚は書いた作家しかない感覚だろう。二人の親友の流れ方がスマートだ。
以上、44編
大賞 「はるしぐれ」 伊吹 一

受賞者のことば
伊吹 一 (東京都)
連絡があったのは、午後の4時過ぎでした。辺りはすっかり秋めいていて、5.5畳のワンルームには無駄に心地よい風が吹き込んでいましたが、外はもう夕方から夜になろうとしていました。
ぼんやりと、「自分が脚本家として生きるなんて、アイドルと付き合いたいといった妄想と同じなんじゃないか」と思っていたところに、知らない連絡先から電話が来ました。クレジットカードが引き落とせていないとか、良くて電話料金引き下げの勧誘かと思いましたが、ぼんやりしていたので電話を取ってしまいました。まさかの連絡でした。
脚本家として生きるという妄想が現実になるかは分かりません。ですが、2019年の秋の夕暮れに受けたこの連絡は、僕の手の中に感触として残り続けるたしかな希望です。この希望を胸にしまい、妄想を現実にするためにこれからもあがき続けます。
『はるしぐれ』を大賞に選んで下さり、本当にありがとうございます。
一人でも多くの方にこのお話が届きますように。
「はるしぐれ」 あらすじ
東京駅を出発し、博多駅に向かう深夜バスの車内。女は、隣に座っている男が3年前同棲していた男であることに気づいていた。しかし、男の方はそのことに気づいていない。男は、女と同棲していた3年前に精神疾患が原因で、記憶喪失になったからだった。
男は女に借りた充電器を返す。女は男に何の曲を聴いていたのか尋ねる。男は雨の音を聴いていた。医師に勧められて聴いているとのこと。男のイヤホンで雨の音を聴く二人。
サービスエリアに着く。女は男が好きだった自販機で売っている焼きおにぎりを買い、二人で食べた。男は、ある女性とサービスエリアで焼きおにぎりを食べたことを思い出し、その話を女にする。女は、それまで病気に気づけなかった自分を責めていたが、男が自分を恨んでいないことを知る。ただ、男が女を思い出すことはなかった。
雨が降る。男に雨の名前を聞く女。その雨の名前は、春時雨(はるしぐれ)だった。
優秀賞 「沼子の人生」 日高 真理子

賞者のことば
日高 真理子 (福岡県)
この夏私が生み出した『沼子』は、中高年の引きこもりとその老親の悲哀を描くための主人公だ。自分とはかけ離れたキャラクターのつもりだったが、書き進めるうちに意外なほどに愛着が湧き、沼子の『沼』にドップリとハマってしまった。
沼子は元々明るくて愛想も良く、それなりの美人でお洒落も好きだったに違いない。名前だって気に入っていた(かもしれない)。でも信じていた幸せが崩れ去った時に、人生の歯車が狂っていってしまった。誰でもそうなるかもしれない、ちょっとしたつまづきで。そう、私だって。沼子は特別な人間じゃない。
ラストの台詞に、母の想いとそれに応えられなかった悲しみ、沼子の人間らしい感情のほとばしりを描いたつもりだ。
優秀賞に選んでいただき、誠に有難うございました。シナリオ塾の先生方、仲間たち、温かく厳しいダメ出しに感謝しております。
「沼子の人生」 あらすじ
20年間2階の自室に引きこもる沼子(48)。毎日の食事をドアの前に置くのは母芳江(71)だ。
ある日、食事が無く沼子は階下に降りる。そこへウィーン在住の甥、智樹(25)とカタリナ(25)が現れ芳江の死を告げる。芳江は夫妻と食事中、心臓発作を起こしたのだ。だが沼子は平然とカップ麺を食べ智樹達は戸惑う。葬儀屋とのやり取りで、沼子は姉の玲子(智樹の母)への憎悪を露わにする。
カタリナと智樹はハネムーンの予定を変更し、沼子を気遣う。悪態を尽きながらも僅かに心が和らぐ沼子。無意識に母を偲ぶ歌を口ずさむ。
そこへ玲子(49)から電話がかかる。昔、恋人の悟を奪われた恨みをぶつける沼子。悟は今、玲子の夫だ。仲直りしようと言う玲子を拒絶し、電話を切る。母は姉妹の仲直りをどんなに願っていただろう。そして引きこもりの自分が部屋から出てきたらどんなにか喜んだだろう……母の遺体を前に悲しみが溢れる沼子だった。
優秀賞 「パラダイス・ロスト―この世の果ての物語」 荻 利行

受賞者のことば
荻 利行 (東京都)
このたびは優秀賞に選出していただき、ありがとうございます。
二十五年ほど前、沖縄の音楽に触れて、沖縄にはまりました。そして、もともとラジオドラマ好きなこともあり、四年ほど前から「憧れの沖縄」をテーマに南のシナリオ大賞に向けてシナリオを描きはじめました。
しかし「憧れ」だけでは満足のいくシナリオは完成せず、路線変更したものを応募するか、応募自体をしないかのどちらかでした。そこで今回は地に足をつけて「沖縄の感情」を描こうと思い、脳内シナハンを始めました。
すると、誰もいなくなった島で暮らすケンとハル、そして島袋サキというおばあと出会ったのです。彼らの日々を綴ることで、四年越しの沖縄のシナリオが完成しました。
これも沖縄やシナリオで、関わっていただいた皆さんのお蔭です。ありがとうございます。特にいつもシナリオを書くことに理解を示してくれる妻に。似顔絵は次男の力作です。
「パラダイス・ロスト-この世の果ての物語」 あらすじ
おばあとハルとケンは3人しかいない島で自給自足の生活を送っていた。ある日、ケンは、自分たちの事を知る人は誰もいないんじゃないかと寂しさを覚え、他人と話したい、島から出てみたいと思うようになる。
しかし、おばあは人に会う必要もないし、島から出たら罰が当たるとケンに言う。ケンは洞窟で見つけた人骨にさえ他人に会えた喜びを感じ、とうとうおばあの言いつけを破り、月二回、船で荷物を運びに来る金城のおじいに会いにハルと港に行ってしまう。
しかし、港に来たのは、若い漁師の末吉だった。末吉はこの島にはおばあしかいないと聞いていたが、なぜか、男の子と女の子(ケンとハル)が古い八重山言葉を喋り、船に乗りこむのに恐怖を覚え、石垣島に無線を入れる。すると大勢の警官が来て大騒ぎとなり、おばあは二人のおばあではない事がわかる。三人の楽園のような島の生活も終焉を迎えた。
優秀賞 「さらさら願い」 なないろ みほ

受賞者のことば
なないろ みほ (東京都)
私の作品を読んでいただいた審査員の先生方に御礼申し上げます。
シナリオを学び始めて、2年目のふしめに、このような素晴らしい賞をいただくことができまして、大変に感動しております。
「さらさら願い」は、大分県に4泊5日シナリオハンティングをして作った作品です。
大分県といえば、別府や湯布院などの豊かな温泉が有名です。しかし、実は河童の伝説が多く残っており、祭りも催されるほどです。作品が受賞することで、お世話になった大分県の皆様に恩返しができたでしょうか。
私にシナリオを書く喜びを教えてくれたシナリオセンターの河合先生、上原先生、温かくも鋭い意見をくださる新井先生、いつも私を励まし続けてくれる大前先生、シナリオを共に学び鍛える戦友のみんな、私が辛いとき苦しいときにも変わらずいっしょにいてくれる親友のKとN、私にたくさんの元気をくれるステファン、何より私を応援し続けてくれる父と母に、感謝の言葉を贈ります。
「パラダイス・ロスト-この世の果ての物語」 あらすじ
美和(10)はまだ赤ん坊の妹ひなたをうとましく思っていた。
両親はひなたにつきっきりで、夏休みだというのに家族そろって遊園地にもカラオケにも行けない。
美和が留守番をしていると、河童がやってくる。河童は、美和が腹いせで川に投げた石のおかげで相撲に勝った、お礼になんでもひとつだけ願いを叶えると言う。
何を願おうか悩む美和。すると、ひなたが大きな声で泣き出す。「静かにして!」と美和が怒ると、それを願いだと勘違いした河童が、ひなたを消してしまう。
美和以外の人間に、ひなたの記憶はなくなっている。
美和はひなたのいない家族団らんを楽しむが、しだいに寂しさと罪悪感を覚える。
美和は川に行き河童を呼び出して、「願いはなかったことにして欲しい」と言う。河童は「一度願ったことは変えられない」「お前が代わりになるか」と聞く。
10年後、10歳になったひなたは母親と共に川の事故で死んだ美和のために、花をたむける。
総評
今回で13回目を迎える南のシナリオ大賞。200通の応募がありました。皆様の創った物語、全てじっくり読ませて頂きました。皆様が時間を掛け、考え、悩んだことが一文字、一文字に現れてきています。
その中から、大賞を選ばなくてはならないのは、どこかで、私たちが選んでいいのかと、ついつい思ってしまいます。この自問自答は審査が終わるまで続きます。ふ~っと溜息を付いて……つらいな、と呟く一瞬があったりします。
しかし、選ばないと審査は終わりません。皆さんが作り出した物語に感動したり、旨いな思いながら選ばせて貰いました。
大賞は、「はるしぐれ」の伊吹一さん。一言で言えば、旨いなと思いました。男との女の距離感を雨の音を使いながら現しています。ラジオドラマにしたい作品です。
優秀賞には、「沼子の人生」の日高真理子さん。20年も引き籠っていた沼子。ラストは、沼子が思いのたけをぶつける長セリフが秀逸でした。
次は、「パラダイス・ロスト―この世の果ての物語―」の荻利行さん。おばあと子ども2人。3で暮らしている島が舞台。ちょっと不思議な物語でした。
三つ目は、「さらさら願い」のなないろみほさん。河童が出てくる昔物語風。ラストはちょっと意外で残酷的な匂いがします。
今回は、大賞1編。優秀賞3編の選出となりました。とにもかくにも、200通の応募に感謝します。来年も再びお会いできることを祈りつつ。
日本放送作家協会九州支部
審査委員 盛多直隆
第13回 南のシナリオ大賞 表彰式
日時:11月17日(日)15:00~16:30
場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神)






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