第17回 南のシナリオ大賞
- 2024年3月15日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年3月18日
第17回 南のシナリオ大賞 結果発表

南のシナリオ大賞
「Perfect Worldへようこそ」永合 弘乃(東京都)
優秀賞
「ファーストプレゼント」加治 裕美(神奈川県)
「株式会社ホワイト」立石 えり子(神奈川県)
「魔法使いのシュークリーム」望谷 まと(神奈川県)
一次選考通過作品
一次選考通過作作品(朱色は二次審査通過作品)
「はじめてのおかえり」えぺ(広島県)
「ちゃぽん、と休んだ昼下がり」花咲大芽(東京都)
「サンタクロースは二度ベルを鳴らす」伊藤博和(岐阜県)
「ドライビング・アッシー」和田暁知(東京都)
「家族と妖怪」オウジン(東京都)
「Perfect Worldへようこそ」永合弘乃(東京都)
「モグらはみんな生きている」藤後竜也(鹿児島県)
「卒業旅行」森なほみ(愛知県)
「爆弾とラーメンは同じお皿に盛りつけるな」左倉休鳥(兵庫県)
「楽屋にて」三原貴志(神奈川県)
「ハートの名探偵」土屋祥子(東京都)
「株式会社ホワイト」立石えり子(神奈川県)
「さしすせそ、の前から」藤田知多佳(東京都)
「ファーストプレゼント」加治裕美(神奈川県)
「氷砂糖ひとつ」神宮祐子(東京都)
「ラムネの後味」十森すぐる(東京都)
「開聞岳の彼方に」新沼 健(東京都)
「マリーの鏡」村松智加(愛知県)
「失恋の苦しみから抜け出す方法」後藤 南(京都府)
「水みくじ結んだら」深瀬果夏(埼玉県)
「臆病者に刃物」三井 隆(東京都)
「灯火の先に、家がある。」松永結衣(三重県)
「海峡の港で」石井朋彦(東京都)
「ヒロトくんは失敗できない」森上道弘(静岡県)
「親方と息子見習い」今泉紗弥(東京都)
「AIな妻」武田明日香(東京都)
「安らかに眠れない」青山ユキ(東京都)
「お局予備軍とZ世代」渕上彩花(佐賀県)
「朝子の秘密」きこ凛(東京都)
「かおり」添田亜久理(千葉県)
「私が犬になるまで」こたつめがね(東京都)
「呼び継」水城孝敬(東京都)
「いつも粗相をするリリィは」嶋本桐子(神奈川県)
「その森をいっしょに歩きたい」川瀬康夫(東京都)
「日本一の福男の妻」大浦太輔(宮崎県)
「焼うどんの日」望谷まと(神奈川県)
「魔法使いのシュークリーム」望谷まと(神奈川県)
「河童の娘」佐久間來海(東京都)
「一等、別府温泉一泊二日」山田結衣(東京都)
「恋の至極は」千條知幾(福岡県)
「風待ちの港」武井幸子(兵庫県)
「お帰りなさい」戸成なつ(神奈川県)
「ゆきだるま届けて」杉田鮎美(埼玉県)
「同じような男」大峰雄一郎(兵庫県)
「みずあかりに想いを馳せて」朝比奈波音(神奈川県)
「ハート・パート・バード」増田佳子(東京都)
「故郷(ふるさと)」盛 祥子(北海道)
応募総数
252編(2023年8月31日締め切り)
主催
主催:日本放送作家協会九州支部
後援:日本脚本家連盟九州支部 / 日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会
選考会
2023年10月15日、福岡市中央区赤坂
審査委員: 盛多直隆、皆田和行、松尾 恭子、日高 真理子
実行委員: 町田 奈津子
第17回最終審査会ドキュメント
はじめのおかえり
盛多:どうも嘘言に見えてくるんですよね、読めば読むほど。作家の都合のいい物語を作っているだけの感じがしましたね。いつ頃からこの症状が出ているんだろうとか、そういう素朴な疑問が湧くんですよね。
皆田:中身の展開があまり良くないなと。母娘で呆けた父親を支えているというフレームは良いとは思うんですが、会社も協力しているという点などは現実的ではないし、私はあまり引き込まれなかったです。
松尾:短い中にまとまっていたと思います。作家さんが考える世界観とかオチまでの展開も非常にわかりやすかった。ただ、キレイな物語ではありますが、もう少しフックが欲しいと思いました。
日高:ボケてしまった夫を、この母娘は、毎日、店に客として受け入れているという、そのアイデアは優れていると思いました。ト書きで「ママが晃を揺する」というような、これはどうやって音として表現するのかな? というような映像的なト書きが所々見受けられました。
町田:夫婦の絆が見える物語だと思いました。ただ、既視感があるというか・・だったら、もっと、夫婦の絆を深く描いた方が良かったなと。途中で夫目線から妻目線に変わるんですが、最初から最後まで妻目線で描いた方が、より深い物語になったのではと思いました。
Perfect Worldへようこそ
皆田:今時のテーマで面白くて好きです。ただ、なにかと説明コメントが多いのが欠点かな。サチコとヨージのことをもう少し描いて欲しかった。なぜ、この45のおじさんが引きこもりになったのかとか、そういうことを。面白い作品だから、人物のことが知りたくなるんですよね。
松尾:話のモチーフは非常に好きです。タイムリーで時代が今の物語だと思いました。SFの要素もあるし・・・実際いるんですよね、こういう人が。この物語に共感する人もいると思います。ラジオドラマでどれくらいこの世界観を再現できるかなという面白さはあると思います。
日高:バーチャルの世界を取り上げたというのが、今を感じさせていてそこは高評価です。ただ、好みの問題ですが、私はこの世界のような乾いた世界が好きではないというところはあります。私の評価としては、よくできているけど感動は出来なかったという感じです。
町田:私の中では上位です。最終選考に残った作品の中でラジオでしか表現できない物語はこれだけです。「Perfect Worldへようこそ」から始まって「Perfect Worldを退会しました」で終わる流れのセンスの良さもいい。ここでしか生きられない人々を描いている点にも今を感じます。
盛多:アバターの世界と現実の世界で25歳と45歳。23歳と15歳というふうに年齢が入れ替わっていくのも演出的には面白い。感動ポイントは、この女の子が亡くなっているという点です。物語としては高い評価です。ただ最初に出てくる『ライ麦畑でつかまえて』はもう使い古されている気がします。
株式会社ホワイト
皆田:これ結構好きです。まずスピード感があり笑いもあって。あと、この星印の白星と黒星の変わり具合が楽しみでしょうがない。じいちゃんが乗り移るっていうのは使い古されてきたようなことなんですけど、今の世の中は鬱陶しいじゃないですか、そういう世の中をじいちゃんがぶった切ってくれたかなと。ただ、お母さんが娘の愛子にかけるセリフがあるんですが、これがストンとこなかった。
松尾:テンポがあって面白い。ドタバタ劇ですが聞いた後にイヤな気持ちがしない。最近のコンプライアンスで言えないことが増えちゃって、そのしわ寄せが全部どっかに来てるんだよっていう問題提起を代わりに乗り移ったじいちゃんが言ってくれる気持ち良さ。これは役者さんが演じてみたい脚本だと思います。
日高:最初から最後までスピード感があってテンポがよい。あとはキャラクターの面白さ、セリフも面白いっていう。一番思ったのは役者さんが大変そうだけどやりがいがありそうだなと。どんなふうに演出されるのかなって思いました。私も主人公のお母さんが諭すところは、辻褄合わせる為に作者がひねり出したような感じはしました。
町田:テンポがよくて面白い。私にも孫がいるので、もし自分の孫が愛子と同じ目に遭ってたら、このおじいちゃんのように乗り移ってやっつけるだろうと思います。ハラスメントを徹底するとそのツケが誰かにくるという、社会への問題提起も出来ていると思いました。
盛多:俺は全然乗れなかった。セリフが全部説教に聞こえてくるんだよ。(お爺ちゃんだからの声あり)入れ替わるところも、芝居自体が嘘っぽいんだよね。そういう部分で演出出来ないなと思った。
ファーストプレゼント
皆田:これは好きでした。読んだ後に光をもらえた。ありがちっちゃ、ありがちですがね。最後、主人公の息子も養子縁組だったということがわかりますが、いい子に育って良かったなぁと思いましたね。
松尾:福岡の物語で身近なモチーフだったから入りやすかった。で、養子縁組というのは今の時代の問題提起にもなってますし。養子縁組で育った子供と飴買い幽霊の言い伝えがクロスされてて非常に読みやすかったです。伏線がしっかり意味を持って繋がっている。温かくて美しい物語だと思いました。
日高:感動的な話のはずなんだけど、なんか今一つ感動できなかった。セリフで語りすぎなのかな? 十代の少女の感情が今ひとつ見えてこないし。最後、主人公が女の子に会わなかったじゃないですか? それで代りに息子さんに会いに行かせた。だからかな、主人公に気持ちが入らなかったというのがありました。
町田:私はこの作品を上位にあげました。15枚とは思えないほど中身が濃い。もしラジオドラマになったら、この主人公の「大丈夫、幸せになるよ」っていうセリフに救われる人が出てくると思います。
盛多:ストーリーに既視感はないかな。あと、個人的に「大丈夫」という言葉が嫌いです。子供の頃、「大丈夫、大丈夫?」って言うおばさんがいて。「俺の何がわかって大丈夫と言うんだ!」と、反発した記憶がそのまま残ってる。だからこの作品を評価しにくくて△にしてます。
氷砂糖ひとつ
皆田:ふられた女性が会社を辞めて吉野ヶ里遺跡の発掘バイトに行って、そこで出会った年下の男に気づきをもらうという話なんですが、「ふーん」で終わった感じです。ドキドキ感、ワクワク感が感じられない。
松尾:吉野ヶ里の発掘に行くっていうぶっ飛んだシチュエーションは好きでした。氷砂糖ひとつが受け入れられるか、られないかという、その女性の性格や想いとかで物語を展開させるように丁寧に作られたシナリオだと思いました。最終に残ったのはこの丁寧さだと思います。
日高:わかりやすく、いい作品だと思いました。教科書通りと言うようないい話なんだけど読み終わった後、皆田さんと同じで「ふーん」という感じでした。上手でいい作品なんだけど普通かなという感想です。
町田:読みやすくて美しい原稿だと思いました。ただラジオドラマとして見た時に盛り上がりが足りないかなと。香奈の心が徐々に武士を受け入れるように変化していく部分の描き方は上手だと思います。
盛多:印象としては丁寧だなと。この主人公の女性って年下を好きになるタイプの女性かな? そう思ってくると、大学生が突っ込んでくるのもこの女性は受け止めることが出来るんだなと思っちゃったんだなと。僕は「癒されていく」というラストの言葉があまり好きになれなかった。なぜこの言葉を最後に持ってきたのか? これは女性目線なので何とも言いようがないですが。男性目線でいくと「もう回復してるだろ?」と思っちゃた。最後のセリフは僕の中ではクエスチョンです。
マリーの鏡
皆田:10年前の作品ですかって言う気がしました。昔にこういうストーリーってよく見たような気がします。ジェンダーの話を取り上げるのもいいんですけど、おカマを騙して金を巻き上げるっていう展開も古臭い。デコピンの音とか取れるのかな? 評価しにくかったです。
松尾:全体的に昭和の匂いがします。ジェンダーレスみたいな素材は嫌いじゃないです。ただ、どうしても悲しい方に扱われがちです。むしろそれを吹き飛ばしてくれるぐらいポジティブにコミカルな展開にしてたなら、私は絶賛したと思います。
日高:一気に世界観に引き込む力がある作家さんだなと思って、嫌いじゃなかったです。カルメンマキっていう感じがしましたね。主人公はどんな声でどんな歌を・・歌はオリジナルですよね、そこは制作でどんなふうにするのかな? ジェンダーは今に通じる問題ですが男に騙されてという展開は読めてしまいます。ラストにひとひねり欲しかったです。
町田:ゲイバーの雰囲気、鏡の割れる音などラジオドラマに適していると思います。気になったのは、どうして母親の出棺の時にセーラー服を着て現れたのか? 自分の本当の姿をお母さんに見せたかったのかもしれないけど、大騒ぎになることは予想がつくし・・その時のマリーの心情を描いて欲しかったです。
盛多:気になるところが二点あって、一点目は都合が良すぎないかと。父親が主人公を騙した男に突然出会って、殴って警察に行くとか普通ありえないじゃん。二点目は鏡が割れたっていうのが物語の伏線となるかもしれないけど、じゃあ誰が割ったの? それとセーラー服で出てきた。このセーラー服はどうやって入手したの、お姉ちゃんがいたの? 要するに伏線を張ったときにそれをきちんと回収できてないんで、この二点で評価はしてません。
失恋の苦しみから抜け出す方法
皆田:面白かった。洋子が一番面白かったな。こんな男おるんかな? ふられて友達に次々にコメントをもらうっていう。まあこれが面白いんですけど。失恋の苦しみから抜け出す方法は結局時間だという答えなのかな。洋子の「殺す」っていう話も面白かった。洋子も苦しんだんだなぁ。頑張れ洋子! と思いましたね。
松尾:会話劇でテンポもよく主人公の稔のどんくささも面白い。なんといっても再会した時の洋子の「殺すしかないで!」というセリフ。洋子のキャラ設定がすごく良かった。実際、役者が演じた時にとても面白いと思う。忘れる為にどうやって殺すかみたいな。盛り上がりますよね。でもやっぱり最後、稔はちょっとどんくさかった(笑)。
日高:軽快なテンポで面白かった。洋子の登場がちょっと遅いのでは? 面白いとこでもあるんだけど、あまりにも『殺す、殺す』っていう言葉を連発するのは私としては抵抗がありました。洋子は関西弁だから面白いのかもしれませんが博多弁でやって欲しかったですね。面白かったんですが主人公の成長は感じられませんでした。
町田:洋子のキャラが素晴らしかった。ただ、ちょっと主人公の稔は23歳にしては幼すぎて、こんな人いるの? と思いました。洋子の学生時代のあだ名の『泣く子も黙る南風』っていうのがインパクトがあって面白い! これがタイトルでも良かったのではと思いました。
盛多:洋子のキャラ好きなんですよね、僕は。それを考えるとちょっと前半が長いかな。友達に聞く云々というところはもう少し端折ってもいいかもしれない。登場人物を少し減らしてもいいねっていう。あと洋子が稔が好きだってって言うのが最後にわかるんですが、そんなバカなと思う反面、こういうふうに言える女の子がいたらいいなと思いましたね。抜け出した評価にはなりませんが面白いストーリーでした。
親方と息子見習い
皆田:展開が読めてしまう。中味はエッと思うような展開にして欲しいけど。結局、嵐の中に船を出してチャンチャンみたいな展開。結婚に反対していた親父が認めるというフレームはいいですけど展開が読めるから感動も無いし。ワクワク感もなかった。
松尾:釣りものという設定は面白くてシチュエーション的な魅力は感じるんですけど、なんか定番のテンプレートになっているかな。エッセンスとしては年の差の恋愛だったり、バツイチ男が息子さんを亡くしているという切なさだったり、そういう味わいはあると思いますが型通りという感じがしました。
日高:場面転換の流れが分からなくなってるとこが所々ありました。気になったのは、亡くなった息子さんがやりたかったことをやろうと思ったという部分。金髪でチャラチャラした服を着るのが息子がやりたかったことなの? そこが腑に落ちなかった。娘が水上を好きになったとこも腑に落ちなかった。ドラマに入り込めなかったですね。
町田:ほっこりする作品とは思いましたが先の展開が読めちゃいました。水上とお父さんとのやり取りは面白かったです。水上の亡くなった息子のエピソードは花木のモノローグで簡単に説明しているだけですが、ここをちゃんと描いて欲しかった。
盛多:色々と腑に落ちない。自分の息子が19歳で亡くなったっていう設定があった時に金髪でチャラチャラして・・そういうことをやりたかった息子なのか? そうだとしても、父親がそうはしないだろうというのがあります。水上のキャラが好きになれない。それと大きかったのは年の差、32歳だっけ? この差を埋めるのには、もっと大きな動機がないと結婚までいかないだろうという思いを引きずったまま読んだんで、腑に落ちないまま終わったなという気がしてます。だからあまり評価できませんでした。
呼び継
皆田:よく理解できませんでした。死んだ旦那さんと奥さんとの関係が呼び継にかかってくるんでしょうけど、ご主人と奥さんとの関係が何だかぼんやりとしか理解できなくて。技術的なところとテーマは良かったと思いましたが、すっきり僕にわからせて欲しかったなと思いました。
松尾:丁寧に描かれた物語だなあと思いました。唐津の雰囲気が浮かびました。背景がわかりやすかったです。『呼び継』は違うものをくっつけた器を嫁入り道具に持たせる、絶対に離れないようにということを伝統的に受け継いできている。だから亭主関白の夫とも別れずにいた。『呼び継』という言葉としっかりと結びついていると感じました。静かに聴ける物語として私は好きです。
日高:しっとりとして抒情的で好きです。唐津焼というところもポイント高いです。夫婦2人だけの会話でスッキリしている。陶芸を作ってる音なんかもすごく良い。亭主関白な夫の妻として、日々色んな想いを溜めてきたと思うんですが、夫が癌になって優しい夫に変った。その辺の妻の心の動きがよく描けてます。緩和ケアの話などもリアルです。「呼び継は割れた傷を無かったことにするんじゃなくて、傷をあるがままに受け入れる。その傷が面白くて美しい」といったセリフからも再生の話だと思いました。そういうラストも好きでした。
町田:セリフが上手くて、夫婦の絆がよく描かれているという点を評価しました。読み終わった後にタイトルの『呼び継』という言葉が胸に刺さりました。ただ私は元々こういう話が好きなので、亡くなった伴侶が出てくる夫婦の物語を映画やドラマでたくさん観ています。なので、どうしても既視感がぬぐえないところがありました。
盛多:僕はわかりやすそうで分かりにくいと思いました。オプソという癌治療薬って一般的に流通してるの? この中に副作用があると書いてあったから医療用の麻酔なのかな? よくあるのはこの言葉(薬)を妙に使うとクレームの対象になっちゃうんですよ。そこが不安かもと思いました。オプソという固有名詞を使っていいのかどうかという点がクエスチョンでした。薬品名等は使い方を間違うとまずいから。
魔法使いのシュークリーム
皆田:この子はどうして喋れないの、転校がきっかけ? 詳しくは書いてないよね。あと豆乳と米粉のシュークリームってそんなに悩んで失敗重ねて作るほど難しいものなんですか? ラジオドラマとして難しいんじゃないかな。モノローグと会話ですよね、大丈夫かな? 聴く方も大変だなと思いましたね。
松尾:渚ちゃんの頭のセリフ。はじめの1回、2回とか。アニメーションだと思いました。ジブリみたいな。ファンタジー感がありますよね。いま不登校になる子供が非常に多いんですよ。素材的には今の子供達のリアル感があると思いました。
日高:私は高評価です。最初の渚ちゃんのセリフが詩みたいですごく素敵だなと思いました。渚ちゃんを演じる子が上手くないといけないと思いますけど、場面緘黙賞やアレルギーも現代を映し出していると思います。渚ちゃんが「これ本当に美味しいんだよ」って喋るところのクライマックスが良かった。
町田:私はあらすじを読まずにシナリオを読むので、なんでこの子はモノローグばっかり? と思ってました。場面緘黙症の症状だとわかった途端に渚ちゃんが愛おしく感じました。でもラジオドラマだと作品の良さを消してしまうのではないかな? モノローグと普通の会話との対話形式なので。映像向きかなとと思いました。
盛多:逆に僕はラジオドラマ的かなと思ってます。モノローグの女の子の声が聞こえてくるんですよ。この女の子をどう演じるかっていったところを考えると、映像にするとつまらなくなると思った。アニメーションに近いかな。僕の中で評価が高いです。このファンタジー感はやりたいなと思わせますね。
一等、別府温泉一泊二日
皆田:スピード感と面白さがあって僕は好きでした。ただラストは血の池バーガー屋に行くけど、臨時休業だったとか売り切れだったとか、最後の最後まで畳みかけた方が良かったかなということはありますが、全体的にアッという間の15分間だなって思いました。
松尾:軽快で面白く拝読しました。私としては旅館が臨時休業してたっていうインパクトがある場面で雨が降って欲しかったんですよ。皆田さんがいま言われたように、ことごとくなんかこう不運な2人にした方が、不運なんだけど話的には面白かったかな。
日高:テンポが良くて、この2人の不運自慢が漫才みたいで面白かったです。でも、その部分がちょっと長い感じがしましたね。これは私の感覚なのかもしれませんけど、出会ったばかりの2人が一泊二日の別府温泉に泊まりで行くかなって、気持ちが入らなかったっていうのがあります。
町田:私は好きでした。最終選考に残ったドタバタ系の作品の中で私はこれを押しました。不運な男女が出会って不幸自慢をする場面が漫才のようで楽しかった。ラストで旅の栞を落とすシーンで思ったんですが、不運と嘆いている人は運がないんじゃなくて、運を捕まえる勇気がない人なんだと伝えている感じがしました。
盛多:面白いは面白いんだけど。最後までこの展開で行くの? 起承転結はどうなってるの? そういうことが気になりましたね。これ芝居にしたら全然面白くなくなるぞって思っちゃった。なので僕は評価できませんでした。
みずあかりに想いを馳せて
皆田:すごい母ちゃんやね。こんな母ちゃんおるんかな。ストーリーとしてはお母さんがお父さんにそっくりの男の人を見つけて5回目の結婚をする。娘も最後は祝福する。親子のやり取りがちょっとよくわかんなかった。今までの人はお父さんと同じだと思って結婚したけど違った。当たり前やんと思いますけどね。で、5回目の結婚相手の人はお父さんにそっくりだと。それで娘も納得しちゃってるんですよね。こんなのでいいのかな? なんとなく評価できないなと思いました。
松尾:お母さんのキャラがちょっと弱いんですよね。5回も結婚するような人に思えない。もう少しキャラ立ちしていれば、この人なら5回結婚するよねと思えるんですけどね。あとは今回のお母さんの結婚相手のことを娘さんが納得するようなエピソードが欲しかったと思います。
日高:みずあかりの情景は美しいなと思いました。ただ、誰にも感情移入出来ないというか、登場人物がみんな本音を語っているように思えなくて・・心に響いてこないというか。セリフを聞いてもホントって思ってしまう。そこがちょっと残念でした。
町田:このお母さんは4回も5回も結婚する必要があったのかな、と思いました。武雄さんなら母親を幸せにしてくれると娘が思える、要のシーンがあるといいですね。そのあたりをきちんと描いて欲しかったです。
盛多:計算していくと20年近くのうちに4回も結婚してる。それって5年に1回結婚してるってこと? というふうに思った時に、現実的にそれないだろうと僕は単純に思ったんですよ。年齢設定っていうのは、この前も別の審査で話題になったのは作家はそこまで考えてるの? それをきちんと考えて物語を通していかなくちゃいけない。その前提条件から欠落している、ということになってきた時に、読めなくなっちゃうんですよ。正直言って甘いよねという感じを受けました。
ハート・パート・バード
皆田:登校拒否の弟さんがいて、その理由ははっきり分からない。今はそういう子供が多いみたいですね。フリースクールに行くとか行かないとか、そういう話ですよね。これは夢じゃなければいけなかったの? フリースクールに反対していたお姉ちゃんが応援するようになるんですけど、それが夢を見たことがきっかけになってるんですよね。それがいいのかどうか僕にはちょっとわからないですね。
松尾:日暮一家はどこに住んでるんだろう、東京ですかね? 東京の高校生が「お前の足、桜島大根みたい」とは言わないと思うんですよね。桜島っていうキッカケを出したかったと思うんですが・・・。物語としてはきちんと書かれているとは思います。今どきの旬の素材というか、不登校とかフリースクールとか・・モチーフはあるけど、なんだかこうバラバラだなと。ラジオドラマで聴いてわかるかなと思いました。
日高:この一家は仲良くていいねというような感想ですね。両棒餅は漢字で見ると情緒がありますけど音で聴いた時にイメージとして使えない。夢もですね・・・ラスト、主人公はブラザーコンプレックスから脱出したのかな? 弟の方は成長したけど寧々は何も成長してないと思ってしまって、ただ夢を見てただけだよねと。その点で終わりがスッキリしなかったというところはありました。
町田:まず姉弟の会話が上手だなと思いました。ただ、私は郷が鹿児島なので、この作品は検索した情報だけで書いていると思いました。物語のキーとなる両棒餅は桜島の名物ではなくて磯地区の名物です。鹿児島県人なら皆、違和感を感じると思います。多分、両棒餅が桜島SAに売っていたから勘違いしたのかな? そもそも桜島SAは桜島じゃないので。そういう細かいところが気になってしまいました。弟に依存していたのは自分の方だったことに姉が気づくラストはよかったです。
盛多:ブラコンって一般的に使っている言葉なんだっけ? これ漫画であるんだっけ? (ありますよの声)ブラコンってそんなに聞くイメージがないから、そこから引っかかっちゃって。それと同時に何で夢にしちゃうの? その動機がわかんなくて。この寧々の行動が常になぜ? と見えなくて、中になかなか入っていけなくて。この家はお父さんはどうしたの? どうもよくわからないままでした。夢オチというのもついていけない。僕の中ではあまり評価できない作品でした。
ホワイトボードに各審査員が
〇△を書き入れる(○=2点△=1点)
8点 PerfectWorldへようこそ
7点 ファーストプレゼント
5点 ゆきだるま届けて
4点 株式会社ホワイト
4点 呼び継
4点 魔法のシュークリーム
3点 一等、別府温泉一泊二日
2点 氷砂糖1つ
1点 失恋の苦しみから抜け出す方法
0点 はじめのおかえり
0点 マリーの鏡
0点 親方と息子見習い
0点 みずあかりに想いを馳せて
0点 ハート・パート・バード
盛多:点の入らなかった作品は外します。1点の「失恋の苦しみから抜け出す方法」もいいですか?
皆田:はい、「洋子」良かったけどね。
盛多:2点の「氷砂糖1つ」は。
日高:みんな「丁寧さ」は高く評価しましたね。でも上位の作品に比べるとちょっと弱い、普通な感じ。
盛多:外しましょうか。町田さん、「呼び継」を評価しなかった理由を聞かせてもらえますか?
町田:この作品は好きですが、夫婦のどちらかが亡くなって幽霊で出てくる話は良くあり既視感があったので。
盛多:皆田さん、「魔法のシュークリーム」を評価しなかったのは?
皆田:米粉と豆乳でシュークリーム作るのってそんなに苦労するのか、どうもよくわからなかった。冒頭のモノローグとセリフの区別もわかりにくいのではないか。
日高:演出で区別できるんじゃないでしょうか。
盛多:ファンタジー性、そしてマイノリティーを応援している点が良い。日高さんが「呼び継」を推す理由は?
日高:唐津焼を扱っていること、それを創る音の魅力がある。主人公が夫と生きてきたなかでの様々なわだかまりを精算し1人で生きていくという、ラストの後味が良かったです。
盛多:薬の「オプソ」が引っかかったんだよな…。「ファーストプレゼント」はどうですか?
皆田:僕の中では一等賞です。
町田:本当にこれを書いた人は力があると思います。
盛多:どうも古い感じを受ける。
日高:「PerfectWorldへようこそ」に比べたらですね。
盛多:「雪だるまを届けて」は?
日高:私は大好きです。もう「ハニワ運送」からして気に入りました。センター長に怒られるのを覚悟するラストも良いですね。
盛多:自分はそこが人間らしくない、運送をやっている人はもっと逞しく図太くあってほしいと思ったんだけど。
皆田:これ、そもそもですが、溶けてるのを受け付けるのはおかしいですよね。受け付けないでしょう。
日高:箱の中で溶けてたら、ちゃぷちゃぷしてわかりますよね…うーん。
町田:溶けかけてたのでは?
盛多:いや、もう「溶けてたんです」ってセリフでありますもんね。 「Perfect World」は評価が高い。
町田:ラジオドラマで聴きたいです。今までの「南のシナリオ大賞」にはない感じ。
盛多:女の子が亡くなったのはいつだっけ、半年前か…。
町田:最後のデートの後連絡が取れなくなった。だからきっと女の子は相当ギリギリの状態でやっていたんでしょう。生まれつきの病気でずっと病院にいて、でもカッコいい男の人とデートする夢を持っていた。そう思うと切ないです。
盛多:歳が違っても同一人物だから同じ役者に演じさせたいな。もう一度「ファーストプレゼント」について論じましょう。主人公の恵に感情移入できましたか?
日高:最後の方で恵が神社に来れなかった理由を、息子が「泣き顔見せてくなくて」と言うんだけど、ベテランだからそんなことはないだろうと思ってしまって。
町田:恵がずいぶん立派で出来過ぎた人に感じる。
日高:いつも周りの人を「大丈夫、大丈夫」と励ましてますもんね。
町田:それは自分がたくさん辛い目に遭ってきているからでしょう。
日高:でもその辛い目に遭ったというのは息子が語ってる。主人公が自分の感情として出していないから感情移入できないのかも。
盛多:主人公は欠点があってそれをクリアしていくものなんだけど、完璧すぎるな。
町田:マリア様みたい。でもこの作者は上手ですよ、この話を15枚にまとめていて。
皆田:主人公も昔このお寺に通って泣いていたんですね。月乃の姿が自分に重なったんでしょうね。
盛多:上位2作品は決定して、残りについて更に話し合いましょう。
日高:3点の「一等、別府温泉一泊二日」について話し合ってないです。
盛多:「別府」は「株式会社ホワイト」と同じニオイがするなあ。
《休憩》
盛多:8点の「PerfectWorldへようこそ」、7点の「ファーストプレゼント」は受賞。大賞1作品、優
秀賞2作品なので後1つということになりますが。
町田:受賞作3つはそれぞれタイプが違った方がいいですかね。
皆田:上位の2つは、午前中松尾さんが言われた「とんがった作品」ではないような。
盛多:いや「PerfectWorldへようこそ」はとんがった作品と僕は見てますよ。
町田:今までないタイプの作品ということであれば「魔法のシュークリーム」。落としがたいです。可愛いし。
皆田:僕は「ゆきだるま届けて」「呼び継」「魔法のシュークリーム」の3つはお話として気に入ってないんですよ。
日高:私は逆でその3つを気に入っています。
町田:今回テンポが良くて面白い作品が多かったですが、上2つはそのタイプではないですね。
盛多:テンポの良いというと「株式会社ホワイト」と「一等、別府温泉一泊二日」ですね。「別府」は消えたから…。「ホワイト」ですか。
皆田:今どきの、有給取るの当たり前、飲みに誘わない、パワハラになちゃうっていう世の中をちゃん
と取り上げて、それをじいちゃんがぶっ壊してるっている爽快感がいいんですよ。
日高:私は「ゆきだるま届けて」が一番好きなんですが…。でも、上位2作品が決まって後1つ違うタイプのものを選ぶとすれば「魔法のシュークリーム」がいいと思います。場面緘黙症とアレルギーのことを扱ってるし、セリフが詩のようで素晴らしい。
町田:私は「魔法のシュークリーム」のモノローグがラジオドラマ向きでないと思い低い評価にしてたんですが、制作側の盛多先生が「作ってみたい」とおっしゃったので評価が変わりました。
盛多:「呼び継」は? 何か意見ありますか。
日高:「呼び継」も好きですが、一つ選ぶなら「魔法のシュークリーム」ですね。
盛多:「魔法のシュークリーム」を推す理由として一つあるのは、いわゆるマイノリティーを応援している姿勢です。でもその応援してることが何となくあざとい感じもしてしまう。
町田:「あざとい」というのはどのあたりですか?
盛多:全体が。でも少なくとも「ホワイト」ではないな…。
皆田:いや、僕は作ってもらいたいんですよ、☆印と★印の変化を。
町田:これ演劇にしたらいいですよね。
日高:面白い、演劇になったら観てみたいです。好きな役者さんで。でも……「南のシナリオ」で選ぶとしたら「魔法のシュークリーム」ですよ。
盛多:「ゆきだるまを届けて」はいいですか?
日高:えー、一番好きなんですが…。
盛多:いや僕も推してるんだけど。上位2つは抜けないですね。
日高:それはそうです。
町田:「魔法のシュークリーム」がいいんじゃないですか。可愛いし、甘い香りを感じるような作品です。私の知り合いのアトピーの酷い人が要るんですが、本当に大変。何かを食べられない人って世の中に多いですよ。
日高:それは本当にそう。アレルギーって、もはやマイノリティーじゃないくらい。
町田:ジェンダーレスを扱ったものは良く見るけど、場面緘黙症を扱ったものはあまり見ないです。
皆田:僕が推せない理由なんですが。お話として、駆け出しの新米シェフが米粉と豆乳を使ってシュークリームを作りました、じゃないですか。 それに引っ張られるというか。これは誰が主人公なんですか?
町田:喋れない女の子、渚ちゃんです。
皆田:彼女は与えられたものを食べるだけで、美味しかったら美味しいというだけですか。
町田:いや、彼女さんが登場してそれに嫉妬する。
日高:それで変な顔をしたのを美味しくないと勘違いされて、そうじゃない「美味しかった」と伝えたくて声が出るんです。それがクライマックス。
町田:喋り出したらすごく喋りますね。
日高:私はシェフ見習いの青年には引っ張られなくて、渚ちゃんが主人公として見れましたけどね。
皆田:すごく大雑把で乱暴ですが、例えばアレルギーの子が反乱起こして陣地作って、そして何かアレルギーを克服するものを発明して世界中に大ヒットするとか。
町田:この作品は主人公が受け身だと?
皆田:そうなんですよ。だから青年が主人公かと思っちゃう。一生懸命に作って彼女に食べさせる。
盛多:「シュークリーム」か「ホワイト」かってことですね。
皆田:両方とも今を捉えてはいますよね。
盛多:単純に「ホワイト」より「シュークリーム」の雰囲気が好きってことなんですが。
日高:私もです。
盛多:これは挙手したら2対2になりますね。松尾さん(午前審査のみ参加)はどれを推してましたっけ。
皆田:「ホワイト」ですね。
盛多:「シュークリーム」は入れてない。
日高:でも点数は4対4ですよ。
町田:確かに「ホワイト」は古い感じがしますが、内容は「ハラスメント防止」のこととか入っていて
決して古くないんですよね。
盛多:僕は、☆と★でセリフの調子が変わるというのがなじめない。それが1回ならいいけど何回も続いて飽きちゃうし、芝居が続くのか? 舞台ならいいかな、映像かなあ?
日高:じいちゃん、いろんな人に入り込みますからね。
盛多:外した作品から復活させたいものありますか?
町田:「別府」復活させたいです。私は「ホワイト」より「別府」の方が好きなので。
盛多:なんかわかります。疑問だったのはガラガラを回すじゃないですか、どうやって二人…。
町田:あれは商店街のおじさんが二人の手を掴んで合わせて回したんでしょう。
盛多:おじさんが回したのか。
日高:そこのシーン面白い。結構おじさん重要な役なんですよね。
盛多:さあ、どうやって決めていくか…。僕のなかでは「ホワイト」と「別府」は似ている。「ホワイト」と「ファーストプレゼント」は似てませんよね。
町田:「ファーストプレゼント」はヒューマン。
盛多:「シュークリーム」がこのなかでは異質な感じがするというのが皆さんの意見ですね。
皆田:ストーリーがなあ…。外で喋れなくなるって、なんと言うんでしたっけ。
日高:「場面緘黙症」。作品の中ではこの言葉は出てきません。でもこの頃話題になったりメディアに取り上げられたりしています。
盛多:この作品の中では長崎に引っ越したことがきっかけとなってますね。
皆田:兆候はなかったのかなあ。
町田:それだけでなくいろいろな原因があるのかもしれない。
盛多:確認します。「パーフェクトワールド」を大賞でいいですか。
町田:いいと思います。
日高:私だけが票を入れなかったんですが。時代性は一番あると思うし、賛成です。
盛多:では「パーフェクトワールドへようこそ」を大賞、「ファーストプレゼント」を優秀賞第1位、「株式会社ホワイト」を優秀賞第2位とします。問題ありますかね。
日高:いや、「魔法のシュークリーム」を入れたいです。
盛多:特別に優秀賞を3つに?
日高:過去にはありましたよね。賞の数を増やしたくないとのことでしたが…。
盛多:確かに過去にはありました。
町田:そうですねえ…。
盛多:僕も「シュークリーム」落とせないなあ。優秀賞を3つにするか。皆田さん、いいですか?
皆田:はい。
盛多:では、「魔法のシュークリーム」を優秀賞第3位とします。今回は大賞1作品、優秀賞3作品です。
第17回二次審査通過作品
二次審査員の寸評(応募順)
はじめてのおかえり
認知症の父(夫)が客として居酒屋に帰ってくるという発想は新鮮。ト書きがなくても臨場感が伝わる台詞回しは秀逸。しかし、エンド部分まで物語を読んで(聞いて)いただけでは、父(夫)が認知症だったという説明部分が少し希薄なので、あらすじを読んでおかないとキモとなる部分がわからない。惜しい。
Perfect Worldへようこそ
これからこういうバーチャル世界での疑似恋愛が増えていくのだろうか? 「さもありなん」という思いと、それが希望のある方向へ向かって終わったのでこの作品を残した。だが残念ながら深みが足りない。言葉だけの疑似恋愛では、痛みや切なさといった生身の恋愛の切実さを伴わないから、それを反映して作品自体が淡泊になったのかもしれない。
株式会社ホワイト
人物が入れ替わりながらの会話が面白く、上手な人に演じてもらってこういうドラマを作ったら楽しいだろうな、と単純に思いました。しかし現実社会では単純に解決しないテーマを取り扱うため、配慮や覚悟をしてでも作るか、というと、そこまでの力は感じませんでした。新入社員の変化が、『ブラック』コメディなのか、人情ものなのか、なんとも腑に落ちないラストに思えました。
ファーストプレゼントうまい。作者は書きなれた方だと思います。博多の伝説をモチーフに見事、絶品のドラマを構成してくれました。新しさはないが胸を打ちます。
氷砂糖ひとつ
読者へのメッセージがしっかり出ている作品だと感じました。いまこの場にいるのが香奈と武士のふたりだけで、流れも分かりやすかったです。断った氷砂糖を受けとることで、香奈の気持ちの変化が表現されていたのも素敵でした。
マリーの鏡
読者の自己肯定感を高めてくれる作品だと感じました。社会問題(LGBTQ+)をとりいれながら、とても読みやすい作品に仕上げてられています。最後にマリーと父の気持ちが通じ合ったようで、すっきりとした読後感を得られました。
失恋の苦しみから抜け出す方法
失恋の痛みを消し去るには、振った相手をアタマの中で殺せばいい! この設定は面白いし、殺し方をいろいろ考えるのも(実際に殺すわけではないので)逆に楽しくすら感じる。惜しむらくは、前半部分が長いのと、殺し方をレクチャーしてくれる洋子のキャラが、もう少し魅力的だったら…とせっかくなら関西弁ではなく博多弁だったらなぁ(妄想^^)物語がセリフでしっかりと展開していくので、ラジオドラマとして聞いてみたい。
親方と息子見習い
荒れた海で漁をする中で、親方と息子見習いの心が通っていくシーンに魅力を感じました。『息子見習い』がかつて息子を亡くし、息子の服装や言葉遣いで生きているという設定は魅力的だけれど、物語中の説明だけではわかりにくかった。漁師になることや結婚は、彼の望みなのか、亡き息子としてなのか? 迷いや葛藤はあるのかなど、彼の内面をもっと見たかったように思います。(息子として生きて結婚しようとしている、というとらえ方をすると、急に怖い話に思えました)
呼び継
呼び継という唐津焼の専門語を紹介しながら、巧みにドラマ化しています。夫婦の心の通い合いが、甘えなく切実に描かれています。大人向きの作品です。
魔法使いのシュークリーム
主人公の少女の空想がかわいらしく、心の揺れ動きも繊細に描かれていて、やさしい気持ちになれるお話でした。(長崎弁がところどころ関西風なことに目をつぶって読んでも)物語の舞台が長崎であることが、あまり効果的になっていないように思います。主人公がなぜ声を発せなくなってしまったのか。自分だけ言葉の違う地域に引っ越してきたことの緊張感、土地柄の印象などが、彼女にどう影響しているのかも見たいと思いました。
宝石のような可愛らしい作品。幼女のリアリティが抜群。ドラマ制作時には役者の選定が難しく、演技力が要求されるが、うまく作ればドラマは異色の作品となるでしょう。
一等、別府温泉一泊二日
不運男女のちょっと素敵な物語。セリフ一つ一つはなかなか面白いけれど、真ん中の喫茶店での不運自慢が少し長いかなぁ…オチにもう一つどんでんがあったら腑に落ちたかも…とも思います。
ゆきだるま届けて
話に動きがあって面白い。「雪ダルマ」と品名がある品物を宅配が受け付けるか? かき氷を雪だるまにできるのか? などの疑問は大いに残るが、セリフも生き生きとして場面展開も鮮やかで飽きさせない作品だと思う。
みずあかりに想いを馳せて
娘と母のやりとりのテンポがよかったです。お互いの気持ちを受けとめていく過程も、無理なく読めました。ただ、読者に訴えるものをもっと強く出してもよかったのかなとは感じました。
ハート・パート・バード
「不登校」「フリースクール」ずいぶん使われた素材で、最後も予定調和で終わっているが、運びがうまいのでどんどん読ませる作品。夢が単なる奇抜な話に終わらず、主人公の弟に対する気持ちを丁寧に表しているため、ストーリーの中で活きていると思う。不登校の弟が明るく穏やかすぎるが、今の不登校生とはそんなものだろうか?
以上、14編
第17回一次審査通過作品
一次審査員の寸評(応募順)
はじめてのおかえり
この手の話は好きなのですが、読み手(聴き手)が、すぐに理解できるか少し不安。私は2回読んでとても好きになりました。
ちゃぽん、と休んだ昼下がり
温泉地を舞台にした、傷心の主人公と仕事に悩んでいる新人バスガイド嬢。そして、人生経験豊かなベテラン運転手の3人の絡みが絶妙に構成されている。状況描写の言葉の使い方も巧みで、効果的なSEの配置もストーリーの流れを良くしている。運転手から、のんびりすることの大切さを諭され、2人は足湯で元気を取り戻すが、主人公の「バス自体がなんか温泉みたいでした」の言葉こそこの作品のテーマであろう。
サンタクロースは二度ベルを鳴らす
最初と最後にだけ登場するタツヤのモノローグが、やや説明調だけれどとにかく優しい。誤字があったのは残念でしたが、全体のストーリーが良く、今年のクリスマスは、ベルが二度鳴らないかな?と、思い出してしまいそうです。
ドライビング・アッシー
アッシーという言葉だけで話を広げられたことが良かった。会話のテンポもよく、話が入って来た
家族と妖怪主人公によると、キジムナーはガジュマルの木に宿る妖怪だ。存在の有無を考えるより先に、その存在が成立している世界線で、自然な家族の物語になっている。
家族と妖怪
主人公によると、キジムナーはガジュマルの木に宿る妖怪だ。存在の有無を考えるより先に、その存在が成立している世界線で、自然な家族の物語になっている。
Perfect Worldへようこそ
バーチャル空間で出会った男女二人の物語。そこは思い通りの人生を送ることが可能、ということでまるでドラマのような!物語がイキイキと展開します。バーチャルの中で楽しい時間を過ごしていると突然急展開。現実世界に戻った時、バーチャルでは味わえない現実世界での体験をしたかったと後悔する女の子。男性も現実逃避からバーチャルのように思い通りにならない現実を生きてみようと進み出す物語は短い時間の中では多少無理があると思いながらも発想は面白いし時間を延長したドラマで描くとメッセージ性のあるドラマになると思いました。
モグらはみんな生きている
出世と無縁の、陽のささない部署の3人壁際族が、会社へ存在をアピールするため全国穴掘り大会へいどむ。男と女に老人、3人の個性を掘り返し、さらに道具や20回を超える大会の歴史などを掘り返すと、穴掘りをめぐる人間模様と文明を絡めたコミカルで深い作品に化けるかも。
卒業旅行
何故か、心に刺さる作品だ。人を好きになる!貶める!壮大な三角関係というか、ラストに唖然とする。どちらの立場も、人を一途に愛した結果なのだが、複雑な読後感があった。愛する者を守るための嘘。それを良しとして受け入れる女性。このストーリーは、リアルタイムの進行ではなく、飛行機という限られた密室の中での、回想、という展開でこそ成り立つ気がした。
爆弾とラーメンは同じお皿に盛りつけるな
爆弾と、SEの爆発音の使い方がうまい!いきなり面白く始まる。占い師から『博多に行け』とか、地元の博多弁とか、地元の人間が楽しめる作品。
楽屋にて
華やかな舞台の裏側では、きっとこの物語のように、多くの人間の心の葛藤が繰り広げられているのだろう。新曲よりもファンの気持ちに寄り添うことを選んだ主人公に好感が持てた。
ハートの名探偵
ストーリー、構成とも優れた完成度の高い作品。発想、着眼点が斬新で医療従事者の作品と思われるが内容は全体的に重たくなく、会話のテンポも良く温もりを感じる作品。
株式会社ホワイト
愛子の体に愛子と鬼平の2つの魂が入ることを「相乗り」という言葉で表現していることが新鮮だった。鬼平(博多弁)のキャラがモーレツに際立っていて楽しい。テンポもよく単純に面白く読めただけに、鬼平が去っていくラストがどうも消化不良。
さしすせそ、の前から
長らく会っていなかった母親に会うために帰省する男。余命幾ばくも無い母親の
愚痴にぶっきらぼうな言葉をぶつける息子との会話は、深刻な内容にもかかわらず軽妙でテンポが良い。取り返せない月日への痛切な後悔と長年の空白を埋めようとあがく不器用な男の愛情が滲み出る作品。
ファーストプレゼント
作品全体に流れるホカホカした雰囲気がよかった。養子縁組コーディネイターという名前の仕事があるということを、私は初めて知ったが、この仕事によって一人でも多くの赤ちゃんと妊婦が、救われて幸せになってほしいと願う。恵とその息子の奏の会話から、血がつながらなくても家族になれるということが伝わって来たし、恵が、本当の母親と離れて生きていく赤ちゃんに手づくりの肌着をプレゼントするというところが印象的だった。
氷砂糖ひとつ
タイトルが素敵。登場人物もストーリーもシンプルながら、会話のテンポや展開が上手でどんどん引き込まれていきました。東京で働いていた過去の主人公と東京から逃げ出して佐賀で発掘アルルバイトをしている今の主人公の対比が良いですね。そして最後に口の中で溶けていく氷砂糖がいい味をだしています。
ラムネの後味
主人公の高校生2人の爽やかな恋物語のはじまり。ビー玉を介したセリフ、「取れそうで取れない」。「手に入れると別の面白さがある」。の中に、恋愛物語へと進んでいく予感を感じさせます。ラムネのビー玉の音を効果的に入れるとラジオドラマとして爽やかな後味を感じられそうです
開聞岳の彼方に
緊急着陸で一時は死を覚悟した主人公。戦闘機で海に散った特攻隊員を対比させ、まだ見ぬ愛児や愛する人からの贈り物を絡ませて戦争の悲惨さ、反戦を描いたストーリー展開に涙が出てきた。情景も良く伝わる良い作品でした。
マリーの鏡
既読感のあるストーリーだが、オーディオドラマでは、めずかしいかも。展開も、こうなりそうかなという線を沿っていて、ある意味安心して読める。セリフもいいし、ゲスはゲスらしく、父ちゃんは父ちゃんぽくて、人物もいいし、読後感もいい。あれ?この作品、悪いところないじゃないか。個人的には、マリーが父のこと「父ちゃん」と呼ぶのがとても好き。
失恋の苦しみから抜け出す方法
読み終わった後、余韻にひたれた作品。稔の失恋について、友人たちが声をそろえて「大丈夫、時間が解決してくれるから」というセリフは稔の心情と対比していて効果的で面白い。稔と幼馴染の洋子が元カノを殺す方法を話し合っているところもいろいろな場面が想像できる。ラジオドラマだからできるシナリオに仕上がっている。
水みくじ結んだら
フリーライターの女性が、過去の殺人事件の家族で引きこもりの男性を取材していく話。「がめ煮」というセリフが出てきますが九州人にはわかりますが他の地方の人はどんな食べ物なのか分かりにくいかなと思いました。意外な展開に驚きましたが、改心していく心の動きをもう少し丁寧にお書きになられると深みが出るのではないかと思いました。水みくじは映像では綺麗ですが、ラジオでの表現は水の音だけになるのでどれだけ表現できるか、と思いました。なぜ普通のおみくじではなく水みくじなのかも併せて表現されるとさらに良くなると思いました。
臆病者に刃物
設定が面白いと思った。1階の理髪店が舞台だが、2階が貸金業者。以前、客の髭剃り中に熊本地震が起こり、客の顎を切ってしまった主人公。それがトラウマとなり、それ以来客の髭剃りができず、従業員に髭剃りだけは頼んでいる。事件当日、刃物を持って飛び込んでくる犯人もまた板前だが料亭で先輩の板前のパワハラを受けて、料亭を辞めたという背景を抱えている。全体を通して、セリフが良い。言葉のキャッチボールがうまい。ただ、熊本地震の大きな余震及び本審は、夜起こっているので、その辺の修正は必要。
灯火の先に、家がある。
うまい。自然なセリフのやりとりなのだが、妙にドラマっぽくもあり、面白く読めた。ラストも絶妙。ハデなストーリーではないが、会話の妙か、先の展開が気になって読み進めてしまう。こういうのは量を書いてもうまくなるもんでもなさそうで、その人のセンスだと思っている。こういう人って、どんなテーマを与えられてもそつなく書いてしまうんだろうな。全く羨ましい。十分に書きなれた方の様でもあるが、(終わり)と書く辺りに初心者っぽさもあり、作者がどんな方か、とても興味あります。
海峡の港で
警察に追われる男と家族を捨てた母が再会する熱い人情ドラマ。レトロな港町の旅館という舞台に昭和なキャラクターがハマって、某サスペンス劇場が脳裏に浮かび楽しかった。
ヒロトくんは失敗できない
失恋の瀬戸際にいる息子とシングルマザーの母。女ごころを武器に息子の恋愛成就を後押したいところだが、世間の荒波を超えてきた母のことばはそっけなくぶっきらぼう。軽快な世間話からたちのぼる身近すぎるやさしいひとびとの温もり。
親方と息子見習い
弟子見習いと思っていたら、息子見習いだった。66歳漁師の主人公の元に来たのは歳が8歳しか変わらない弟子見習いで、思ったよりまじめな姿にほっとしたり、何気ないセリフが耳に良い。そこから、一人娘の32歳違いの恋人と知って、主人公は荒海に出て行く。追いかける息子見習い。釣り上げるのは魚か、信頼か。気持ちの良い作品。
AIな妻
思春期の娘とちょっと頼んない感じのパパがいい。とはいえ、会社ではお偉いさんのひとりなんだろうな。先の展開は読めてしまうが、ドラマとしては映えそう。
安らかに眠れない
会話のテンポがよく、ひきこまれました
お局予備軍とZ世代
初めはだたのチャラい後輩だった登場人物のキャラの印象がだんだん変わっていくのが良かった。
朝子の秘密
モノローグが説明になっていなく、効果的に使われていました。
かおり
「この世でもっとも嫌いなにおいが鼻に突き刺さる」というセリフには、ぐっときました。このセリフがきちんと伏線になっていて、マユの過去や心情を内包しつつ、その後の行動・展開を引っ張っていってくれました。後半はマユと佳緒里の二人の会話が中心ですが、二人のキャラクターが似すぎているのと、説明セリフが多いのが気になりました。
私が犬になるまで
この作者もそうだと思うのですが、山月記が好きです。パロディまでとはいかないまでも、もう少し倣ってもおもしろかったかも。物悲しいラストも作者は考えたと思うのですが、この終わらせ方の方がいいかな。私も犬好きです。ちなみにネコも。
呼び継
セリフに説得力があり、切なさを感じました
いつも粗相をするリリィは
息苦しい気持ちでバイトリーダーを続けていた主人公が、押し付けられた犬に対し、愛情を持ち始め行動していくことで自身も変わっていく話。最後の近況報告の手紙は、ナレーション回避の良いアイデア。
その森をいっしょに歩きたい
物語の出だしを読んで、あまり期待できないかな?という気がしたのだが、読み進むにつれて二人の人物がよく描かれていて、面白かった。酒井が牧村の妻にスマホをかけて縄文杉の姿を伝えるシーンは、胸がジンとした。辺りの森から風や水の音が聞こえてくるようだった。
日本一の福男の妻
作者の名前が原稿の左上に印字されているようです。ト書きに回想シーンに入るとありますが、映像で表現する事は可能ですが、これはラジオドラマなので音声のみの表現になるため、セリフまたはSEで入れるようにされると良いと思います。内容は、「福」を求めてそれを手に入れるも「結婚の幸福」を失うかもという物語。内容はあり得なさそうな生活感を醸し出していますが、それでいて、面白い展開だと思いました。
焼うどんの日
母親不在の日には、必ず父親が作るという焼うどん。しかし、主人公はこの焼うどんが嫌いだ。不味いから。この日も、朝から作っているが、実は母親の葬式の日である。明るい会話に、いいのかと思ったが、夜、父親が1人で母親が残していた花火を、一人でしている姿に、父親の不器用な愛を感じた主人公。というエピソードの挿入に、少しホッとした。焼うどんに特化した面白い作品だ。どんな音で、味を表すのか、楽しみである。
魔法使いのシュークリーム
長崎へ引っ越してから家の外ではうまく話せなくなってしまった小学生の女の子のモノローグで進行する可愛らしいストーリー。身近な話題にほんのりとファンタジーのエッセンスをふりかけたら洒落た雰囲気のある作品となった。
河童の娘
結婚式の披露パーティー(ケーキバイトならぬきゅうりバイト)と山笠のタブー(きゅうり断ち)という2つの材料を上手に組み立てたストーリー。花子と親友のみのりとの会話では、結婚生活の中で文化の違いや異なる考え方を受け入れようとするエピソードが盛り込まれていてほほえましい。ラストのオチは残念ながら予想できた。
一等、別府温泉一泊二日
不運続きの男女が、たまたま通りかかった商店街で、無理やり福引をひかされる。すると一等賞が当たる。お互いに特に興味もないので、譲り合うが、結局行くことになる。しかし、その一泊二日の泊まる宿は、たまたま改装中であった。会話のテンポが良い。
恋の至極は
二人だけの会話で、居酒屋というワンシーンなのだが、最後まで興味深く読んだ。「恋の至極は忍ぶ恋」と信じてきた秀明が、最後は、みっともなくても愛を伝えて愛し続けることだと気づき、若菜を追いかけていくところが印象的だった。
風待ちの港
審査した中で、一番ほのぼのとした内容であった。登場人物のキャラも個性がそれぞれしっかりしている。通勤電車の中から、元恋人夫婦の畑仕事をしている様子に癒される主人公。そして、職場の後輩。電車の様々なノイズ、ラストの風の音。主人公の心の変化や、妻の悲しみ。どちらも、一番愛する人を失った孤独感。それが、淡々とラストの大声で叫ぶシーンに、向かっている。
お帰りなさい
時代が移り変わり、環境が変化していっても、家族への愛情は言葉で伝えなくては、伝わらないと、感じさせてくれた。新幹線の車内を小走りにかけていくこどもの足音が聞こえる作品だった。
ゆきだるま届けて
導入部分の設定に疑問を感じたが、その不自然さを上回る魅力ある作品。後半部分の謎解きも納得でき、後味も心地よい。オーディオドラマとして聴いてみたいと思った。
同じような男
テレビ番組「星新一ショートショート」や「世にも奇妙な物語」を思わせるストーリー展開は単純に面白かった。寓話的な要素はあまり感じられないが、発想、アイデアには感心した。
みずあかりに想いを馳せて
母が5回目の結婚にしてめぐり会えた最愛の人が、娘の大好きであった亡き父とそっくりであったことから、やっとお互い解り合え、お互い前に進むことが出来た娘と母の心情。そして、そのきっかけとなる幼い頃に亡き父と母と遊んだ和ろうそくの夜まつり「みずあかり」の情景が良く伝わる作品。後でネットで調べたら、「みずあかり」の意味には”未来は自らの小さな一灯により始まる”と記されていました。
ハート・パート・バード
高校生の姉と学校に行けなくなった中学生の弟、理解ある母と、人物設定としては型にはまっているが、等身大の女子高生の内面を丁寧に描き、その気づきと成長を軽やかに明るく仕上げたところに好感を持った。
故郷(ふるさと)
ダムの底に眠る故郷。思い出の地を追われた少年10歳の記憶は歳を重ねるたびに輝きをます。奇しくも娘が、故郷を失ったときの父と同じ年をむかえている。父と娘の滋味豊かな会話が、二人の古里となる原風景を結実していく。
以上、47編
大賞 「Perfect Worldへようこそ」永合 弘乃

受賞者のことば
永合 弘乃 (東京都)
「昨年、親友が福岡で結婚式を挙げました。
披露宴に向かう電車の中、地元の女子高生が放った「なんしようと?」という言葉に強く惹かれ、この物語のヒロインは、博多に住む明るい少女にしようと決めました。
そして、もうひとりの主人公として頭に浮かんだのは、少女と対極的な、生きることをあきらめた暗い男性でした。
こうして出来上がったのが「Perfect Worldへようこそ」です。
住んでいるところも、年齢も、全く違うふたりが、どうやって出会い、恋に落ちたのか。
ラジオドラマで、物語に息が吹き込まれるのがとても楽しみです。
この度は「Perfect Worldへようこそ」を大賞に選んでいただき、本当にありがとうございました。
大賞に恥じぬよう、死ぬまで物語を書き続けます。
優秀賞 「ファーストプレゼント」 加治 裕美

賞者のことば
加治 裕美 (神奈川県)
美大生だった頃、煮詰まるとキャンパスの芝生に寝転び空を見上げた。生み出すことが全て。身体は細く心はとんがっていた。
人生は二転三転、社会福祉士の道を歩んだ。作中モデルの少女は自死していた。私の担当は加害者の父だった。20年以上振りにシナリオを執筆。少女にシナリオの中で生きていって欲しかった。人生は三転四転、介護離職。
自宅上空千ft超は九州方面への航路。空を行く機影を見上げ「表彰式に行きたい」と願った。
応募原稿を読み返し「ダメじゃん」と反省断念しかけた時、受賞の電話を頂いた。今は介護中の母の病状が悪化し、表彰式参加が危ういが、娘に背中を押され、九州行きのチケットは用意した。
身体も心も丸くなったおばさんは、美大生だった頃の私に伝えたい「その空は九州に繋がるよ」と。
人生は5転目。蜘蛛の糸のように私のシナリオを最後まで引き上げてくださった審査員の先生方に心から感謝の気持ちで一杯です。
優秀賞 「株式会社ホワイト」 立石 えり子

受賞者のことば
橋本 直仁 (東京都)
人手不足で業務量はいっぱいいっぱい、業績もなかなか上がらない、こんな時代に管理職になったら…… そりゃ裁量も増えて仕事も断然面白くなったし、やりがいもあるんだけど、ハラスメントには全方向に細心の注意を払い、異次元の子育て支援も最終的には両肩に乗っかって、ワークライフバランスとやらで部下には残業させにくい。
ええ~い、それなら全部私に任せなさいと残業代も出ないのに、ひとり夜中までPCに向かってる。
あれ? なんか新入社員の頃に思い描いてたここからの景色とは随分違うぞなどと呟きながら…… そんなあなたのために、「職場のメルヘン」書きました。
大好きだった上司の言葉、「頑張ってはいけない。
頑張ると自分では気づかないうちに、『私がこんなに頑張ってるのに』という態度が滲み出てしまうから」そんなセリフもぶっ込んでみました。
これからも日本をよろしくお願いします!このたびは優秀賞に選んでいただきありがとうございました
優秀賞 「魔法使いのシュークリーム」 望谷 まと

受賞者のことば
望谷 まと (神奈川県)
この度は優秀賞に選出いただき誠にありがとうございます。
この作品の舞台は、長崎のどこかにある小さなケーキ屋です。本当にあったらいいなと想像しながら書き進めるうちに、登場人物の一人一人に愛着が湧いて、書くのがとても楽しい作品でした。
その分つい長くなってしまって、どこを削ろうかと悩みました。
このような素晴らしい賞をいただき大変嬉しく思っています。
ご指導くださった先生、長崎弁の確認をしてくれた友人、そして、執筆の相談にのってくれたり励ましてくれたりした創作仲間に、心より御礼申し上げます。「書く」ことが繋いでくれたご縁に感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも、もっと心に残る作品を書けるよう精進したいと思います。ありがとうございました。
総評
ご応募ありがとうございます。
日本放送作家協会九州支部長
審査委員 盛多直隆
17回南のシナリオ大賞、252通の応募がありました。じっくりと読ませて頂きました。読んだ感想は、皆さんのレベルが上がってるな、と思いました。日ごろからの努力が垣間見えます。そして、物語を綴ることが好きなんだな、と感じました。
今回は、大賞一編、優秀賞三編としました。通常は優秀賞は二編ですが、絞り込むができずに三編としました。それだけ、書く力が拮抗していたと言えます。来年がどうなるのか楽しみです。
さて、大賞は、「Perfect Worldへようこそ」の永合弘乃さん。バーチャルワールドで恋に落ちた二人。現実とは違う年齢と職業を偽っていた。現実に戻った二人にはちょっと悲い事実が待っていた。現在を捉えて心に迫る物語でした。
優秀作には、「ファーストプレゼント」の加治裕美さん。養子縁組コーディネーターの口癖は「大丈夫」。そのパワーが周りの人たちを幸せへと誘っていく。心温まるお話でした。
次は、「株式会社ホワイト」立石えり子さん。次々に心が入れ替わって本音を言い始める登場人物たち。いつもは回りを気遣って言えない言葉が飛び出してきます。爽快感とパワフル感がありました。
優秀賞3作品目は「魔法使いのシュークリーム」の望谷まとさん。人前で話せない、食べ物アレルギーのマイノリティをシュークリームで救うファンタジィー。思わず応援したくなりました。
いつも思うのは、応募された作品から、多くの人たちと触れ合ったような感じになることです。出来れば、一つ一つの作品を応援したいと切に思います。いつまでも物語を綴り続けてください。また、会える日をお持ちしています。
第17回 南のシナリオ大賞 表彰式
日時:11月11日(日)15:00~16:30
場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神)
表彰式出席者






立石さんの受賞の言葉で、お名前が別人になっています。
PDFの「魔法使いのシュークリーム」が別の作品になってますよ。