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第14回 南のシナリオ大賞

  • 2024年3月12日
  • 読了時間: 8分

更新日:2024年3月18日


第14回 南のシナリオ大賞 結果発表


第14回南のシナリオ大賞 結果発表
第14回南のシナリオ大賞 結果発表


南のシナリオ大賞


  • 「ほてぱき」竹田 行人(東京都)


優秀賞


  • 「無音の伴奏」境田 博美(千葉県)

  • 「不知火」浅渕 聡美(神奈川県)

  • 「月の石の指輪」鹿内 俊太(東京都)



一次選考通過作品


一次選考通過作作品(朱色は二次審査通過作品)

「山小屋の怪」松元康楽 (三重県)

「飛梅2099」袴着ジュン (福岡県)

「アイラブ マッキー」土師乃ゆうかり (京都府)

「ゆたかとお豊」つかさこう (埼玉県)

「ほてぱき」竹田 行人(東京都)

「待ち合わせ」甲木千絵 (大阪府)

「疫病神と守り神」北川由美子 (大阪府)

「はてるま」春日裕昭 (山梨県)

「どこにでもいる夫婦」小口佳月 (東京都)

「とあるリクルート」オオタニセイジ (岐阜県)

「溟海の声」井坂 一 (東京都)

「ファンファーレ」加藤一郎 (大阪府)

「無音の伴奏」境田 裕美(千葉県)

「幸福の神事」藤野うつわ (東京都)

「海からの約束」大塚由弥 (神奈川県)

「すけすけののろい」森岡美帆 (神奈川県)

「55年のありがとう」和田暁知 (東京都)

「不知火」浅渕 聡美(神奈川県)

「岩戸さんのお怒り」竹上雄介 (東京都)

「壱岐なポルトゲー」美苗 (神奈川県)

「夏空の大漁旗」抹茶こうた (兵庫県)

「時に溶ける」川野知美 (神奈川県)

「熊オトコ」日高真理子 (福岡県)

「月の石の指輪」鹿内 俊太(東京都)

「ハニーとダーリン」狩屋江美 (東京都)

「ごぼ天うどん食べた?」ジョンストン・ケイ (東京都)

「あの日、いえなかったこと」須田 亘 (東京都)

「砂に埋もれて」森田志保子 (神奈川県)

「阿蘇に流星」長木瞳美 (東京都)

「趣味は言えない」MASA (東京都)

「蘇った男」竹上雄介 (東京都)

「そこ吹く運命」未島 夏 (大阪府)

「バースデイ」土屋祥子 (東京都)

「一緒の印」荒木美音 (東京都)

「奴隷が踊る」なないろ みほ (東京都)

「違和感症候群」西尾紗奈 (神奈川県)

「青春の死体」福丸慎弥 (東京都)

「麦酒の味」益子悦子 (神奈川県)

「墓参り代行」八田明子 (神奈川県)

「来年の虹」前田郁 (千葉県)

「ご祝儀の相場って?」熊谷文代 (千葉県)

「青いさくらは散りぬるを」久継遥々 (東京都)

「宇宙からの暇つぶし」こたつめがね (東京都)

「桜の火傷の痕」姫田美緒 (東京都)

「つれづれなるままに」小西康高 (北海道)

「いつか、きっと」谷口あゆむ (東京都)

「プラネタリウム、焦がれて焦げて」森野マッシュ (東京都)

「ネコが鳴く」岩本流星 (兵庫県)

「カニ食べに行こう」藤田知多佳 (東京都)

「カナリヤ」水城孝敬 (東京都)

「グッドラック」曽雌康晴 (東京都)

「博多ちゃんぽんの音色」神代美和子 (東京都)


応募総数

298編(2020年8月31日締め切り)


主催

文化庁「九州・沖縄から文化力プロジェクト」参加事業

主催:日本放送作家協会九州支部

後援:日本脚本家連盟九州支部 / 日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会


選考会

2020年10月11日、福岡市中央区赤坂

審査委員: 盛多直隆、皆田和行、副島 直、香月 隆

実行委員: 荒木弘子


第14回最終選考ドキュメント

第14回南のシナリオ大賞 選考会


(5) 「ほてぱき」

(4) 「どこにでもいる夫婦」

(4) 「墓参り代行」

(4) 「月の石の指輪」

(3) 「無音の伴奏」

(2) 「阿蘇に流星」

(2) 「蘇った男」

(2) 「不知火」

(1) 「バースデイ」

(1) 「ご祝儀の相場って?」

(1) 「青い桜は散りぬるを」

(1) 「グッドラック」

(0) 「いつか、きっと」



()内の数字は審査員投票数


副島:今年は新型コロナの影響で在宅時間が長かったのもあるだろうけど、去年より98篇増えて、応募数がいつもの1.5倍。数が質の向上を促したんでしょうか、例年2本か3本しか(最終選考で)票を入れない私が、今年は6作品に投票している。


盛多:こんなことありえないじゃん。


副島:盛多さんだってすごい、7本挙げてる。


香月:わたしは3本って言われてたから無理やり3本に絞ったんですよ……いや、5本あるね。


副島:二次審査はひとつの応募作をふたりの審査員に読んでもらって、3作品を(○1本、△2本で)選んでもらったんですが、票がかぶってたのは2本しかなかった。○評価は5人全員バラバラ。ひとりが○付けた作品でも、もうひとりの審査員は×だったり。評価が集中して10本前後に絞られるんじゃないかと予想していたんですが。今回の最終審査は13本と多いです。


香月:そのどれもに個性があって、それぞれ面白かったですね。



「いつか、きっと」


副島:阿蘇の水源が主人公の話です。あらすじ読まないでいきなり最初の一行目から読んだから、なに書いてあるのか全然わからなかった。


香月:ぼくもあらすじ読まなくて、わからなかったです、正直言って。


皆田:ぼくはすぐ分かりましたよ、水が話してるってこと。


副島:なぜ水源なのか分からない。


香月:それは熊本に材を採ったからですね。熊本は水の都で……


副島:それは分かりますけど、なぜ水源を主人公に設定したのか。水源の感情が人間と同じというのも、分からない。


盛多:根本的なところで、水と人間のやりとり、まずこれが理解できない。この作者、ちょっとロマンチック過ぎない?


香月:ストーリーに無理がある。


皆田:幼稚な話です。



「バースデイ」


副島:「フォレスト・ガンプ」とか「ベンジャミン・バトン」みたいな、作り物の不思議な人生を扱った発想が面白かった。こういう奇抜なアイディア作品が増えてほしい、という希望があって票を入れました。


盛多:会話のなかで主人公の少年を、親父が「くん」を付けて呼んでいるんですが、なぜ「くん」付けなの? って考えたときに、離婚して、前の女の子どもなの? とか思いながら読んだことと、どうして男が弟として現れるのか、これも分からない。分かんないことをくっつけくっつけ書いてあるんで、正直言って、ぼくはよく分からなかった。そんなことを詮索しながら読ませるってことも大事なのかも知れないけれど、直球勝負でドーンとくるものが感じられなかった。


香月:ラジオということで考えたら(子どもの名前が)「航」「海」って分からないですよ。(漢字の)意味はいろいろとられるんだけど、ラジオの場合、そこはきちんと押さえてなきゃいけない。

皆田:生まれてきて欲しいと願う兄ちゃんと弟のやりとりなんですけど、航くんは小学校何年ですかね?


盛多:9歳だから、小学校3、4年かな。


皆田:(その年齢の)彼が(こんなセリフを)語るかな、って気がしたんですよね。


副島:作者が持ってる、人はなんのために生まれてくるのか、みたいな人生哲学をストレートに語らせている。


香月:最後の子どもが生まれるところは感動したけどね。


副島:子どもが生まれて、この世界に「ようこそ」ってセリフをもってきたところに、作者の人生観・世界観があらわれていたと思います。


盛多:このシナリオでドラマを作ると仮定したときに、男(弟)の扱いに困っちゃうんですよ。男が登場したとき、歳は幾つくらいで出せばいいんだろうって。航くんの弟だったら子どもの声だけど、子どもじゃないよな、とか。


副島:出会いは中年以降の男でしょう。ラストは(航くんより)年下の子どもになっていくんだろうけど。


盛多:だんだん若返ってくる。そこは「ベンジャミン・バトン」に似てる。


香月:発想は非常に奇抜だと思うし、そこは評価してるんですけどね。



「ご祝儀の相場って?」


盛多:単純に軽いノリで選びました。結婚詐欺にあって、それを取り戻す女の行動が一直線上にあってストーリーが成立している。予想を裏切る展開の面白さを買った。


皆田:女の執念とか女の性(さが)とかあって、復讐劇は面白い。


荒木:恋人を盗った今度結婚する女の人のほうが、キャラクター的に工夫されているように思ったんですけど。ラストがスカッとする感じで面白かった。


香月:モノローグに頼りすぎている。自己紹介とかドラマの進展とかほとんどモノローグでやっているでしょう。


盛多:「康貴が席を立った」って、こういうモノローグは必要ない。


副島:発想がテレビなんですよ。映像で考えたドラマをラジオドラマに置き換えたときに、音声だけで表現できないところをモノローグに差し替えている。


荒木:前半がもったいない。舞台を作り上げるまでに時間がかかっていて、話の展開がスッと入っていかなかった。


副島:主人公のドジで笑わせようとしているのか、逃げた男の弱さを笑いものにしたいのか、どっちつかず。それともラストの、妊娠している花嫁さんを許すことで人情味を出そうとしているのか。そこを押したいって展開ではないんですが。


盛多:この流れでベタな人情物にもってくるのは厳しい。作るとしたら、おそらくそこは重視しないです。


香月:作者は秀逸な復讐劇を書きたいって気持ちが強かったんでしょう。人間描写よりもストーリー展開の面白さで書いたんじゃないのかな。


盛多:それが歴然と表れているのは、「利息を取り忘れた」っていう最後のセリフだけど、これで落とすのはちょっと。


香月:そういう言葉を立てると上手く締められるって感じで書いたんだろうけど、ドラマの落ちじゃないですね。


盛多:ムカついている部分が一点あって。九州の醤油って甘いってことになってるんだけど、それをソースって言うか? 馬鹿にしてんのか、と思いました。


副島:熊本で東京の友だちと馬刺し食いに行ったとき、彼はタレって言ってましたね。



「青い桜は散りぬるを」


皆田:2年で離婚した夫婦の話。夢を使うのは有りがちな話で、また夢オチかって思いながら読んでたんですけど、最後に、彼のおかあさんから電話があって、亡くなりましたって伝えられる。一緒に「さくら」に乗れて良かったって伝言があって、実際は乗ってない、夢の中でしか乗ってないのに、彼も死ぬ間際に同じ夢を見てたのかなって。夢もこういったやり方があるのかって。それで票を入れました。


香月:ぼくはこのラスト、ものすごく好きですね。だけど、これもモノローグでストーリーテリングやってる。それが大きな欠点。


副島:皆田さんは、電車に乗っていた女性の夢と、病床で死ぬ間際の元夫の夢がシンクロしていたと……


皆田:でないと、あの伝言はなかっただろうなと。


副島:私は最初からこの話が「雨月物語」にある「菊花の契」のヴァリエーションって読めていたんで、そこはぜんぜん感心しなかった。


荒木:おはなしはロマンチックで良いと思うんですが、このタイトル「青い桜は散りぬるを」が内容と合いすぎて、印象に残りにくい作品だなと思った。この文学的なタイトルが引っ掛かりにならなくて、スラーっと過ぎていって、私のなかでは残らなかった。


副島:(この審査会で)いつも言ってるんだけど、標準語と長崎弁の区別でキャラクターの心境を描くのだったら、長崎弁は長崎弁で書いて欲しい。


盛多:(以下、長崎弁で)は勘弁してくれ。


副島:それも、長崎弁の特徴を含んだセリフじゃないんですよ。長崎の人は普通に標準語で喋っているセリフが、(以下、長崎弁で)になってる。ここに書かれているセリフでは、夫との気持ちが離れていったというのが表せないと思う。


香月:この脚本のいちばんの欠点は、標準語と方言の使い方を制作任せにしているでしょ、これはやっぱりまずいね。


副島:夫婦の擦れ違い、気持ちが離れていく重要なファクターなんだから、そこはきちんとやらなきゃ意味がないでしょう。都会暮らしで標準語になってしまった奥さんの変化が表せない。長崎の人に、このセリフを長崎弁に替えて喋ってくださいっていっても、そんなに変わらないですよ。


香月:これは標準語でもぜんぜんいいんです。替えて読んでみたけど、ほとんど変らなかったですね。


盛多:ラストシーンの、(以下、長崎弁で)(以下、標準語で)、最後に昇子が嗚咽しながら「(佐世保弁で)優平、ごめん、本当にごめんなさい」って、これ読んだときに投げつけようかと思った。ラストのいちばん大事なところなのに、このセリフを持ってくる感覚がわからない。


香月:長崎弁で発想したセリフじゃないんですよ、全部標準語で発想してるんです。



「グッドラック」


香月:芸術的に、あるいはドラマ的に強く推したいって作品じゃないんですけど。西口先生のキャラクターが金八先生的に朗らかでよく書けてるなと思って。前向きで、新しい明朗青春小説みたいな感じで。それで票を入れたんだけれど。


副島:私は新しいという感じはぜんぜんなくて、むかしの、中村雅俊主演でやってた友だちみたいな先生が出てくる学園ドラマを思い出した。昭和の香りがしたな。


盛多:携帯電話のやりとりだけで全編通すという感覚がわからない。掛ける方か受ける方かどちらを加工するのか分からないんですけど、これで全編やられたら堪んねえな、というのはあります。


皆田:テレビ電話でやっているのかどうか、ラジオじゃわからないですもんね。


盛多:それがいちばん大きかった。


副島:最初の先生の声、1ページの1行目から察するに先生がONで、受けている生徒のほうがOFFなんですよね。ところが女の子がインターホン押すあたりからグチャグチャになってる。


香月:ON/OFFだけじゃなくてフィルターかけるといいでしょ、音質変えると。


副島:もちろんそうなんですけど、その(場面の)切替がグチャグチャになっているから、制作するとき混乱しますよ。


盛多:というか、電話のやりとりは短く入れてから元に戻すというのがセオリーなんだけど、これをずーっと全編やられると、聞いている方もきつい。それと、女の子が入ってきたときどうするのか、ちょっと見えない。


皆田:話は面白かったんですけど、これがはたして引きこもりなのかって疑問に思って。引きこもりがどういうものなのか、ぼくもよく分かっていないんですが。ただ学校サボって出てこない生徒くらいにしか見えない。先生と普通に長電話しているし、女の子が来たらお茶淹れたりもしてる。こういったのもひとつのアレかも知れないけど。


副島:不登校の少年の話を書こうとしたとき、その人物を作ろうとしたときに、やっぱり不登校になった原因というのを考えておかなきゃいけないんじゃないか、と思うんですよ。それがないから、この少年に引きこもりのリアリティが感じられない。


盛多:作者がまず物語を作ってから、そのストーリーを(結末に)持っていくためのセリフの流れ方が、段取りにしかみえなかった。だからセリフがぜんぜん生きてない、という感じがありましたね。


香月:あえて強く推そうという作品じゃないです。人間があまり描かれてないからね。ただ、スタイルはすごく新しいなと思って。テレワークとかリモートとか、今年しか出せない作品じゃないですか。実を言うと我が家でしょっちゅうこれやっているんですよ。東京と糸島で、端末何台も持っていて。それで、当世の家庭の風景をよく描けているなと。それもあって推したんだけどね。中学とか高校生とか、十代の子どもだったら、これすんなりとわかると思うんですよ。スマホと実際の映像と入り混じってゴチャゴチャになるけど。ゴチャゴチャになっていいかどうかという問題は、また別として。



「阿蘇に流星」


荒木:最初に読んだとき、これがいちばん良いなと思ったんです。舞台(乗馬クラブ)が面白い。馬が出てくるし、爽快感が吹き抜けてくるような……


香月:その爽快感は映画的なんですよ。ぼくは、これ、映画で見たらいいなって思った。


荒木:欠点があるとしたら、主人公に対して重要な立ち位置にある一馬という人物のバックボーンが分かりづらかった。いろんな背景を背負って登場しているんですけど、読むだけでは過去の因縁とか、ちょっと分からない。音的にはかなり良いです。面白い作品になるんじゃないかなと思って票を入れました。


皆田:このドラマのクライマックスは、試験に受かるかどうかってことですけど、それまでのやりとりと試験のシーンが、あまりにもアッサリしている。「対向」が苦手って出てきて、訓練したんでしょうけど、その訓練シーンは書かれてない。ドラマとしての盛り上がりが足りてないと思いました。


盛多:最後は成功してみんなから祝福されるだろうな、という展開が見えてきた瞬間に、これは無しかな、と。


副島:ストーリーが予定調和の枠にはまっていて、意外性がない。


盛多:単純に言っちゃうと、めちゃくちゃありがちな話じゃん。若者が成長して成功するって話は、もういい加減いいよ。


皆田:登場人物の名前が(セリフに)出てこないんですね。最初に「予約している坂野です」ってあるだけで、このあといろんな人が登場するんだけど、名前が呼ばれないから、誰が誰だか分からない。


香月:ラジオじゃ分かりにくいですね。


盛多:それと、音(効果音)作りがたいへんだなあというのが、いちばん大きかった。馬の音って録りにくいんですよ。よほどの熟練者が側にいないと、馬は絶対に言うこときいてくれないから。


副島:以前FMシアターの取材で佐賀競馬場行って、そのときに馬の音も録ったんだけど、全然分からなかった。番組聞いたときも、音響効果がいろいろ工夫したんだろうけど、それでも分からなかった。馬が好きで、蹄の音に慣れ親しんでいる人なら聞き分けできるだろうけど。やっぱり映像がないとダメなんだろうな。


香月:これ映画にしたら別の感動が出てくると思う。映画だったら、ある程度ストーリーが定型でも構わないし。



「蘇った男」


皆田:ベッドとか、冷蔵庫とか、履歴書とかが喋るというのがバカバカしくて。最後に自分の声が聞こえてきて、包丁で助けるという流れで、トントントーンと話が進んで……笑ったな。


荒木:スピード感があって面白かったですね。


皆田:最初に自殺しようとした包丁で、最後は自殺しようとした自分を助けるというのが、ぐるっと回って上手く着地できてる。


香月:ぼくは10年以上高校生の作品読んできたんだけど、そのなかにいろんなモノが会話するというのがあって、それの印象がどうしても強くて(この脚本は)評価できなかった。ただ、自殺しようとしている自分を発見するって最後のくだりは、高校生の作品とは違うんだけどね。


副島:自殺しようとした人間が過去を振り返って、存命の希望を見出すというストーリーで「素晴らしき哉、人生!」、それと、モノが喋るというところで「トイ・ストーリー」を掛け合わせてる、という印象。あまり新しい感じはなかったです。


盛多:ベッド、履歴書、パソコンと、8つも出して。どうしてこれだけいるのかが分からない。こんなに並べる必要性ってあるのか、もう少し絞ってキャラを出していけばいいのに。


皆田:冷蔵庫だの履歴書だの、主人公の生活すべてが出てるじゃないですか。食ってないなあ、とか。履歴書がエントリーシートに書かれた就職の志望動機を語らせたり、破られてゴミ箱に捨てられてた通帳も残高ゼロだったとか。


盛多:ぼくは単純に、もっとキャラ(の性格を)つけろ、ってことなんです。最後に包丁を持ってきて落とすのはぜんぜんオッケーですけど、ここまでいろんなもの出してきて何の説明もない。例えば、この男がいつも使っているパソコンだったら、Hのとこだけがへこんでるとか、そんな小さなところにキャラを付けていかないと成立しない。これじゃただ出してるだけじゃん。何故こいつらが喋るの? 「何故?」を一切説明していない。


皆田:これはバカバカしい話だから、そういう説明は要らないんじゃないですか。


盛多:いや、ぼくはそうは思わない。バカバカしい話ならバカバカしい説明が必要です。これ、笑えないもの。


副島:一次審査の作品読んでいて、今年は自殺を扱っている作品がけっこう見受けられたんですが、安易な思いつきで「生」とか「死」を扱っているのが多くて、嫌になっちゃったんです。この「蘇った男」も、コメディかファンタジーか知らんけど、読んでいてすごく気分が悪かった。



「不知火」


盛多:見知らぬ女の子ふたりが出会って、好きだった男が亡くなって、そこに不知火を見せてくる。このふたりに共通しているのが「ラッキーなことが起こる」というセリフにあるんですが、それが不知火にあらわれてくるというのが、なんとなく良いと思って選びました。会話が好きでしたね。ただ、モノローグ使いすぎかも知んない。


副島:不知火の説明モノローグに会話を絡ませてくるあたりは、すごく上手い。私はこの作品、とても巧いシナリオだと思いました。それと、不知火というヴィジュアルをラジオで見事に表現できてるな、と感心しました。


盛多:「もしかして私に話しかけてる?」とモノローグで語らせてから、すずかが「夕方からいたよね」って話しかけてきて、「あ、私だ」とモノローグで返す、このテンポ感は好きでしたね。


香月:モノローグから自然に会話に移っていく。そこのオーバーラップのしかたが非常に良かったですね。


盛多:福岡でこのふたりを演じられる女の子がいるとは思えないけど、うまい具合にキャスティングできれば……モノローグにすっとセリフが入ってくる感覚が好きだったので残しました。


香月:ぼくは、ドラマ仕立てがあまり上手くないんじゃないかと思った。それと、萌乃とすずかの書き分けがちょっと見えてこなかった。


副島:いや、私はこのキャラクターはっきり分かった。同じ世代の女性をこんなに上手く書き分ける人って、なかなかいないと思った。


香月:ああ、そうですか。


盛多:まったくぼくも副島さんと同意見です。


香月:それと、もうひとつ、優馬はどうして萌乃のほうにはしったのか。そのへんはどう? 書けてますかね?


盛多:萌乃と会ったとき優馬はもう病気になってたんじゃなかったけ?


副島:そうです。


香月:そのへんがちょっと見えてこなかった。


皆田:不知火を見ると良いことがあるって、じゃあ、ふたりにとって良いことって何だったんだろう? 萌乃は、優馬が見たかった不知火って思って八代に行ったんですよね。すずかはふたりをぶん殴ってやろうと思って行った。それが(不知火を)見たことによって何か良いことがあったらいいな、と思ったんですけど。そこが分からない。


荒木:ふたりが出会えたことがラッキーだった。


香月:ふたりがそれぞれ優馬をどのように捉えていたか、それがもうちょっと描かれていれば良かったと思う。これだけの筆力があるんだから、ふたりの口から優馬の描写を語って欲しかったな。


盛多:ラストの萌乃の「漆黒の海に列をなして輝く光の玉を、私たちはただ、見つめていた」って、これは女子が書きがちなモノローグだ。


荒木:ふたりの関係が友情に発展するようなニュアンスが欲しかった。知らないふたりが出会って、この話をとおして、それで何処に落ちつきたかったのかが、分からない。


盛多:「お願い、殴って」というセリフが出てきたときに、ここは良いなと思いました。ここが芝居場かな。ラジオドラマ作るときに、このふたりが出会わなければ、といったところの音楽とか芝居場で持ってこれれば、これは成功するかな、と思いましたね。


香月:不知火が出てくるのは、ぼくは非常に感心したんですけどね。これはラジオでなきゃ、テレビじゃやれないですもんね。


盛多:映像で不知火見ても感動しないと思う。


副島:オーディオドラマのネタとしては最高の材料です。他の候補作にはテレビドラマに置き換えられるものもあるんだけど、これはラジオドラマでしか描けない世界だと思います。


香月:ラジオは頭で(映像を)描くから、だからいいんですよね。非常にきれいだし、トーンがいいですよね、雰囲気がね。


盛多:いちばん大きなのはそこにあります。けっこうレベル高いんで、(最後まで残すか)どうしようかな? と思ってる。



「無音の伴奏」


盛多:すみません、単純に演出の立場で読みました。これは出来ない。ラスト見て、歌ってるぜ、しかもピアノを奏でてるぜと見えた瞬間に、あ、ダメだと思っちゃいました。


副島:出来ないのは分かってます。まず音楽著作権のことから言うと、「愛の讃歌」はすでにパブリックドメインになっていてメロディは使えるんですが、この脚本では越路吹雪版の日本語歌詞を登場人物に歌わせている。作詞は東宝ミュージカルとかも書かれていた岩谷時子さんで、これが使えない。


盛多:JASRAC通して著作権の問題をクリア出来たとしても、ピアノとか歌とかの録音もあって制作は難しい。ピアノを弾ける人を探さなくちゃいけないし、ママさん役の歌って芝居ができる人を探さなくっちゃいけない。おそらく、ピアノや歌は普通のスタジオじゃ出来ないと思うんですよね。そのぶんの段取りが増えれば増えるほど制作費が嵩んで、予算的に厳しい。申し訳ないけど。


皆田:そのへんの制作問題で大賞になれないのは、ちょっと可哀想だな。


副島:それを踏まえたうえでの評価ですが。年上の女性に惹かれる思春期の少年というのと、才能あるのに家の事情で好きな道に進めないという設定が、私個人の思い出と重なって。こういう話に弱いんです。それと、いちばん良かったのは、ラストで年老いたその女性と無理に直接対面させていないところ。ピアノの音でつないでふたりの再会を描いている。こういうところに、涙腺を刺激されるんです。これ、ヘタクソは直接対面させちゃうんです。老いてシワクチャになった掌をさすったり涙こぼしたりといったベタな芝居を書くんだけど、ピアノの音で上品につないだところが良かった。


皆田:ぼくはまず、ママさんが生きていたことに感動しました。喋れなかったのが歌を唄ってるって。てっきり死んでいるものだとばかり思って読んでいたから、どういうオチにするのかなと思ってたら、寝たきりでおむつを換えるって出てきて、びっくり感動しましたよ。


盛多:終わりのほうの「おむつの様子を見てこないと」というセリフが出てきたときに、残酷な時の流れを感じちゃって。


副島:それそれ、そこがいいんです!


盛多:ここけっこう効きますね。


香月:ディテールは非常に斬新だけど、ストーリーの運びがね。大枠はだいたい予想つくんです、箱書きが定番だから。


副島:そういったところを超えて、私は感動させられたんです。ただ、無駄に長いんです。モノローグで綴ってますけど、削れるところはいっぱいある。最初のマネージャーとのやりとりなんか全然要らないし。


皆田:ぼくは冒頭のマネージャーとのやりとりは必要だと思う。どういう設定なのかそこですべて分かるので。


盛多:枚数多いみたいだけど、尺オーバー?


副島:オーバーしてます。さらに、これに音楽が入るから、制作したらもっと長くなります。だから作れない(大賞はない)というのは大前提で、脚本としての評価です。


香月:脳梗塞で右手が駄目になって左手だけで演奏会してるピアニストがいるじゃないですか、その話と被るんだけど。それは構わないのかな? ぼくの場合、それが非常に被ってですね、邪魔しちゃってね。右手が駄目になって一辺治すんですよ、それで一念発起して左だけで一生懸命やって。聴いたことあるけど、ものすごく上手いんです。たいへんな苦労があっただろうなって思って。それがこの話とダブっちゃって、ぼくのなかで邪魔するのね。一般的にそれがいいかどうか? 皆田さんにお伺いしたい。


皆田:これには、その努力した話は出てこないんで……


香月:いいのかな?


皆田:(主人公のピアニストが)原点に戻ったってことだけなんで。


香月:これ、一応この審査会で討議したってことにしておかないといけないですね。



墓参り代行


副島:とても素直に書かれた良作で、主人公の青年に好感を抱きました。でも、素直すぎてストーリーが平凡な印象になった。


盛多:いま副島さんが言った「素直すぎて」というところを、たぶん、ぼくらは評価していると思います。


皆田:これ、タイトルって書いてあるじゃないですか。


盛多:これはない。


副島:タイトルって、ここ(3ページ)に書かれてるのですか? 私もやりますよ、アバンやるとき、ここにタイトルアナウンス入れて欲しいってことで書きます。テロップ出せってことじゃないと思います。


盛多:おれはやんない。ここにタイトルは入れない。


皆田:それも含めて、この作品は映像的だなと思った。洞窟のシーンだとかエメラルドグリーンの海が綺麗だとか、スマホのテレビ電話で遠隔でやりとりとか。


香月:いまスマホの話が出たけど、ぼくは、むしろそっちを評価しているんですよ。どういうことかというと、日常を使ってもこれだけのドラマができるっていう、そういうところを評価してる。切り詰めた15分のドラマを書くとき、みんなすごく凝縮したセリフ書くじゃないですか。これ、あまり凝縮してないですもんね。すーっとはいってきちゃうけど、日常語でもこんなに情緒をだせるんだと、ぼくはそこを買ったんですよね。アプローチが変わったら別の評価が出るのかもわからないけど、それはそれで別の評価もあってもいいと思うけど。


皆田:あと、おとうさんのことをもう少し知りたいと思った。洞窟に行って思い出すんですよね、ここ来たことがあるって。それって何か問題あるんですか? 父親との確執が過去にあって、そこへ行けば誤解が解けたってようなことがあるのかなと思ったんですけど、話の流れのなかで何かを解決するとかがなくて。だた思い出の場所に行ったってだけなのかな。


荒木:おとうさんと別れたときはまだ小学2年生ですよね。その幼い感覚で残っているおとうさんとのいちばん深い思い出を、親族が会ったときとか、おばあさんもいつもその話をしていて、離婚後もそういう話題が出ていたというエピソードがあったんじゃないかと思うんです。そこから、離婚したあとにおとうさんと一緒にいたかったんだけれども選べなかった、嘘をついておかあさんを選んでしまったという後悔を出してきたのが上手いなと思いました。これがなかったら、ありふれた話かも知れない。


盛多:ぼくはそこがいちばん疑問でしたね。なぜこの男の子はおとうさんを選ぶんだろう? この子の世代ってだいたいおかあさんを選ぶんですよ。何故おとうさんを選んだんだろう?


香月:それはぼくも疑問に思った。説明がなかったですもんね。(船から)滑り落ちそうになるのを救ってくれる、その腕の思い出があったでしょうけど、その前に父親を選んでるんですよね。


盛多:肌の感じとか抱きしめる感じというのは、母親に向かうんじゃないかと思いますけど。


香月:そこはちょっと、ぼくも不満だったけれども。


盛多:例えば、母親はこんな酷いやつだった、みたいなのがあったなら別だけど。普通は母親を選ぶんじゃないかって、思いましたね。


荒木:主人公としては、おとうさんはまだ元気に生きているんだろうと思っている、普通の思考の持ち主なんじゃないかな。当時のおかあさんを選ぶ、そういうことも理解できるんだけれども、好き嫌いで選ぶと、おとうさん。


盛多:とすれば、宗介のそうした部分を伏線として張っておく必要があると思う。なるほど、こんな理由でおとうさんを選んだのだと、納得させる何らかの伏線が欲しい。


皆田:洞窟でのやりとりが父親を選んだ理由なのかな? 力強い父親が好きだ、みたいな。


荒木:最終的におとうさんおかあさんを選ぶってことではなくて、自分の気持を言えなかった心残りがあって、最後に「おとうさんは知っていたよ」と解決している。


副島:主人公のなかに、自分が嫌っているという印象をおとうさんに与えていたんじゃないか? というのがあれば、それが生きるんだけど。


盛多:アンチテーゼからテーゼに持ってくるって話なんだけど。作りとして素直だというのは、それが一切なくてここに出てくるというのが、ちょっと分かんないというのは確かに。11ページの宗介モノローグに「スマホの画面に、手を振る笑顔の澄子が写っている」って突然呼び捨ての名前が出てくる。澄子って誰よ?


荒木:おばあちゃん。


副島:最初に皆田さんが言ってたように、このシナリオは完全にテレビ感覚で書かれているから。施設からかかってきた電話で(澄子の名前は)一度出てはいるんだけど、聞いている側の記憶には残っていない。ラジオはこれがあるから怖い。


香月:「墓参り代行」っていうタイトルは良くないですね。タイトルはもう少し跳んでもらいたかった。


盛多:このセリフの書き方をみると、この人はタイトルで跳べないね。


香月:だけど、もう少し別の象徴的な、新しいタイトルはなかったんでしょうかね。


盛多:副島さんが言う素直すぎっていうのは、もう少し練って欲しかったって事ですか?


副島:ドラマって興味と共感じゃないですか。興味を掻き立てるってのは、見る人聞く人の予測を裏切ってくれないとグッと引き込まれない。それで惹きつけておいて、そのあとに共感があって満足させる。それが基本中の基本でしょう。(この作品は)そうしたところが希薄だった。


香月:セリフのタメがないですもんね。あまりにも日常的すぎるから。



どこにでもいる夫婦


副島:サスペンスものとしてものすごく巧く書かれてる。手練手管に秀でているって感じです。


皆田:ふたりとも売れない俳優だったんですよね。健太は売れていって、贅沢して太って不倫やって、それで、むかしの健太は死んだってことですが、香奈っていう奥さんのほうはどう死んだんですかね? これが分からなかった。


盛多:生きていれば人間は何度でも生まれ変われる、というのがテーマとして流れているんですが。例えば(この作品を)作るとした場合に、25歳と55歳とで声質を変えると(同一人物であることが)分からなくなる。歳とったからといってそんなに分からなくなるものなの? 現実的にこれを制作することを考えたときに、聞く人にこれ(権藤と健太が同一人物であること)分かるのかな?


香月:一度聞いても、ぜんぜん分かんない。すごく難しい。というのは、頭で書いてるからね、この作者は。メタファー力というか暗喩力というか、それは凄い。簡単に言うと、男も女も歳とってくると変わるという、過去の自分を殺して通俗的な人間に成り下がっていくという認識を持って人生を歩むのだけれど、それを暗喩で描いている。その力は凄いと思った。トーンがずっと気怠いでしょ、この気怠いトーンというのがなかなか良いんです。


皆田:読んでいて鬱陶しくなった。健太を殺した、あんたが殺したって、何度も何度も出てきて。最初はなんでそんなことになったんだろうって読みすすめるんだけど、実際は物理的に殺したってわけではなくて、(心境の)変化だったわけで。この女、狂ってるのかなって。


副島:そう、狂ってるんです。夫が有名になって外に女つくって家に寄り付かなくなったみたいなこと言ってるけど、それは主人公の主観で書かれたセリフであって、本当はそうじゃないかも知れない。けど、彼女にはそのように見えている、というふうに私は解釈したんですけどね。


皆田:そうなってしまったので、むかしの香奈は死んだってことに?


副島:私が想像するに、この女のほうがスターになりたいという自己顕示欲が強くて、だけど夫のほうが有名になっちゃって、そこに羨望とか妬みが生じて、そういうのが募り募って壊れていったんじゃないのかな。「スター誕生」を男女逆にした人物関係になるけど。


皆田:いまの原稿のままだと、彼女のどこの部分が死んだのか分からない。


副島:トイレを汚しているって家政婦さんに愚痴られるとか、謎解きみたいなミステリー要素が強いじゃないですか。それよりも、女の狂っていく過程に軸を置いて話を構築していたら、ドラマに深みが出て良かったんじゃないかな。これ、ちょっとエンタメに傾いてますもんね。サスペンスものとしての作りは、とても巧いです。


香月:おそらく作者は女性ですよ。女性は極めて彫り深く描かれているけど、男はパターンなんです。


副島:最初に読んだときはそう思った。有名になったから贅沢して不倫するとか、すごく短絡的、マンガチックだなあって。


香月:作者の主張というのは、タイトルにもあるように「どこにでもいる夫婦」でしょう。だから、環境は違っていても、多かれ少なかれ夫婦というのはみんなこうなんですよってことでしょう。これはひとつの例であって、設定は違っていてもみんなこうなんだよ、ってことを言ってる。


盛多:この女は狂っているんだろうと追っかけて読むんだけど、実を言うとなんだこいつらって何処にでもいる夫婦じゃん、というのが見えてくるというのは確かにあるんですが。それっておもしろいのかな?


皆田:トイレットペーパーとかおもしろいですけど、やっぱり映像的かなって気もしますね。


荒木:後味が苦手というか、ちょっと悪い感じがします。


副島:ここ(最終選考作品のなか)で比較しちゃうから、この作品だけものすごく嫌な感じがするんです。このあと(審査する作品は)明るいのが残ってますから。


盛多:じゃ、次に進みましょうか。



ほてぱき


副島:次は「ほてぱき」。


盛多:うわぁー、どうしよう?


副島:これ、評価するの難しいですよ。


香月:この作品は審査員に対する挑戦だと思います。これは、やっぱり一線を超えなければいけないですよ、審査員の方も。個人的な意見を言わせてもらえれば、ぼくは大好きですね。


盛多:正直言って、ぼくもまったくそのとおりです。はじめのところで、「ダンボール」「ルパン」「ンジャメナ」「ナン」「ンゴロンゴロ保全地域」「キリン」。ここすげー面白かった。


香月:しりとりという具体的なものもあるけれど、それ以前に面白みがある。


副島:並べられた単語が、その言葉自体がたまらなく可笑しい。


皆田:しりとりは、最後に「おとうさん」って言わせてるのが上手だなって思って。


盛多:そこは計算尽くですよ。


皆田:最後に客を乗せるじゃないですか、その土佐の客が逆読みして「ぱきほて」とか。だから余計に分からなくなって。分からないうちに分からない話がまた乗っかってる。最後の客は要らなかったんじゃないかと思うんですが。


盛多:要らないかも知れないけど、「おとうさん」で終わったら普通じゃん。


副島:それと、親子での閉じられた世界が、第三者が入ったことによって「ほてぱき」が共有されて、(ドラマ世界の)広がりになっている。

盛多:「お客さん。今ぱきほてって」「言ってません。言いません」って、これは芝居が難しい。音というのは流れていくんで、客が「ほてぱき」と言ったのか「ぱきほて」と言ったのか、このセリフをきちんと残さないと「言ってません」が効いてこない。


皆田:「ほてぱき」ってなに? っていうのをずーっと考えていたところに、輪をかけて、え、土佐にもあるの? って。


香月:土佐って具体名出したのはまずかったね。


皆田:話は話で良かったけど、ポカーンがまた大きく残っちゃう。最後に客が入るのはいいんですけど、もう「ほてぱき」じゃなくてもいいじゃないかって。


盛多:2ページの「クマタカか、クマコウか?」って、これ誰なんだよ。

皆田:高校でしょ、クマタカが熊本高校で、クマコウが熊本工業高校。


盛多:え、高校?

副島:だって、その年頃の女の子じゃないですか。だから、彼氏っていったら何処の学校の生徒だって。


盛多:なるほど、そういうことか。


副島:細かいところまで調べてるでしょ。


盛多:なんか、すごいムカつく。それと、オランダ人の名前はペロなのかテロなのか。どっちなんだよ。


香月:あれは面白かった。なかなかおとうさんが名前覚えきれない。


副島:本当は知ってるんだけど、絶対口にしない、したくないという。


香月:とぼけてるんですよね。


盛多:セリフの強弱のつけ方が絶妙で、例えば「オランダ人のパパは、ベランダでチューリップ育てたり、カステラ買ってきたり」って。


副島:それ、「いまでは長崎のイメージ」って。面白いよね。


香月:人物の描き方が上手いと思う。家族4人登場するけど、4人とも性格がはっきり出ている。新しいおとうさんやおかあさんのこともよく分かるじゃないですか。


盛多:タクシーの中の父親と娘の会話は秀逸だと思います。「四角い方がほてで、丸い方がぱき」「ほてとぱきに分かれるんだ。じゃあ。こうしたらぱきほて?」「栞。それはダメだ。戦争になる」って。ここで「戦争になる」ってセリフが出てくるのが、面白れぇなーと思ったんですが。


香月:これはラジオでしかできない。テレビじゃ絶対できない世界です。


盛多:問題は、ぽてぱきか。


皆田:そうなんですよ。


盛多:困っちゃうんですよ。


香月:それを、審査員が許すか許さないかですよ。


盛多:在るものとして考えちゃうんですよ。貝のように組み合わせて、世界にひとつしかない、なにこれとか思いながら。


香月:普通これ読んだら貝合せを連想しますよね。だけど、片方が丸くて片方が四角で、それでくっつくわけでしょ。だからなんだろうって、意味分かんないですね。


皆田:食い物じゃないんですよね。美味そうとか粘り気がグミみたいとか言ってるけど。


副島:「ほて」と「ぱき」は二つで一つ、組み合わせは世界で一つしかないというのが、親子のつながりって分かる。これを具体的に、どんなカタチでとか言う人はいないと思うけど。


香月:ぼくは、「ほてぱき」はレーゼドラマ、読むドラマの感じ。読んだらすごく良いんですけど、これを演じたらすごく難しい。大賞で配信するときは「ほてぱき」に関する疑問をどこかで解いてやらなきゃいけないね。


副島:その、解いてやらなきゃいけないというのはどういう意味ですか?


香月:「ほてぱき」というのが分からないでしょ。


副島:そこが面白いじゃないですか。


香月:ぼくも面白いと思うけど、それを許さない人もいると思うんですよね。


副島:どういう人?


香月:だから、ドラマとしては成立しないんじゃないかって。


副島:そんな人はいないと思いますよ。これが架空のモノで、親子のメタファーというのは分かるんじゃないですか?


香月:ぼくはいいと思うんですよ、でもそれを許さないって人もいるんじゃないかなって。


副島:それはいないと思いますよ、これ、分かりますもの。


香月:分かるんだったら、ぼくはいいと思うけど。いちばん大好きな作品だし、分からないところが良いと思ってるんですね、本当は。つまり、想像上の動物で……


副島:動物なんですか?


皆田:なんかネバーッとしてグミとガムの中間ぐらいの柔らかさがあって。


副島:柔らかさがあるんですよね。


皆田:具体的に書いてるんですよ。


香月:動物か植物かわからないけど、「ほてぱき」って生き物があるわけですね。


副島:生き物なのかなあ?


皆田:生き物って書いてましたよ。


盛多:これ単純に、書いた作家に会いたい。


皆田:ポカーンとハテナマークが浮いたまんまで。物語としてなんか解決してもらわないと。親子のってのを書いてあれば考えられるんでしょうけど。それを打ち消すように具体的にねばーとか美味しそうとか……


副島:食べたら死ぬんですよ。


皆田:そう、死ぬんです。そんなものをお土産で渡すんです。意味分かんない。もっと親子の絆というのを想像させる表現をすりゃいいのに、具体的に書いちゃってるから。これ何処で売ってるんだろうと思うし、食ったら死ぬものを売ってるのかって思うし、父親がそういうものを娘にプレゼントするのかって思うし、そこに何か意味があるのかな。


副島:そういうところに意味を求める人がいるかもってことですか。


皆田:ぼくは求めるよ。


副島:クエンティン・タランティーノの「パルプ・フィクション」で、なんか凄いのがアタッシュケースに入っていて、それを奪い合って殺し合いやってるんだけど、開けると強烈に光ってる。だけどそれが何かは分からない。それと同じですよ。ヒッチコック映画でいうところのマクガフィン。なんか分かんないけど凄いもの。なんか分かんないけど温かくて良いもの。それが「ほてぱき」だ。


盛多:皆田さんの意見としては、「ほてぱき」をキチンと説明しないといけないと。


皆田:そうです。キチンと説明っていうか、親子の絆を象徴するものであれば、具体的な表現はないほうが良かった。想像させといたほうが良かったんじゃないだろうかって。


香月:南のシナリオ大賞はネット配信で何回でも聞けるでしょ。そういった意味で普通の放送とは違うので、そのへんの疑問は何度も聞いて自己解決してもらえるんじゃない。これが大賞になったら評判になると思う。



月の石の指輪


盛多:料理を作りながらスピーカーで会話をしているというのがクロスしていく、ここの入りは楽しく

読めました。そこにリポーターの声が入ってくるというシチュエーションは面白い。


皆田:ふたりの会話がポンポンいって、面白いなーと思った。


盛多:最後のどんでん返しの、月の石の指輪を贈るからって、これ効くのかな?


皆田:宇宙センターで働いてるって電話で言ってたから、発射のスタッフとかで、そこにいるんだろうと思って読んでたら、あれ、ひょっとしてって……最後はおぉ、やるねえ! って。プロポーズの話なんですよね。ちっちゃい頃に、月の石の指輪をもらったら結婚してあげるって言われたんで、それを実現しようって。


副島:ロマンチックな話なんです。


荒木:月の石の指輪っていうところが、ちょっと引っかかる。ロケットに乗っているところからのプロポーズですよね。こんなのアリなのかって。


盛多:それ否定したらこの物語全部崩れちゃう。でも、宇宙飛行士って飛んでいくとき雁字がらめに縛られているじゃないですか、その状態でどうやって話してるんだろう。


荒木:どうせなら(月に)行ってしまってからやった方が良かったような気がする。これから降りて(石を)採りに行く、それを中継しながらのプロポーズのほうが。


副島:おれは「ヤダヤダヤダ」って駄々をこねるのが許せない。こんな重要なミッションに参加している男が、こういう幼稚な態度をとるなんてありえないでしょう。難しい試験を突破して厳しい訓練とか受けてきたスペースマンなんだから、それにふさわしいセリフとか考え方があるじゃないの。これじゃただの駄々っ子だよ。


盛多:3年間帰ってこられないというのを前提に乗ってるんで、3年帰れないなら言うぞ俺、みたいな。


香月:ぼくはこれをドラマじゃなくてコントと理解してるんですけどね。コントとしてはものすごく面白い。


副島:登場人物が3人なんですけど、台所とロケットとリポーターとそれぞれ場所を3つ作らなきゃいけないんで、音は面白いと思います。


盛多:ロケットの打ち上げとか、音的には面白いと思う。ただ、英語で怒号がとんでくるとか(収録を)どうしようかと思っちゃう。あと、ふたりに性格の差別をつけないといけないんだけど。このセリフの流れ方からすると、ふたりは一緒で、焦っていって返しちゃうっていうパターンの作り方というのは、なんか、今までどおりかな。


副島:漫才のボケ・ツッコミでしょ。


盛多:そうそう、そのパターン。



最終審査再投票


盛多:ここで5分間の休憩をとって、推したい作品をもう一度挙げてもらっていいですか。それで最終を決めたいとおもいます。


香月:どれとどれが残っていますか?


副島:「どこにでもいる夫婦」「墓参り代行」「ほてぱき」「月の石の指輪」「不知火」「無音の伴奏」、6篇です。


盛多:投票はひとり3票、6篇のうちの3作品を選んでください。


「ほてぱき」5票

「無音の伴奏」3票

「不知火」3票

「月の石の指輪」3票

「墓参り代行」1票

「どこにでもいる夫婦」0票


盛多:1票の「墓参り代行」は落としていいですか?


香月:はい。


盛多:票数からいって、大賞は「ほてぱき」になりますが。


副島:「ほてぱき」を大賞に選ぶというのは、南のシナリオ大賞14回の成果ですよ。だってこんなものを選ぶ、こんなものって言っちゃ失礼だけど、これを選ぶコンクールなんて他にないですよ。


盛多:反対意見はない?


荒木:このドラマを聞いてみたいです。どう出来上がるか楽しみです。


香月:ぼくは「ほてぱき」が大賞なら、今回は言うことなし。


盛多:いちおう「ほてぱき」を大賞としておきましょう。あと、優秀賞を2篇選ぶことになりますが、3票入ってる「月の石の指輪」か「不知火」か「無音の伴奏」か。


香月:3本から1本落とすのね。


副島:去年は優秀賞は3篇でした。応募要項では大賞1篇、優秀賞2篇で募集かけてますけど、去年は例外的に優秀賞を3作品選出して、大賞とあわせて4本のシナリオを公開してます。これが、今回応募

が増えたことの要因かも知れませんが、4本ともに例年の2倍以上読まれているんですよ。今年もそれでいっちゃったらどうです?


盛多:残っている3本を優秀賞にってこと?


香月:ぼくはそれに賛成です。この3本のうち1本落とすというのは辛いものがある。


副島:落としたい作品ないですもんね。


盛多:では、大賞を「ほてぱき」、優秀賞を「無音の伴奏」「不知火」「月の石の指輪」に決定します。


皆田:去年の大賞が長距離バスの中の会話で、今年がタクシーの会話、南のシナリオってそういう傾向ですかー、みたいな。


副島:それは違う。そういうことではない、と太文字で書いておきます。


第14回二次審査通過作品

第14回南のシナリオ大賞 二次審査通過作品


二次審査員の寸評(応募順)



どこにでもいる夫婦


いくつかの事象が絡み、ノアール的な雰囲気が漂っている。いくつかの事象は重層的に動き出し、不思議な物語となっている。作品に出てくる夫婦の行動は過剰にも思えるが、それぞれの気持ちは「どこにでもいる夫婦」のそれがよく表現されている。妻自身が精神的な病に侵されていることに気づいているのかいないのか、ラストに余韻が残っているのもいい。



阿蘇に流星


少年の成長物語と阿蘇の空気感が相まってさわやかな印象。その分、最後の二つのセリフが日常的すぎて、物足りなく感じた。忍、一馬、ゼロの三者それぞれにドラマがある設定なので、もっと馬の「ゼロ」の存在感があると関係性が深まりそう。



蘇った男


家電製品や家財道具、はては履歴書まで男に話しかけてくる。それぞれのモノが上から言ってるのが良いですね。この設定も新しくはないが、セリフのセンスが良いので、読みやすいし、付喪神を無視した感じも良い。南のシナリオ応募作にほとんど見ないタイプの作品だが、サラッと読めて、なんか良いなと思える作品。この「なんか良いと思える」作品て、案外少ない。



バースデイ


設定自体に目新しさは無いが、工夫は見える。最初はもっともらしく一般論を述べていた弟が、次第に子供っぽくなっていくのもその一つか。終盤に気になるセリフがあって、それもこの作品を残した理由。時々、自分の娘に、こんなオヤジの元に生まれて、かわいそうな子やと思うことがあるが、ひょっとして、自ら選んでこのオヤジの元に生まれたのかもと思うと、もうちょっと真面目に仕事せんといかんなあと、私に思わせたのも、残した理由の一つ。



墓参り代行


人物の関係が会話の中で分かりやすく整理されている。仕事で他人の墓参りをするときは心を開放して話せるが、いざ父の墓参りに行くとうまく話せない、そして話したかった言葉とは……という展開が好印象だった。



ほてぱき


ダントツで面白い! そして泣ける! ほてぱき最高!



ご祝儀の相場って?


女性の勢いを出し切った作品。男に逃げられた女が結婚式で復讐する。痛快な物語だ。



青いさくらは散りぬるを


書き慣れた筆運びできれいにまとまった正統派の作品です。廃止になった列車の使い方など巧みです。ただきれいにまとまりすぎて、作品が小さく納まって、面白みに欠ける印象です。Mの言葉が、主人公の性格もあるのでしょうが、固すぎるように感じます。



月の石の指輪


月にいくロケットからのプロポーズ。ダイヤモンドよりも月の石。なんだかロマンチック作品だ。男女二人の電話ごしの会話だけでどんどん展開していくテンポが良い。冷やし中華を作る台所と、月に飛び立つロケットの対比、そして男女のキャラクターの対比が面白い。楽しかったけれど、ドラマというよりコント的な印象が残る。



いつか、きっと


「湧水」を主人公にして、その父母がいて、娘に恋をする。昔話のような設定ですが、かみ合わない互いの台詞の作り方も上手く面白い作品でした。時々、説明台詞が出てきて残念。山場の、石を転がして娘を助けるシーンをもう一工夫して欲しかった。



不知火


地名でも聞くし、個人的には仕事でも行く土地だが、この名前だけで関心を引く。まず、同じ場面で移動もなく、登場人物も2名のみというのが個人的に好きな設定。応募作に恋愛ものは多く、パターン化されたものがほとんどだが、この作品は別格。セリフもこなれていて二人の微妙な距離感がしっかり伝わってくる。文体や全体の物悲しい雰囲気、モヤモヤした終わり方からも、私は、質の高いハードボイルド作品と位置付けたい。しかし、この男の方は、ただの自己満足で好き勝手して、ろくでもない輩だと思うのは、私だけかな。



無音の伴奏


物語性があって、魅力的な作品だと思いました。ただ、書式が正確でなく、正しく行を空けると規定の枚数を超えてしまうのではないでしょうか? 十分削れる台詞もあるので、推敲すると、規定内のいい作品になると思います。一つ、高校生の男の子の台詞をもっと活き活きと描けたら更によくなると思います。



グッドラック


作者名が書かれていましたが、審査しました。重くなりがちなテーマを軽やかにまとめたところに好感。対等な目線で「頑張れ」ではなく、「グッドラック!」のラストがいい。



以上、13編

第14回一次審査通過作品

第14回南のシナリオ大賞 一次審査通過作品


一次審査員の寸評(応募順)



山小屋の怪


ロープウエイ最終に間に合わなかった者が登山する話。が、その二人は亡霊だったというオチ。



飛梅2099


初めは現代の話だと思って読み進んでいたら、火星の話だと知り、驚いた。設定が細かく練ってあり良かった。



アイラブ マッキー


”withコロナ”時代のアイデアを上手くまとめた作品である。明るく前向きなマッキーと主人公の掛け合いセリフが楽しい。



ゆたかとお豊


昭和五十年代のストリップ劇場を舞台としたメロドラマ。昭和の流行歌をふんだんに盛り込み(音楽著作権の問題もあるにはあるが、それはさておき)まるで歌謡ショーのような構成。題材・人物・ストーリー・セリフに時代の匂いが満ちている。お豊はフェリーニのジェルソミーナかカビリアか? 心情を吐露するセリフが素直でいじらしい。個人的な感想になるけど、神代辰巳「一条さゆり濡れた欲情」など往年のロマンポルノを思い出しながら、楽しく読ませていただいた。



待ち合わせ


物語の流れがシンプルでわかりやすかったです。五島と豊洲の魚市場と人間関係をつなげたところも魅力的でした。



疫病神と守り神


おじいを気にかけ、沖縄に帰省する孫。だが、孫にはタチの悪い娘(コロナウイルス)が張り付いていた。おじいを守るため、シーサーの精霊達が奮闘する。コロナを擬人化した点が面白い。沖縄の方言が、更に脚本に面白みを増している。三線の音色も心地よい。



はてるま


夢をきっかけに、二年間に亡くなった妻の生まれ故郷「波照間島」に向かう80歳の主人公。主人公が非常に明るく行動的だからか、テンポよく話が進んでいく。遺影があの世のパスポートになっている設定や、ラストに夢の女性(妻)が再度現れるところは少し分かりづからった。



どこにでもいる夫婦


書き慣れている感じがした。モノローグの使い方、「殺した」という設定、トイレットペーパーの使い方などが秀逸だった。



とあるリクルート


登場人物は主人公と泥棒の鉄のほぼ二人だけだが、セリフの掛け合いがテンポよく楽しい。ラストでの介護士の登場やセリフはちょっと分かりづらい。それと妙に「棒」という言葉にこだわっているので、「棒」にもオチがほしかった。



溟海の声


南の海、ダイビング、島の伝統行事というシチュエーションがいいです。短いストーリーでも起承転結が明快で、息を飲むアクシデントがあり、主人公の成長もあります。

ファンファーレ離婚してまもないふたり。復縁を応援したくなるふたりの台詞とストーリー展開が巧み。手なれた印象はあるが、登場人物にエールをおくりたくなる作品。以上。



幸福の神事


タイトルの神事という言葉に惹かれました。母親が山笠を好きだった理由。現代の家族の形態の子ども心のさみしさに共感させられるものでした。



海からの約束


舞台は八重山。まるでジブリ作品を思わせるようなファンタジーだが、人魚伝説・風土記といった言葉が作品全体に落ち着きを与えている。人魚の赤ちゃんを見つけた少年を主人公に話が展開し感動的なラストを迎えるが、最後のセリフが亡くなったおじいちゃんというのはもったいない。主人公が途中で交代したような印象を受ける。



すけすけののろい


会話の流れが自然でテンポの良い家族ドラマ。タイトルがフックとして効いていて、ラストのもうひと笑いに悔しいがダメ押しされた。



55年のありがとう


ストーリーはなかなかありえない内容なので選考に残る可能性は低い。しかし、これは作者の実体験だろうか、最初の二人の会話からちゃんと台所の匂いがした。



岩戸さんのお怒り


ストーリー展開…手がナイフとフォークになり、スプーンになるというのも面白かった。ラジオドラマには最適かもしれないと思ったことです。



壱岐なポルトゲー


*二人の間もうひとネタ出来事が欲しい

*壱岐の情報がもう少し欲しい



夏空の大漁旗


海で遭難した漁師の夫を待つ美咲。そんな折、美咲の息子が漁師を志す。大反対の美咲。ある日、息子は大シケの海へ一人で船を出すが…。長崎弁のセリフが臨場感を増し、どんどん引き込まれていく。夫が亡くなった海の上で大漁旗を掲げるシーンは胸が熱くなる。



時に溶ける


軍艦島という題材に引きつけられます。コロナ禍にあって、大学で軍艦島を保護できるような建築法をスムーズに学べず、ただ時間が無駄に過ぎていくことへジレンマを覚える武藏。世界遺産だから保存されて、過疎地の村だったら消滅してもいいのか? 彼女の問いが刺さります。



熊オトコ


物語の運び方がうまく評価につながった。ただし、終盤に主人公の男の子と同級生の心が通じ合う展開があるが、物語の中心が主人公と熊オトコの会話であるため、やや説得力に欠けると感じた。主人公と

熊オトコの会話の中に同級生の話題を持ち込むともっと重厚感が増すように思われる。



ハニーとダーリン


樹と話せる少年とのファンタジー。いまのこどもにもその能力、自然と共生するちからがあることを、設定と物語に工夫を凝らしまとめている。以上。



ごぼ天うどん食べた?


過干渉気味な人情みある親子と、孤独な少年が、お腹とこころを満たしていく物語に、温かい気持ちになります。ラジオドラマで、コテコテの博多弁を喋るお父さんを落ち着きがないコメディタッチに演出すると面白いだろうなと思います。



あの日、いえなかったこと


構成のしっかりした作品で、主要人物二人の出会いから別れまでがテンポよく展開されている。感情の高まりが伝わってくる台詞がもう少しほしいところ。



砂に埋もれて


休暇を利用して指宿を訪れるカップル。そこで男性は女性にプロポーズするつもりだったが、事件が起き……。大人の恋愛ドラマとして起承転結がよく整っている。同じ業界なのに、言わないことはバレていないと思っている男性、知っていながらSNSでわざと嫌味なつぶやきをする女性。どちらも馬鹿だけど、大人だからこそ素直になれない男女の言い合いのセリフが身につまされる。また、事件を境にプライベート(恋愛)と仕事のスイッチを切り替えていく女性の描き方も上手い。



阿蘇に流星


シチュエーションが良い。馬と少年、広大な阿蘇にある乗馬クラブ。登場人物が男性ばかりというのが、少し気になったがそれぞれ個性があり、逆にそれも面白いと思った。ラストに向かうプロセスの中で、忍がゼロに乗って乗馬の試験のための練習風景は、どんな音で制作されるのか、期待してしまうシナリオ。ただちょっと欲を言えば、ゼロと忍のふれあいが、もう少し見たい気がした。



趣味は言えない


この主人公の「死に場所探し」の設定はいらなかった。もったいない。稚拙だとは思うが、もう少しストーリーの作り方勉強したら面白い話が書ける!と伝えたくて評価しました。



蘇った男


生きることに絶望した男の耳に奇妙な声が聞こえてくる。声の主は、ベッドや冷蔵庫など。シュールで不思議な話だが、セリフが上手く、どんどん先が読みたくなる。『希望』と話をするあたりからの展開は勢いが増し、ラストには男を応援したくなる。



そこ吹く運命


世界中を吹き回って旅をしている「風」を主人公としたフェアリーテール。セーリング部の高校生を応援する(南)風が可愛い。若者の躍動感が伝わってくるストーリーは爽やかで好感度高い。祖母の死に不自然な作為が感じられたのと、魅力に乏しいタイトルがマイナスポイント。



バースデイ


現実離れした設定だが、お母さんのお腹の中にいる弟と、そのお兄ちゃんになる男の子とのテンポある会話がおもしろい。兄は、生まれる前の弟と神社の社の中で出会う。一体どんな姿なのかと想像しながら読み進めたが、シナリオには「謎の男」とあるだけ。この男の声をどのようにするかで作品がおもしろくなるかもしれない。登場する地名が「九州の田舎」というひと言だけなので、もう少し具体的な設定をしてもらえると嬉しい。



一緒の印


宮崎県の天安河原という場所を上手に取り入れている作品。両親を亡くして心を閉ざしていた少年が、周囲の想いに触れてようやく泣けるシーンはラストを感動的にしている。ただ、登場人物の相関図が少々分かりにくい。宮崎の家は誰の家なのか。主人公にとって、彼らは何者なのか。あらすじを読めば理解できるが、リスナーはあらすじを知らない。初めてドラマを聞いたリスナーが一発で理解できるか、その点は重要だと思う。



奴隷が踊る


ありふれた大家族。しかし実は8人兄弟の長女に、両親、特に母親が言葉巧みに、弟妹の面倒、家事、を押し付けていた。暴力を振るうでもない、モラハラで心を切り刻むでもない、ただ家族という錦のみ旗のもと、長女を家族にしばりつけているのだ。これも立派なハラスメントだ。自由になりたい、家を出たいと訴える長女を説得する母親。しかし話している途中、母親がまた妊娠していることに気がつく長女。でも母親は言葉巧みにすり抜ける。本心がわかるラストだが、この物語のような母娘のような関係は意外に多い気がする。主人公にエールを送りたい作品であった。タイトルは再考?



違和感症候群


日常のあるある違和感を「症候群」としてくくっていて、共感が持てる内容。九州の地名や伝統楽器を上手に取り入れていて、話の展開と会話がおもしろい。工夫すべき点は、場面転換のSE。マウスのクリック音や走る車の車内、といったものは耳で聞いただけでは分かりにくい。SEはラジオドラマの難しさでもあり、おもしろみでもある。セリフ同様に熟考されることをのぞむ。



青春の死体


*ありえない話だけど、青春の1ページを切り取った共感を呼ぶ一篇

*もう少し丁寧に書いてほしい



麦酒の味


冒頭のモノローグが良かった。言葉の使い方がいい。ストーリーにもう少しひねりがあると、更に良くなる。



墓参り代行


別れて暮らした父親の墓参りを奇妙なめぐりあわせで代行することになった息子。舞台が長崎というだけで、物語になる。父親と暮らしたかったという男の子。その優しい気持ちは父親には伝わっていたという祖母の言葉に報われる。



ほてぱき


この作品が私が読んだ中では一番です。出てる作品が多いようでしたら、この作品だけにしてもらっていいです。「ほてぱき」で検索させられました。私の負けです。会話が秀逸でありえないものを信じさせる不思議な魅力があります。



来年の虹


会話のリズムが心地いい。バケツが刻むビートがパーカッションの音に変化していくところなどにオーディオドラマとしての音の表現にもこだわりを感じる。



ご祝儀の相場って?


*男の馬鹿さと女性の性

*話が分かりやすいというのがいいのか悪いのか…。



青いさくらは散りぬるを


昇子はいつのまにか別れた夫とともに寝台特急『さくら』に乗っていた。夫を傷つけた過去を悔やむ昇子だったが、夫は昇子に別れを告げて去っていく。作者の力量がうかがえる切ない物語。別れた夫からの伝言を受けとるラストシーンは涙を誘う。方言の部分はなるべく方言で書いてもらえると、更に感情移入しやすくなる。



月の石の指輪


冷蔵庫に残っている食材で冷やし中華を作ろうとしているところへ、幼馴染の男から電話がかかってきたので、スピーカーホンに切り替え、適当に相手しながら料理を続ける。テレビでは月ロケット打ち上げの実況が生放送されている。「給料3ヶ月分のダイヤモンド」で男が狼狽えたりするくだりが浅い。「ヤダヤダヤダ!」はないよ。人物の性格(と職業)をガッチリ作ったうえで、セリフを吟味してほしかった。とは言え、アイディアをよく熟成して電話だけの場面に落とし込んだところは巧い。上等ラブコメ。



宇宙からの暇つぶし


宇宙で遭難中の女性宇宙飛行士と偶然、通信できてしまった通信マニアのお話。宇宙での遭難という緊迫感のある設定ではあるが、コミカルな展開とほのぼのとした台詞が楽しい作品となっている。



桜の火傷の痕


*「2番目」の父親、という点が面白い



つれづれなるままに


高校から30年来の親友が早世した。昨日病室でいつものように雑談したのに。訃報をしり、友人との死別をなっとくする主人公。そこには、死を得心できる友人関係があった。喪失感と充実感をかかえた主人公のうしろ姿がうかぶようだ。以上。



いつか、きっと


湧水の精が人間に恋をするファンタジー。着眼点が面白いと思った。タイトルの「いつか、きっと」の意味は何だろうと、読み進めた。結局、湧水の精道夫が、人間恵美に失恋して、すべての湧水の源である両親から独立し、新たに別の湧水を作り独立するのだが、失恋した人間にいつかきっと、どこかにある僕を(湧水)をみつけてほしい。そんな希望のこもったタイトルであった。それにしても、道夫と恵美のすれ違う会話が面白く、特に破綻もなく読めた。水の音がどう表現されるのか楽しみな作品。



プラネタリウム、焦がれて焦げて


会話のぎこちなさ拙さが、「なりたい人になりきってプラネタリウムでデートする」という高校生男女二人の関係性にうまくはまり魅力的である。独特なセリフ回しが作品に独自の色合いを添え、この作家にしか表現できないであろう奥行のあるドラマとなっている。



ネコが鳴く


会話のテンポが良かった。また、主人公の葛藤も良く書けていた。



不知火


雰囲気がいいな。そして登場人物の会話がリアルでどうしようもなく切ない。本当に見られるかどうか分からない蜃気楼。大切な男性を失って、その男性が生前に見たがっていた不知火を見ようとやってくる二人の女性。しかも二人の女性は同じ男性のことを想い、偶然出会い、くらがりの中で会話を交わし……。こんな偶然あるのだろうかと思いつつも、あるのかもしれないと思ってしまう。そしてラストで不知火という幻想的な光景が人間の生と死、あらゆる感情を洗い流していくようで、圧巻。



カニ食べに行こう


ストーリーは破綻してない。最後の「はあ」の「何言ってんだこの人」感がただのありがちな感動ものにしてなくていい。ただパンチまではない。



無音の伴奏


恋心を抱く少年とバーのママ。平凡な物語だが、底流に少年期特有の心情と女性観がながれ、オーディオドラマで聴いてみたくなる作品。以上。



カナリヤ


コロナ版カフカの「変身」。評価が難しいので上の方の判断を仰ぎたい作品。



グッドラック


場面が一場で、ラジオの実況中継のような、リアルタイムドラマであった。引きこもりの少年と担任教師。ありふれた設定だが、善意の押し付けではない教師のキャラに好感が持てた。暗い話題になりがちな引きこもり問題だが、全編を通して明るく会話がすすむ。これは、やはり教師のキャラ設定が成功しているのだと思う。15分の中に、あれこれ入れず、一場面に絞ったのは、良かった。シリーズのラジオドラマにすると、面白いとも思う。



博多ちゃんぽんの音色


自分のルーツを辿る男と、路線バスで乗り合わせた少年との物語。男のモノローグが妙に面白い。意欲的にいろいろな音が取り入れられているオーディオドラマ。



以上、52編


大賞 「ほてぱき」竹田 行人


大賞 「ほてぱき」竹田 行人 (東京都)
大賞 「ほてぱき」竹田 行人

受賞者のことば

竹田 行人 (東京都)


この度は「ほてぱき」を大賞に選んでいただき、ありがとうございます。


この作品は、世にも奇妙な物語の一つ「ズンドコベロンチョ」が元になっています。 本家(?)では最後まで「そのもの」を画面に写さないことが大事な要素になっているのですが、ラジオドラマなら登場人物がたとえ「そのもの」を手にしていてもリスナーには見えず、同じ効果が出せるのではないか。


そんな思い付きから生まれました。


そして、せっかくなのでこの作品の陰の主役である、熊本名物「ほてぱき」についてもいろいろとお話したいのですが、残念ながら私も「そのもの」を見たことがありません。 でも、持っている人は幸せになれるそうなので、みなさんもぜひ探してみてください。 案外近くにあるかもしれません。


最後にこの場をお借りして、常日頃から温かく見守ってくれている家族や仲間、お世話になった先生方に感謝を述べたいと思います。


ほんとうにありがとうございます。



「ほてぱき」 あらすじ


親子はフクザツでややこしくて愛おしい。


熊本は東京、大阪、名古屋などの大都市圏を除くと最も渋滞が多い都市であるそうな。

栞(17)が空港に向かうために乗ったタクシーも例外なく渋滞に巻き込まれている。


タクシーを運転する松本(45)は8年前に離婚したきり会っていなかった栞の父親。

栞の母が再婚したことをきっかけに、栞は家族とともに海外に移住することになる。


栞の母と新しい父親はまだ学校のあった栞を置いてひと足先に東京観光に向かっている。

それはもう簡単に会えなくなる栞と松本を2人きりにするために栞の母が考えたこと。


松本は栞に餞別を渡す。餞別は「ほてぱき」。

「ほてぱき」。見たことも聞いたこともない。

「ほてぱき」とは何か?「ほて」と「ぱき」の2つで1つ。カラーが豊富。すごく伸びる。なんだ? わからない「ほてぱき」。


優秀賞 「無音の伴奏」 境田 博美


優秀賞 「無音の伴奏」 境田博美(千葉県)
優秀賞 「無音の伴奏」 境田博美

賞者のことば

境田 博美 (千葉県)


優秀賞、ありがとうございます。


一次選考の講評で、「平凡な作品だが…」とコメントされていたので、「あ、これは二次で落ちるな」と早々に諦めていました。二次選考でも、書式が正しくなかったようなので、本来、危かったですね。寛容なご対応、感謝します。(ト書きと台詞との文字空けが無かった件ですよね? 普段、映像用のシナリオばかり書いているので、その体裁で書いてしまいました。以後、ラジオの書式を改めて勉強します)



ラジオのシナリオはこれまでに5本くらいしか書いたことがなく、「ラジオならではの書き方があるのだろうけど、私にはまだわかってないな」と思っていたのですが、一次選考の「オーディオドラマで聴いてみたくなる作品」というコメントは、嬉しかったです。あまり小難しいことは考えず、まずは自分が耳で聴きたい物語を書いてみればいいのかもしれない、と。今後、もう少し気楽に自由にラジオドラマに挑戦できそうです。



「無音の伴奏」 あらすじ


老ピアニスト・馳慎一。3年前に脳梗塞を患い、一次は再起が危ぶまれていたが、回復し、復帰リサイタルを控えている。


初心に帰って残りの人生をピアノに捧げることを誓う馳。そのためには、何を置いても弾かなければいけない特別なピアノがあった。


そのピアノは、郷里の北九州・西小倉の小さなバーにある古びたアップライトピアノ。


両親から医学部受験を厳命されていた高校生の馳。受験の妨げになるからと好きなピアノから引き離され、梢の経営するバーに駆け込んだのだった。バーの開店前の時間にピアノを弾かせてもらいながら、音楽への情熱を再確認した馳は、家出をしてピアニストを目指すことを決める。梢への恋心も打ち明け、一緒に上京しようと誘うが、梢は断る。「夢を叶えたら、またこのピアノを弾きにきて」と。


50年越しに梢との約束を果たす馳。ピアノはすでに壊れ、まともに音も出せなくなっていたのだが……。

優秀賞 「不知火」 浅渕 聡美



優秀賞 「不知火」浅渕 聡美さん
優秀賞 「不知火」浅渕 聡美

受賞者のことば

浅渕 聡美 (神奈川県)


八代海に出現する蜃気楼の一種、不知火(しらぬい)を知った時、不知火は映像で見るよりも耳で聞く方が光輝くのではないかと思いました。


ラジオドラマは自分の想像力で映像を作ることができるからです。


この景色をラジオドラマにしたくて登場人物を誰にしようかと考えて、萌乃とすずかという二人の対照的な女性を描くことにしました。受賞のお知らせの時に「よく書けていますね」と言っていただきとても嬉しく感激しております。



審査員の皆様、優秀賞に選出していただきまことにありがとうございました。これからも精進してラジオドラマを書いていきたいと思います。



「不知火」 あらすじ


夏の夜の八代海に出現する蜃気楼の一種『不知火』を一人で見に来ていた萌乃は、同じく一人で見に来ていたすずかに声をかけられ暗闇の中、行動を共にすることになる。


萌乃は死んだ恋人が不知火をなぜ見たがっていたのかを知るために、すずかは自分を捨てた恋人を捕まえるためにやってきていた。


行動を共にしていくうちに打ち解けていく二人だったが、わずかな光で見えたすずかの顔からお互いの恋人が同一人物であることに萌乃は気づいてしまう。



優秀賞 「月の石の指輪」 鹿内 俊太



優秀賞 「月の石の指輪」 鹿内俊太(東京都)
優秀賞 「月の石の指輪」 鹿内俊太

受賞者のことば

鹿内 俊太 (東京都)


人間万事塞翁が馬という言葉が嫌いになりそうな1年だった。


27歳を無職で迎え、おみくじは凶。ひどい食あたりが続きかつて友人だった人から詐欺まがいの行為に誘われた。


がむしゃらになって再就職した矢先業績悪化により再び職を失い、恋人には「もう無理」とフられ、歯医者ではなんの説明もなされずに銀歯が被せられた。


そんな時に受賞の連絡を頂き、これが格言か、と悟りました。


27歳最後の日にこのような賞を頂けたことは大変光栄です。ただ、自分には相応しくないのではという不安も大きく、「つまんねー」と思われる方も多いかもしれません。


それでも、この先70年近く脚本を書いていくためには1つ1つの「つまんねー」を受け止め越えていかなくてはダメだろうとも思い、チャンスは全て掴み取ることにしました。


今後も誠実に脚本と向き合い、ドキドキワクワクしたいと思います。ありがとうございました。



「月の石の指輪」 あらすじ



種子島でとあるイベントが開かれる日。


自宅で昼飯を作ろうとしたサツキの元に、1本の電話がかかる。それは、幼馴染のヤマトからだった。


料理をしながら片手間でヤマトの話を聞くサツキ。スピーカーから漏れる調理音や昔話に話は逸れて、なかなか本題に入らない。しびれを切らしたサツキが電話を切ろうした時、ヤマトはサツキに愛の告白をする。


しかし、昔から何度もヤマトに告白されて来たサツキには何も響かない、はずだった。今回はただの告白ではなく、プロポーズだったのだ。さすがに動揺するサツキ。だが、ヤマトの一生懸命な姿に惹かれ、プロポーズをOKする。


ハッピーエンドに思えたが、ヤマトは突然大声で喚き出す。


ヤマトはサツキが子供の頃に言った、「月の石をくれたら結婚してあげる」という約束を果たすため、ロケットに乗っていたのだ。そして、種子島から月へ向けて、ロケットが飛び立った。


総評


今年の第14回南のシナリオ大賞は、298通の応募がありました。昨年の200通からすると大幅に増えました。今年からネット応募に変わったことも増えた一因になったのかも知れません。


全編、じっくり読ませて頂きました。応募された方々が時間を掛け、考え、悩んだことが一文字、一文字から伝わって来ました。その中から、大賞1編、優秀賞3編を選びました。


選らばれた方々は、シナリオライターへの希望が膨らみ、その入り口に立つことが出来たかも知れません。これまでの南のシナリオ大賞の受賞者から、映画、テレビドラマ、舞台の脚本家として活躍している人も出てきます。


そんな人たちを選ぶのは、これから脚本家を目指す人たちが一歩前に進む為に背中を押す手助けになったかも知れません。だから、選ぶ責任があると思っています。


大賞は、「ほてぱき」の竹田行人さん。一言で言えば、面白い作品です。タクシー運転手の父と娘を軸に展開していきます。その会話がテンポよく回転していきます。


優秀作には、「無音の伴奏」の境田博美さん。音が聞こえてくるような作品でした。セリフは削れる所もありますが魅力的なセリフもありました。


次は、「不知火」の浅渕聡美さん。女同志の距離感がくっつかず離れずで心地よい。物語は悲しいのですが、ラストは希望が持てる終り方でした。


三つ目は、「月の石の指輪」の鹿内俊太さん。月へ行くロケットから「ダイヤモンドより月の石での指輪」を贈るとプロポーズ。男と女の掛け合いセリフは秀逸。


受賞された方々は、夢の入り口に立つことが出来たのかも知れません。でも、夢の続きはこれからです。




 日本放送作家協会九州支部長

審査委員 盛多直隆


第14回 南のシナリオ大賞 表彰式

  • 日時:11月22日(日)15:00~16:30

  • 場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神)

表彰式出席者


第14回南のシナリオ大賞 表彰式出席者記念撮影
第14回南のシナリオ大賞 表彰式出席者

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